「円形脱毛症と言われて注射も受け、薬も飲んでいるのに、なぜか髪がだんだん生えにくくなっているんです。本当に円形脱毛症なのでしょうか」。診察室でときどき伺う言葉です。円形脱毛症(alopecia areata)と瘢痕性脱毛症(cicatricial alopecia, scarring alopecia)は、初期の様子だけを見るとかなり似て見えることがあり、円形脱毛症として治療を続けていたところ、あらためて診てみると瘢痕性脱毛症だったという場合があります。問題は、その間に瘢痕性脱毛症で重要な初期治療の時期が過ぎてしまうことがあるという点です。この記事は、二つの疾患がどのように違って見えるのか、なぜ最初に見分ける必要があるのか、治療の方向はどう変わるのかを整理したものです。
3行まとめ
- 円形脱毛症は、毛包が生きているため、炎症が治まれば再び生えてくる可能性のある非瘢痕性脱毛症で、瘢痕性脱毛症は、毛包が破壊されて瘢痕組織に置き換わる脱毛症です。すでに瘢痕に変わった部位からは毛髪が再び生えてこないため、瘢痕性脱毛症の治療目標は、残っている毛包を守ることです。
- 診察でまず見るのは三つです。毛穴が見えるのか消えているのか、かゆみ・ヒリヒリ感・痛みといった症状があるのか、脱毛斑が埋まっていく方向なのか、不規則な形に広がっていく方向なのかです。はっきりしない場合は、頭皮の拡大鏡検査と生検(組織検査)で確認します。
- 同じステロイド局所注射(病巣内注射)でも、円形脱毛症では脱毛斑の全体に打って再び生えてくるのを助け、瘢痕性脱毛症では炎症が進行している縁の部分にだけ打って、それ以上の脱毛を防ぎます。最初に二つの疾患を見分けることが、治療と同じくらい重要な理由です。
なぜ最初に見分ける必要があるのか — 毛包が残っているかどうかの問題
二つの疾患の本質的な違いは、毛包が残っているかどうかです。円形脱毛症は毛包が生きている非瘢痕性脱毛症ですので、炎症がコントロールされれば、毛髪が再び生えてくる可能性があります。瘢痕性脱毛症は、頭皮の毛包が炎症によって破壊され、瘢痕(傷あと)組織に置き換わる脱毛症で、すでに失われた毛包からは、毛髪が再び生えてくることはありません。
そのため、治療の目標から違ってきます。瘢痕性脱毛症の治療は、抜けた髪を取り戻すことではなく、いま残っている毛包をこれ以上失わないように防ぐことです。円形脱毛症なのか、瘢痕性脱毛症の初期段階なのかを最初に見分けることが、治療と同じくらい重要な理由は、ここにあります。
初期には似て見えることがあります
瘢痕性脱毛症に含まれる疾患も、初期には丸く抜けた脱毛斑のように見え、円形脱毛症と紛らわしいことがあります。時間がたつにつれて、光沢のある瘢痕と消えていく毛穴という、典型的な瘢痕性の様子に変わっていきます。見た目が似ている時期に、何を見て見分けるのかが、この記事の中心です。
瘢痕性脱毛症にはどのような疾患があるのか
瘢痕性脱毛症は、ひとつの病気ではなく、複数の疾患をまとめて呼ぶ名前です。原発性瘢痕性脱毛症は、毛包を攻撃する炎症細胞がリンパ球なのか好中球なのかによって分けられます。韓国では、下記の疾患のうち毛孔性扁平苔癬と円板状エリテマトーデスが、円形脱毛症だと思っていたところ瘢痕性脱毛症だと確認されるケースで、とくに注意して見る疾患です。
| 疾患 | 分類 | 主に見られる方 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 毛孔性扁平苔癬(lichen planopilaris, LPP) | リンパ球性 | 中年女性 | 複数か所または中心部の脱毛斑、不規則な境界。活動期には、毛包の周りの赤い帯と、毛包を襟のように取り囲む鱗屑(角質)。かゆみ・灼熱感・痛みが多い |
| 前頭部線維性脱毛症(frontal fibrosing alopecia, FFA) | リンパ球性 | 閉経前後の女性 | 額の生え際が帯状に後退する。眉毛の脱落を伴う |
