「この塗り薬、ずっと塗っていたら耐性ができた気がします」「以前はすぐに落ち着いたのに、最近は塗っても変わりません」。診察室でよく伺う言葉です。ステロイド外用薬でもニキビの薬でも、耐性は、治療中にもっとも心配される言葉のひとつです。ところが、耐性のように感じられる状況のかなりの部分は、実際に耐性ができたのではなく、塗り方や、薬と病変の組み合わせがずれている場合です。この記事では、薬が効かないと感じられるときに、それが本当の耐性なのか別の理由なのかを分けて考え、何を点検すればよいのかを整理します。
3行まとめ
- 一般に耐性と呼ばれている状況には、本当の耐性、体の慣れ(鈍化)、見かけの耐性が混ざっています。ステロイド外用薬が効かないと感じるときは、塗る量・回数・期間や塗り方が十分でないために起こる見かけの耐性であることが多くあります。
- もっともよくある理由は塗る量・回数・期間が足りないことで、その次が疾患の段階と薬の強さ・剤形が合っていない場合です。診断が変わっていたり感染が重なっていたりする場合や、良くなる速さがゆるやかになる時期も、耐性と誤解しやすいところです。
- 1999年の研究では、乾癬の患者さん32名を12週間続けて治療しても耐性といえるような変化は観察されず、2013年の文献レビューも、繰り返し使うことで薬の効果が意味のある程度に鈍くなる現象は臨床試験では確認されなかったとまとめています。ひとりで薬をやめたり変えたりするよりも、使い方を点検して診察で相談するのが順序です。
「耐性」という言葉には三つのことが混ざっています
診察室で「耐性ができた」とおっしゃるとき、その言葉の中には、医学的には互いに異なる三つの現象が混ざっています。
- 本当の耐性(resistance) — 細菌や腫瘍細胞が遺伝的に変化して、薬に耐えられるようになることです。
- 慣れ・鈍化(tolerance) — 薬を繰り返し使ううちに、薬に対する体の反応が少しずつ弱くなっていくことです。
- 見かけの耐性(pseudo-resistance) — 塗る量、回数、期間、塗り方が十分でないために、まるで耐性ができたかのように薬が効かない状況です。
皮膚科では、本当の耐性は思ったよりまれです。「薬が効かなくなった」とおっしゃる状況は、三つ目の見かけの耐性に当たることが多くあります。そのため、耐性だと結論づけて治療をやめてしまう前に、いまの状況が三つのうちのどれに当たるのかを、まず分けて考える必要があります。
本当の耐性が問題になる場合 — 抗生物質とボツリヌストキシン
ステロイド外用薬の話に入る前に、本当の耐性が問題になる場合を先に押さえておきます。皮膚科で比較的はっきりしているのは、抗生物質の耐性と、ボツリヌストキシンの中和抗体の二つです。以下の抗生物質の使い方の原則は、2026年1月時点の内容です。
抗生物質の塗り薬 — 傷の塗り薬とニキビの塗り薬
抗生物質は、長く、頻繁に使うと、耐性菌が生じることがあります。飲み薬も塗り薬も同じで、これが抗生物質を乱用してはいけない代表的な理由です。皮膚科で実感しやすいのは、傷に塗る抗生物質の塗り薬と、ニキビに塗る抗生物質の塗り薬です。たとえばフシジン酸(fusidic acid)は耐性の問題がよく取り上げられる成分ですので、韓国の皮膚科では傷の塗り薬としてムピロシン(mupirocin)を使うことが多くあります。
クリンダマイシン(clindamycin)やエリスロマイシン(erythromycin)のようなニキビ用の抗生物質の塗り薬は、単独で長く使うと耐性のリスクが高くなります。そのため、必要な期間だけ短く使い、できれば過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide, BPO)と一緒に使うか、配合剤を使うことが、原則として強調されています。抗生物質の塗り薬は、過酸化ベンゾイルやレチノイドと一緒に使うことが、耐性を管理するうえでの要点です。過酸化ベンゾイルの根拠と使い方は、市販のニキビ薬を取り上げた記事に別にまとめています。
抗生物質の飲み薬 — 期間を決め、次の段階も一緒に計画します
ニキビでは、ドキシサイクリン(doxycycline)やミノサイクリン(minocycline)のような抗生物質の飲み薬を、菌を減らす目的だけでなく、炎症を抑える目的でも使います。そのため、長く使う場合もあります。ただ、耐性の問題は確かにあり、その耐性がアクネ菌だけにとどまらないという点が重要です。抗生物質に長くさらされると、体にもともとすんでいる菌(常在菌叢)が変化し、ほかの感染症を治療するときにも影響することがあります。
そのため抗生物質の飲み薬は、飲んだりやめたりを繰り返すのではなく期間を決めて使い、良くなったら、レチノイドや過酸化ベンゾイルのように抗生物質ではない薬で維持療法を続けていくことが肝心です。ただ、このとおりに進めるのが難しい場合もありますので、具体的な期間と計画は診察で決めます。
ボツリヌストキシン — 中和抗体