| 円板状エリテマトーデス(discoid lupus erythematosus, DLE) | リンパ球性 | 20〜40代の女性 | 紫がかった色または赤色の、境界がはっきりした局面、毛包の入り口の角栓(follicular plugging)。中心部は萎縮と色素脱失・色素沈着、縁の部分は炎症が活動性。顔・耳・体など、頭皮以外の病変を伴うことが多い |
| 中心性遠心性瘢痕性脱毛症(central centrifugal cicatricial alopecia, CCCA) | リンパ球性 | アフリカ系の女性に多い | 頭頂部から始まり、外側へ広がる。初期には女性型脱毛症に似ており、切れ毛が初期の徴候であることがある。進行すると、光沢のある瘢痕性の頭皮 |
| 禿髪性毛包炎(folliculitis decalvans, FD) | 好中球性 | 成人男性 | 膿疱と、はちみつ色のかさぶた(痂皮)を繰り返す。ひとつの毛穴から複数の毛がまとまって生える束状の毛(tufted hairs)。厚く盛り上がった瘢痕(毛孔性扁平苔癬の薄い萎縮性の瘢痕とは対照的) |
炎症は毛包のどの部分に向かうのか
一方は再び生え、もう一方は生えてこない理由は、毛包のどの部分が攻撃されるのかで説明できます。毛髪が再び生えるには、毛包の中ほどにあるバルジ領域(bulge)の幹細胞が保たれていなければなりません。
円形脱毛症 — 免疫特権が崩れた毛包
正常な毛包は免疫特権(hair follicle immune privilege)を持っており、免疫細胞が毛包をむやみに攻撃しないよう守られています。円形脱毛症ではこの保護が破れ、CD8+ NKG2D+ T細胞が毛球(hair bulb)を取り囲んで攻撃し、組織では、毛球の周りにリンパ球が蜂の群れのように集まった様子(swarm of bees)が観察されます。そのため円形脱毛症は、自己免疫疾患と捉えるのが、もっとも実態に近い見方です。
遺伝的な素因、ストレス、感染、甲状腺疾患やほかの自己免疫疾患も併せて挙げられますが、ほとんどの場合、これひとつが原因だと言える単一の原因はありません。重要なのは、幹細胞のある毛包の上部がおおむね保たれるという点です。炎症が治まれば再び生えてくる余地が残っているため、比較的可逆的な脱毛症に含まれます。
瘢痕性脱毛症 — 幹細胞のある毛包の上部が破壊されます
瘢痕性脱毛症では、炎症の標的が違います。攻撃されるのは毛包の上部(峡部と漏斗部)で、ここには幹細胞のあるバルジ領域が含まれます。この部分が破壊されると、毛包全体が線維組織、つまり瘢痕に置き換わり、その部位の脱毛は元に戻せなくなります。見た目は似た脱毛斑でも、幹細胞が残っているのか破壊されたのかによって、予後と治療戦略が分かれます。
目で見たとき、拡大鏡で見たときの違い
円形脱毛症の典型的な見え方
- 突然できた、境界のはっきりしたコイン状の脱毛斑
- 頭皮の色は正常か、ややピンク色
- 光沢のある瘢痕はなく、毛穴(毛孔)がそのまま見える
- 急性期には、脱毛斑の縁に感嘆符毛(exclamation mark hair)
- ほとんどの場合、かゆみや痛みはない
- 一部では、手足の爪に点のように小さくへこむ変化(点状陥凹)を伴うことがある
瘢痕性脱毛症に共通する見え方
瘢痕性脱毛症では、共通して毛穴(follicular ostia)が消え、光沢のある瘢痕組織が観察されます。活動期には、ここに先ほどの表に挙げた疾患ごとの炎症所見が加わります。
頭皮を拡大鏡で見ると
頭皮の拡大鏡検査(ダーモスコピー、trichoscopy)では、円形脱毛症は毛穴が生きていることがポイントです。毛穴がそのまま見え、黄色点(yellow dots)と黒点(black dots)、感嘆符毛、生えてきた短いうぶ毛が一緒に見られることが多くあります。毛が生える準備をしている毛包が見えている、ということです。
瘢痕性脱毛症は、毛穴が消えて見えることがポイントです。脱毛した部位の皮膚がつるつるして光沢があり、毛穴がほとんど見えず、周りに赤い帯、角質、かさぶた、束状の毛、膿疱が一緒に見られることがあります。生検まで行わなくても、拡大鏡の所見だけで方向性がつかめる場合が多くあります。
診察でまず見る三つのポイント
- 毛穴が見えるか、消えているか — 毛穴が見えれば非瘢痕性脱毛症、なかでも円形脱毛症のほうをまず考えます。毛穴が見えず、つるつるした瘢痕のように見える場合は、瘢痕性脱毛症を疑います。
- 皮膚症状があるか — 円形脱毛症は、ほとんどの場合、痛みやかゆみがほぼなく、皮膚も比較的落ち着いています。瘢痕性脱毛症は、かゆみ、ヒリヒリ感、痛み、ほてりを伴うことが多く、赤い帯、角質、かさぶた、膿疱が一緒に見られることがよくあります。
- どのように進むか — 円形脱毛症は、丸く抜けた部分が、治療や時間の経過とともに、うぶ毛が生えてきて埋まっていく方向に進みます。瘢痕性脱毛症は、形が不規則に広がりながら中心部がだんだんつるつるになり、縁の部分が赤く敏感な状態が長く続きます。
この三つだけでも、再び生えてくる可能性のある脱毛症なのか、いまからでも早く食い止めるべき脱毛症なのか、方向性はつかめます。ただし、方向性をつかむための基準ですので、はっきりしない場合は拡大鏡検査と生検で確認します。
| 区分 | 円形脱毛症 | 瘢痕性脱毛症 |
|---|---|---|
| 毛包 | 生きている(非瘢痕性) | 破壊され、瘢痕組織に置き換わる |
| 炎症が向かう場所 | 毛球。幹細胞のある上部はおおむね保たれる | 幹細胞のある毛包の上部 |
| 毛穴 | そのまま見える | 消えて、つるつるとした光沢がある |
| 皮膚症状 | ほとんどの場合、かゆみ・痛みはほぼない | かゆみ・ヒリヒリ感・痛み・ほてりを伴うことが多い |
| 拡大鏡で一緒に見られるもの | 黄色点、黒点、感嘆符毛、短いうぶ毛 | 赤い帯、角質、かさぶた、束状の毛、膿疱 |
| 進み方 | 丸い脱毛斑がうぶ毛で埋まっていく方向 | 不規則に広がり、中心部はつるつる、縁の部分は赤く敏感な状態が続く |
| 治療目標 | 炎症を鎮めて、再び生えるようにすること | 残っている毛包を守ること |
診断はこのような順番で絞り込んでいきます
- 脱毛パターンの確認 — 丸い脱毛斑がいくつかある限局性なのか、全体的に毛量が減っていくびまん性なのか、頭頂部やM字のようなパターンがあるのかないのかを見ます。
- 瘢痕の有無の確認 — 拡大鏡で毛穴を確認します。毛穴が見えれば非瘢痕性として円形脱毛症の可能性を、消えていれば瘢痕性脱毛症のほうを考えます。
- 特徴的な所見から細かい疾患を推定 — 黄色点・黒点・感嘆符毛は円形脱毛症、毛包周囲の鱗屑と紅斑は毛孔性扁平苔癬、毛包の角栓と樹枝状の血管は円板状エリテマトーデス、頭頂部を中心とした病変と毛の周りの輪(peripilar halo)は中心性遠心性瘢痕性脱毛症、膿疱・束状の毛・はちみつ色のかさぶたは禿髪性毛包炎のほうを示唆します。
三つの段階を経ても、はっきりしない場合があります。そのときは、炎症が進行している縁の部分、つまり活動性の辺縁部から生検を行い、最終的に確認します。
生検と血液検査はいつ必要になるのか
ほとんどは臨床所見と拡大鏡検査で診断できますが、次のような場合には生検を検討します。
- 円形脱毛症と瘢痕性脱毛症の所見が混ざっていて、見た目と拡大鏡検査だけでは見分けがつきにくい場合
- 瘢痕性脱毛症が強く疑われ、毛孔性扁平苔癬なのか円板状エリテマトーデスなのかというように、疾患を分けることが治療の選択に重要な場合
- 何年も進行している脱毛症なのに、診断がはっきりしない場合
- すでにかなり進行した状態で、まだ進行中なのか止まっているのかを確認する必要がある場合
生検を行うと、円形脱毛症で間違いないのか、毛孔性扁平苔癬の系統なのか、エリテマトーデスの系統の瘢痕性脱毛症なのかというように、治療の方向を分ける情報が得られます。韓国では、頭皮の生検は主に病理診断科のある大学病院で行われます。
組織で確認される違い