一般にボトックスと呼ばれるボツリヌストキシン(botulinum toxin)の注射は、あまりに頻繁に、高い用量で受けていると、まれに中和抗体ができて効果が落ちることがあります。ただ、「以前ほどしわが伸びない」という感覚は、耐性よりも施術間隔、用量の不足、表情筋の変化と代償作用で説明できる場合のほうが多く、実際の耐性の割合は非常に低いと知られています。このテーマは、ボトックスの耐性を取り上げた記事で詳しく扱っています。
ステロイド外用薬が効かないように感じられる五つの理由
「塗り薬を塗っても良くなりません」「耐性ができた気がします」と感じられるとき、実際の原因は、以下の五つのうちのどれかであることが多くあります。
1. 塗る量が足りない場合
もっともよくある理由です。患者さんが「塗った」とおっしゃる量と、医師が期待する十分な量とのあいだには、思ったより大きな差があります。ステロイドが心配で、米粒ほどだけ出して広くのばして塗ると、薬が弱いからというより、薬が病変に十分に届いていないということになります。
2. 塗る期間が短すぎる場合
炎症性の皮膚疾患には、良くなってはまたぶり返すという波があります。三日塗ったのにまた出てきたからといって、すぐに耐性だと考えることはできません。その疾患が落ち着くまでに必要な時間が、もともとそれより長いためかもしれません。
塗り薬の説明書に、2週間以上使用しないようにと書かれている場合があります。ところが、すべての皮膚疾患が2週間以内に落ち着くわけではありません。説明書の文言と実際の治療に必要な期間は異なることがありますので、どのくらい塗るかは、ご自身で延ばしたり短くしたりせず、診察で状態を見ながら決める必要があります。
3. 強さと剤形がいまの状態に合っていない場合
ステロイドは、耐性ができるから強さのランクを上げていかなければならない薬というより、はじめから病変の厚みと炎症の程度に合った強さで始めてこそ、期待した反応が得られやすい薬です。ステロイド外用薬には強さによっていくつかのランクがあり、皮膚科では状態に合わせてランクを選んで処方します。そのため、以前、別の部位や別の疾患に使っていた塗り薬が、いまの病変には合わないことがあります。
剤形も同じです。厚くなった苔癬化病変にさらっとしたローションだけを塗る場合や、じゅくじゅくと汁が出ている急性期に油分の多い軟膏を覆うように塗る場合が、その例です。
4. 診断が変わっていたり、別の問題が重なっていたりする場合
湿疹だと思って塗り薬を塗っていたのに実際には真菌(カビ)の感染だった場合や、アトピー性皮膚炎だと思っていたのに細菌の二次感染が一緒にある場合です。このときは、薬が効かないのではなく、治療すべき対象が変わっているのですから、あらためて診断を受ける必要があります。
5. 良くなる速さがゆるやかになる時期
ステロイド外用薬では、はじめのうちは早く良くなり、ある時点から、その速さがゆるやかになる時期がやってきます。この時期は、耐性と誤解しやすいところです。ところが、これは耐性ではなく、治療の目標と戦略を調整するタイミングであることが多く、維持療法に移るかどうかといった判断がこれに当たります。
五つをひと目で見ると
| 理由 | 実際に起きていること | 診察で解決していく方向 |
|---|---|---|
| 塗る量の不足 | 薬が病変に十分に届いていない | 面積に合った量を塗れていたかを確認 |
| 塗る期間が短い | 疾患が落ち着くまでに必要な時間のほうが長い | 状態を見ながら期間を決める |
| 強さ・剤形の不一致 | 病変の厚み・炎症の程度と薬が合っていない | いまの状態に合った強さと剤形に調整 |
| 診断の変化・感染の合併 | 真菌の感染だった、または細菌の二次感染が重なっている | 診断をあらためて確認 |
| 速さがゆるやかになる時期 | はじめの改善のあと、良くなる速さが遅くなる | 治療の目標と戦略(維持療法など)を調整 |
研究はステロイドの耐性をどう見てきたか
診察室でいわれるステロイドの耐性は、論文ではよくタキフィラキシー(tachyphylaxis)、つまり繰り返し使ううちに反応が急速に鈍くなる現象として説明されます。ところが、2026年1月時点で見ると、臨床試験では、治療効果が時間とともに意味のある程度に落ちていくという根拠は、はっきりしていません。
医師の認識と実際の結果 — 1999年の研究
Millerらが1999年にJournal of the American Academy of Dermatologyで発表した研究では、皮膚科医の57%が、8週ほどで耐性ができると感じていました。ところが、実際に乾癬の患者さん32名を12週間続けて治療したところ、耐性といえるような変化を示した人はいませんでした。
2013年の文献レビュー
Taheriらが2013年にDermatology Online Journalで発表した文献レビューも、同じ方向です。臨床的に意味のあるタキフィラキシーは、臨床試験では確認されなかったとまとめています。