毛孔性扁平苔癬では、毛包の上部に密着する苔癬様(lichenoid)のリンパ球浸潤と、皮脂腺・立毛筋の消失、毛包周囲の線維化が見られます。円板状エリテマトーデスでは、毛包上部の境界部皮膚炎(interface dermatitis)と毛包の角栓、基底膜の肥厚が見られます。禿髪性毛包炎では、好中球の浸潤によって毛包が拡張し、進行すると毛包の破裂と混合性の炎症、瘢痕へとつながります。
円形脱毛症における血液検査の役割
円形脱毛症の診断そのものは、頭皮の所見と拡大鏡検査だけで十分な場合が多くあります。血液検査は、脱毛の原因を探すというより、併存する疾患と全身の状態を見る役割に近いものです。状況に応じて、基本的な血液検査と肝・腎機能、甲状腺機能検査(TSH、T3、T4 など)、鉄・フェリチンといった栄養状態、必要な場合は自己抗体(ANA など)とビタミンDを選択的に検討します。
すべての円形脱毛症の患者さんに幅広い検査が必要なわけではなく、年齢や症状、病歴、併存する疾患に応じて範囲を調整します。クリニックで行える検査には限りがある場合があり、精密な評価が必要なときは、大学病院で追加の検査を進めることもあります。
同じステロイド注射でも、目標が違います
脱毛した部位に直接打つステロイド局所注射は、二つの疾患のどちらでも使われます。見た目は同じ注射のようですが、打つ場所と目的が違います。
円形脱毛症 — 再び生えるのを助ける注射
限局した脱毛斑(斑状型)では、ステロイド局所注射は、よく用いられる第1選択の治療のひとつです。脱毛斑の全体に1cm間隔で均等に打ち、毛包の周りの炎症を抑えて、再び生えてくるのを助けます。毛包の幹細胞が生きていて、炎症が治まれば再び生えてくる余地があるためです。
瘢痕性脱毛症 — これ以上抜けないように防ぐための注射
瘢痕性脱毛症では、赤みと角質が見られる活動性の辺縁部にだけ打つのが原則です。目的は、炎症を抑えて、周りの毛包がこれ以上破壊されないように防ぐことです。すでにつるつるになった瘢痕の中心部に注射しても、毛包が再びできることはありません。
瘢痕になった部位を円形脱毛症と考えて、同じ場所に何か月も注射を繰り返すと、期待した効果は得られず、皮膚の萎縮やへこみ、色素の変化だけが残ることがあります。注射を始める前に、まず診断が必要な理由です。ステロイド局所注射のあとに起こりうる皮膚の萎縮については、ケロイドと肥厚性瘢痕を取り上げた記事でも説明しています。
治療の方向はこのように変わります
以下は、二つの疾患の治療を一般的に説明したものです。実際の薬剤と用量、期間は、診断と状態に応じて、診察のうえで決めます。
円形脱毛症 — 再発は多いものの、再び生えてくる可能性のある脱毛症
限局した病変の第1選択の治療は、コルチコステロイドの局所注射(トリアムシノロンアセトニド、triamcinolone acetonide)と、強力なステロイド外用薬(クロベタゾール、clobetasol など)の塗布です。重症の場合や範囲が広い場合は、ステロイドの全身投与、局所免疫療法(DPCP、SADBE など)を用います。
2025年11月時点では、バリシチニブ(baricitinib)、リトレシチニブ(ritlecitinib)、デュールキソリチニブ(deuruxolitinib)といったJAK阻害薬が、重症の円形脱毛症の新しい選択肢として使われています。一部でははっきりした改善が見られますが、薬を中止すると再発する場合が多く、維持のための戦略が必要になる点が特徴です。薬剤ごとの承認の有無は、国と時期によって異なります。
瘢痕性脱毛症 — 共通する三つの方向
瘢痕性脱毛症の治療で重要なのは、疾患の名前よりも、すでに破壊された毛包をよみがえらせるのではなく、残っている毛包を守るという共通の目標です。
- 炎症を早く、十分に鎮めます — ステロイド外用薬のクリーム・ローション、活動性の辺縁部に限ったステロイド局所注射、ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)・メトトレキサート(methotrexate)・シクロスポリン(cyclosporine)・ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate)といった免疫調節薬を用います。
- 落ち着いた状態を長く保ちます — ドキシサイクリン(doxycycline)、ミノサイクリン(minocycline)といったテトラサイクリン系抗生物質を、毛孔性扁平苔癬、前頭部線維性脱毛症、禿髪性毛包炎などで、維持療法として数か月から数年使う場合が多くあります。
- 頭皮に加わる刺激を減らします — 髪を強く引っ張りすぎるヘアスタイルや、強い熱・薬剤を使う施術を避け、紫外線を防ぎ、刺激の強いシャンプーやスクラブを避けます。
感染がないのに抗生物質を使う理由
テトラサイクリン系抗生物質は、瘢痕性脱毛症、とくに毛孔性扁平苔癬と禿髪性毛包炎でよく使うお薬です。細菌感染があるからというより、抗炎症作用を期待して使う場合が多くあります。組織を破壊する酵素(MMP)の抑制、血管新生の抑制、抗酸化作用、炎症性サイトカインの産生抑制といった仕組みで炎症そのものを調節するため、感染のない炎症性疾患でも、低用量で長く維持療法に使うことができます。
瘢痕性脱毛症で飲み薬を使う目的は、髪を生やすことではなく、毛包を破壊する炎症を鎮めることです。長期の服用と副作用のモニタリングが必要なお薬ですので、一般的な脱毛症の治療薬のようにご自身の判断で服用してはならず、正確な診断と、疾患に合った薬剤の選択、定期的な検査を併せて行う必要があります。
自毛植毛を検討できる時期
瘢痕性脱毛症において、自毛植毛は最後の段階で検討する選択肢です。少なくとも1〜2年以上、炎症がほとんどなく、脱毛の範囲がそれ以上広がらないことが確認されたあとで、はじめて検討できます。炎症が残った状態で急ぐと、移植した毛髪も再び抜け、瘢痕が悪化するおそれがあるためです。
そのため、植毛を検討する段階では、いま炎症が活動期にあるのか、すでに過ぎ去って瘢痕だけが残った状態なのかを、生検で確認することもあります。エイブル皮膚科は自毛植毛を行っておりません。
予後と、あらためて確認したほうがよいサイン
円形脱毛症の予後
軽症の限局型(斑状型)は、1年以内に自然に回復する場合が少なくないという報告があります。一方で、一部は頭皮全体や全身に広がる広範囲型(alopecia totalis, universalis)に進行することがあります。低年齢で発症した場合、病変が広い場合や蛇行型(ophiasis)の場合、爪の変化や家族歴、併存する自己免疫疾患がある場合は、予後がよくない傾向があります。
瘢痕性脱毛症の予後
瘢痕性脱毛症は、治療をしないと少しずつ、しかし着実に進行し、ある時点で炎症が燃え尽きた(burned out)状態に至ります。このときは炎症がないように見えても、その部位の毛包はすでに失われたあとです。そのため瘢痕性脱毛症では、どれだけ早い段階で疑い、どれだけ早く炎症を抑えるかが予後を左右します。
回復については、二つの部分に分けて考えます。すでに瘢痕に置き換わった部位は、毛包が破壊されているため回復は難しくなります。まだ残っている毛包は、炎症を早く十分に抑えれば守ることができ、それ以上の進行を防ぐことができます。初期に見つけて積極的に治療した場合と、時間がたってから治療を始めた場合とでは、結果の差が大きくなることがあります。
このような場合は、あらためて確認してみてください
- 円形脱毛症と言われたのに、何か月治療してもよくなっている実感がないとき
- 脱毛した部位がだんだんつるつるになり、毛穴が見えなくなってきたように感じるとき
- かゆくてヒリヒリする脱毛部位が、広がり続けているように感じるとき
このようなサインがある場合は、皮膚科専門医の診察と頭皮の拡大鏡検査、必要に応じて生検を含めた鑑別診断が役立つことがあります。この記事は一般的な説明であり、個別の診断に代わるものではありません。
よくあるご質問
- 円形脱毛症と瘢痕性脱毛症を見分けるうえで、いちばん重要な手がかりは何ですか?