実験室で観察された急性の鈍化
別の方向を示す資料もあります。du VivierとStoughtonが1975年にArchives of Dermatologyで発表した古典的な研究は、血管収縮試験、つまり皮膚が白くなる反応を見る検査で、急性の鈍化を観察しました。ただし、この結果を「炎症が抑えられない」、つまり耐性だという結論にそのままつなげるのは難しいところです。
どこまで確認されているのか
まとめると、薬が効かないように感じられる状況は、耐性よりも、塗る量・回数・期間、強さと剤形の不一致、診断の変化といった見かけの耐性であることが多くあります。ただし、1999年の研究は乾癬の患者さん32名を12週間見たものであり、文献レビューの結論も「臨床試験では確認されなかった」というものです。どのような場合にも起こらないと証明された、という意味ではありません。
耐性が心配で、自己判断で減らしたりやめたりすると
「耐性ができるのが心配で、一日おきに塗っていました」「少し良くなったのでやめました」とおっしゃる方がいらっしゃいます。ところが、多くの慢性の皮膚疾患で実際に問題になるのは、耐性ではなく、次のような悪循環です。
- 薬を不規則に塗ります。
- 病変が再発します。
- 最初から治療をやり直します。
- 結果として、全体の使用量が増えます。
むしろ、診察で決めたとおりに、状態に合った強さの薬を十分に使って炎症を短い期間で落ち着かせ、そこで終えるほうが、ステロイドにさらされる総量を減らす方法になることがあります。減らしたりやめたりするタイミングも、ひとりで決めるより、診察で一緒に決めるほうがよいでしょう。
薬が効かない気がするとき、まず点検すること
診察を受けに行かれる前に、あるいは薬を変える前に、まず三つのことを確認してみるとよいでしょう。
- どのくらい(量) — 指先から第一関節までの量(FTU, fingertip unit)を目安に、塗る面積に対して十分な量を塗れていたか
- どのくらいの頻度で(回数) — 処方された回数をそのまま守れていたか
- どのくらい長く(期間) — 二、三日塗ってみただけで判断していないか
これに加えて、あと二つを見ておきます。
- 病変が、塗っていた場所からほかの場所へ広がっていないか
- お酒、ストレス、睡眠、新しく使い始めた化粧品のように、生活の中で変わった点がないか
この内容を整理してお越しいただくだけでも、診察で解決の方法を見つけるのがずっと楽になります。この点検は、ご自身で薬を変えたりやめたりするためのものではなく、診察で判断するための材料を集める過程です。
もっと強い薬に変えればよいのか
とにかく強い薬を、ということではなく、いまの病変の状態に合った強さを使うのが原則です。大きな火事を、バケツ一杯の水で消すのが難しいのと同じ理屈です。また、塗り薬だけでは足りない場合も多くありますので、強さを上げるのか、別の治療を加えるのかは、診察で決めます。
まず薬を変えてしまう前に
塗る量と回数、期間を正すだけで、同じ薬にふたたび反応する場合が多くあります。そのため、薬が効かないと感じられたら、薬を変えるよりも、使い方を点検することが先です。
まとめとして知っておいていただきたいこと
皮膚科でよくいわれる耐性は、薬そのものの問題というより、使い方、強さ、診断、疾患の組み合わせがずれている状況であることが多くあります。耐性ができた気がするときほど、記録し、点検し、治療の戦略を合わせ直すことで、解決することが少なくありません。
- 判断は診察で — ひとりで悩みながら薬をやめたり変えたりせず、皮膚科専門医と相談して、どこでずれが生じたのかを探してください。この記事は一般的な説明であり、個別の診断に代わるものではありません。
- 個人差 — 疾患の種類と病変の状態によって、合う薬の強さと剤形、必要な期間は異なります。
- 根拠の範囲と時点 — この記事で引用した資料は、1975年の実験室での研究、乾癬の患者さん32名を12週間治療した1999年の研究、2013年の文献レビューです。この記事の内容は2026年1月時点のものであり、その後の研究や診療ガイドラインによって説明が変わることがあります。
参考文献
- Miller JJ, Roling D, Margolis D, Guzzo C. Failure to demonstrate therapeutic tachyphylaxis to topically applied steroids in patients with psoriasis. J Am Acad Dermatol. 1999;41(4):546-549. doi:10.1016/S0190-9622(99)80050-4
- Taheri A, Cantrell J, Feldman SR. Tachyphylaxis to topical glucocorticoids; what is the evidence? Dermatol Online J. 2013;19(7):18954.
- du Vivier A, Stoughton RB. Tachyphylaxis to the action of topically applied corticosteroids. Arch Dermatol. 1975;111:581-583.
よくあるご質問
- ステロイド外用薬は、長く塗り続けると耐性ができますか?
- 患者さんが感じる耐性は、薬理学的な耐性というより、使い方の問題であったり、疾患の状態が変わっていたりする場合が多くあります。長く使ったために薬の効果がなくなるというよりも、十分に塗れていなかった、いまの病変に強さと剤形が合っていない、診断が変わった、という場合のほうがよく見られます。2013年の文献レビューも、繰り返し使うことで薬の効果が意味のある程度に鈍くなる現象(タキフィラキシー)は、臨床試験では確認されなかったとまとめています。
- よく効いていたステロイド外用薬が、急に効かなくなりました。もっと強い薬を使えばよいですか?
- とにかく強い薬を、ということではなく、いまの病変の状態に合った強さを使うのが原則です。以前、別の部位や別の疾患に使っていた塗り薬がいまは合わないこともありますし、塗り薬だけでは足りない場合もあります。強さを上げるのか、別の治療を加えるのかは、ご自身で決めずに診察でご相談ください。
- 数日塗ると良くなるのに、またぶり返します。耐性でしょうか?
- それだけで耐性と考えるのは難しいところです。炎症性の皮膚疾患には、良くなってはまたぶり返すという波があり、その疾患が落ち着くまでに必要な時間が数日より長いことがあります。どのくらい塗るかは、診察で状態を見ながら決めます。
- 説明書には2週間以上使わないようにと書いてありますが、それ以上塗ってもよいですか?
- そのような文言が書かれた説明書があります。ただ、すべての皮膚疾患が2週間以内に落ち着くわけではありませんので、実際の治療に必要な期間は、疾患と状態によって異なることがあります。期間をご自身で延ばしたり短くしたりせず、診察で状態を確認したうえで決めてください。
- 耐性ができるのが心配なので、一日おきに塗ったり、良くなったらすぐにやめたりしてもよいですか?
- おすすめしません。多くの慢性の皮膚疾患で問題になるのは、耐性よりも、不規則に塗っているうちに再発し、最初から治療をやり直すことで全体の使用量が増えていく悪循環です。診察で決めたとおりに炎症を十分に落ち着かせてから終えるほうが、ステロイドにさらされる総量を減らす方法になることがあります。
- ステロイド外用薬の効果がないときは、まず薬を変えるべきでしょうか?
- 薬を変える前に、まず使い方を点検してみてください。塗る量と回数、期間を正すだけで、同じ薬にふたたび反応する場合が多くあります。点検した内容を診察でお話しいただければ、薬を変えるかどうかを判断する助けになります。
- 診察の前に、何を整理しておくとよいでしょうか?
- 塗った量が面積に対して十分だったか、処方された回数を守れていたか、二、三日塗っただけで判断していないかを、まず確認します。これに加えて、病変がほかの場所へ広がっていないか、お酒・ストレス・睡眠・新しい化粧品のように、生活の中で変わった点がないかも見ておきます。この内容を整理してお越しいただくと、診察で解決の方法を見つけるのがずっと楽になります。
- ニキビの抗生物質には耐性ができますか?
- はい、抗生物質には耐性のリスクがあります。そのため、飲んだりやめたりを繰り返すのではなく診察で決めた期間使うこと、そして抗生物質の塗り薬では過酸化ベンゾイルを一緒に使うことが、耐性を管理するうえで大切です。菌を減らす目的ではなく、炎症を抑える目的で長く使う場合もありますので、期間は診察で決めます。
- ボトックス(ボツリヌストキシン)にも耐性はできますか?
- まれですが、抗体がつくられて効果が落ちることがあります。ただ、効果が以前ほどではないという感覚は、耐性よりも施術間隔、用量、筋肉の代償作用で説明できる場合が多くあります。