- 脱毛した部位に毛穴が残っているかどうかです。毛穴がそのまま見えていれば円形脱毛症のような非瘢痕性脱毛症をまず考え、毛穴が見えず、つるつるとした光沢がある場合は瘢痕性脱毛症を疑います。そのうえで、かゆみ・ヒリヒリ感・痛みといった症状があるか、脱毛斑が埋まっていく方向なのか、不規則な形に広がっていく方向なのかを併せて見ます。
- 円形脱毛症として治療を受けているのに、髪がなかなか生えてきません。瘢痕性脱毛症の可能性はありますか?
- それだけで断定することはできません。ただ、何か月治療してもよくなっている実感がない場合や、脱毛した部位がだんだんつるつるになって毛穴が見えなくなってきた場合、かゆくてヒリヒリする部分が広がっている場合は、あらためて確認してみる価値があります。皮膚科専門医の診察と頭皮の拡大鏡検査、必要に応じて生検(組織検査)を含めた鑑別診断が役立つことがあります。
- 円形脱毛症はなぜ起こるのですか?
- 毛包の免疫特権が崩れ、免疫細胞が毛包を攻撃する自己免疫疾患と捉えるのが、もっとも実態に近い見方です。遺伝的な素因、ストレス、感染、甲状腺疾患やほかの自己免疫疾患も併せて挙げられますが、ほとんどの場合、これひとつが原因だと言える単一の原因はありません。
- 円形脱毛症の場合、血液検査では何を調べるのですか?
- 円形脱毛症の診断そのものは、頭皮の所見と拡大鏡検査だけで十分な場合が多く、血液検査は、併存する疾患と全身の状態を見る役割に近いものです。状況に応じて、基本的な血液検査と肝・腎機能、甲状腺機能、鉄・フェリチン、必要な場合は自己抗体とビタミンDを選択的に検討します。すべての方に幅広い検査が必要なわけではなく、年齢、症状、病歴、併存する疾患に応じて範囲を調整します。
- 生検(組織検査)はどのようなときに必要ですか?
- 見た目と拡大鏡検査だけでは二つの疾患の見分けがつきにくいとき、瘢痕性脱毛症が強く疑われ、どの疾患なのかを分けることが治療の選択に重要なとき、何年も進行しているのに診断がはっきりしないときに検討します。すでに進行した状態で、炎症がまだ活動期にあるのかを確認する必要があるときも当てはまります。韓国では、頭皮の生検は主に病理診断科のある大学病院で行われます。
- ステロイド注射は、二つの疾患で同じように打つのですか?
- 同じ注射ですが、打つ場所と目的が違います。円形脱毛症では、脱毛斑の全体に均等に打ち、毛包の周りの炎症を抑えて、再び生えてくるのを助けます。瘢痕性脱毛症では、赤みと角質が見られる活動性の辺縁部にだけ打ち、それ以上の脱毛を防ぐことが目的で、すでにつるつるになった瘢痕の中心部に注射しても、毛包が再びできることはありません。
- 瘢痕性脱毛症に使う飲み薬には、どのようなものがありますか?
- 疾患によって組み合わせは変わりますが、ヒドロキシクロロキン、メトトレキサート・シクロスポリン・ミコフェノール酸モフェチルといった免疫調節薬、ドキシサイクリン・ミノサイクリンといったテトラサイクリン系抗生物質を、状況に合わせて使います。目的は髪を生やすことではなく、毛包を破壊する炎症を鎮めることです。長期の服用と副作用のモニタリングが必要なお薬ですので、ご自身の判断で服用してはならず、用量と期間は診察のうえで決めます。
- 感染がないのに、抗生物質を長く服用するのはなぜですか?
- テトラサイクリン系抗生物質は、細菌感染のためというより、抗炎症作用を期待して使う場合が多くあります。組織を破壊する酵素の抑制、血管新生の抑制、抗酸化作用、炎症性サイトカインの産生抑制といった仕組みで炎症を調節します。そのため、低用量で数か月から数年にわたって維持療法に使う場合があります。
- 瘢痕性脱毛症は回復することがありますか?
- 二つの部分に分けて考えます。すでに瘢痕に置き換わった部位は、毛包が破壊されているため回復は難しくなります。まだ残っている毛包は、炎症を早く十分に抑えれば守ることができ、それ以上の進行を防ぐことができますので、どれだけ早く疑い、炎症を抑えるかが予後を左右します。