「スキンブースターは、どれがいちばん良いですか?」— この質問は、製品名よりも組織の状態を先に確認してからでなければお答えできない質問です。同じ素材でも皮膚バリアの状態や組織の準備状態によって反応は変わり、別の素材でも目的(保湿・再生・弾力・ボリューム)によって適合性は逆転します。製品ではなく組織の状態で決めることが、満足度を左右します。
3行まとめ
- スキンブースターは素材別にリジュラン(PN)・ジュベルック(PDLLA)・GOURI(液状PCL)・Re2O(hADM)・HA系に分かれ、それぞれ組織での反応の出方が異なります。
- 選択の出発点は製品名ではなく皮膚バリアの状態・組織の準備状態・目的(保湿・再生・弾力・ボリューム)・回復期間の許容度です。同じ素材でも組織の準備状態によって反応が変わります。
- PDLLA・PCL系は一時的な腫れ・微細な硬結感が素材の特性として現れることがあり、カウンセリングで事前にご説明すべき点です。製品同士を直接比較した臨床研究はまだ限られています。
スキンブースター5種 — 成分と組織の反応
「スキンブースター」という名前でまとめられている素材は、成分・分解の速さ・組織の反応がそれぞれ異なります。まず、それぞれの素材がどのような成分で、組織の中でどのように働くのかを整理します。
リジュラン(Rejuran) — ポリヌクレオチド(PN)
リジュランはサケなどから抽出されたポリヌクレオチド(PN)を用いる素材です。分解の過程で組織の再生・回復反応を促すとされ、バリアが弱っている肌・赤みを伴う肌・毛穴の部位で、再生方向の反応を目的に用いられます。
主な目的は保湿・再生・回復であり、ボリュームを補う素材ではありません。組織の反応が比較的穏やかで、初回から大きな腫れを伴わずに進められることが多い一方、個人差があります。
ジュベルック(Juvelook) — PDLLA(ポリ乳酸系)
ジュベルックはPDLLA(ポリ-D,L-乳酸)を主成分とする素材です。組織内でゆっくりと分解され、その過程でコラーゲンの産生を促す反応が起こります。目的は弾力・ハリの方向の改善です。
ポリ乳酸系は素材の特性上一時的な腫れ・微細な硬結感が出ることがあるため、腫れを許容しにくい時期や、回復期間を短くしたい時期には施術の時期を調整する必要があります。
GOURI — 液状PCL(ポリカプロラクトン)
GOURIは液状のPCL(ポリカプロラクトン)を用いる素材です。PDLLAよりゆっくり分解されながらコラーゲン産生の反応を促します。目指す方向はジュベルックと近いものの、持続時間と反応のカーブが異なります。
GOURIもPCL系の特性として腫れの反応が出やすいため、施術後数日の腫れや微細な硬結感についてカウンセリングで事前にご説明します。
Re2O — hADM(ヒト由来無細胞同種真皮)
Re2Oはヒト由来無細胞同種真皮(hADM)を用いて、真皮そのものにECM(細胞外基質)の素材を直接補充する施術です。厳密にはコラーゲン刺激剤とは系統が異なり、組織を刺激して自分のコラーゲンを増やすのではなく、真皮の「材料」を直接足すという考え方の素材です。
毛穴・肌のキメ・薄くなった真皮の密度が主な悩みである場合に、より直接的なアプローチになります。組織の準備状態や部位によって反応の出方が異なるため、他の素材との使い分け・併用を含めて計画します。
HAスキンブースター — ヒアルロン酸系
HAスキンブースターはヒアルロン酸(HA)を用いる素材群です。分子量・架橋の程度・グリセロールの含有量などによって複数の製品があり、保湿・表面のキメ・ボリュームの維持が主な目的です。相対的に組織の反応が穏やかで腫れが少なく、最初のスキンブースターとして検討されることが多い素材です。
同じ素材でも、組織の準備状態によって反応は変わります
スキンブースターで最も誤解されやすい点です。スキンブースターの結果は、どの製品を入れたかと同じくらい、どのような組織に入れたかに左右されます。
- バリアが傷んでいる組織 — 腫れ・刺激反応が強く出ることがあり、先にバリアの回復が必要な場合があります。
- 水分が著しく不足している組織 — 素材の吸収・分解の速さが想定と変わることがあるため、初回は強度を低めに設定します。
- 活動性の炎症が進行している組織 — 施術が炎症を刺激する可能性があるため、安定させてからのアプローチが原則です。
- 過去のフィラー・注入剤が残っている組織 — 新しい素材の反応が想定と変わることがあるため、施術の順序と間隔を調整します。
- 皮脂・赤みなど他の要因が併存している組織 — 部位ごとにスキンブースターの比重を変えて設計します。
製品が同じでも、組織の準備状態が違えば結果は変わります。製品名から決めるのではなく、組織の状態の評価を先にという順序が自然です。
カウンセリングで実際に評価する項目
スキンブースターの計画を立てるときに確認する項目です。素材名を決める前に、これらの項目の組み合わせが先に決まります。
- 皮膚バリアの状態 — 角層・真皮浅層の回復度、赤み・敏感さの有無
- 組織の準備状態 — 水分・弾力・再生の余力、活動性の炎症の有無
- 施術の目的 — 保湿・再生・弾力・ボリュームのどこに比重を置くか
- 腫れの許容度 — 施術後数日の腫れ・微細な硬結感を許容できるか(PDLLA・PCL系の判断で重要)
- 回復期間の許容度 — 日常のスケジュールと施術時期の調整
- 過去の施術歴 — これまでのフィラー・ブースター・エネルギー機器の履歴によって、組み合わせの順序と間隔が変わります
- 併存する悩み — 赤み・毛穴・小じわなど併存する悩みによって、他の施術との組み合わせを決めます
実際の施術はどのような流れで進むのか
素材ごとに細部は異なりますが、スキンブースターの大きな流れは共通して次の段階をたどります。
- カウンセリング・評価 — 上記の評価項目を確認し、素材・注入する層・間隔を一緒に設計します。
- 洗顔・麻酔 — 麻酔クリームを塗布し、吸収の時間をおきます。
- 写真・マーキング — 部位の確認と注入ポイントを印します。
- 施術 — 素材と注入層に合わせて行います。素材によって表層・真皮・皮下と層を変えて設定します。
- 鎮静・アフターケアの説明 — 腫れ・刺激の管理、紫外線対策、次回までの間隔をご案内します。
適応と非適応
適応
- 真皮浅層の水分・弾力の低下
- キメ・小じわの改善が必要な初期のエイジングサイン
- バリアの回復・再生方向のアプローチが必要な組織
- フィラーやエネルギー機器と組み合わせて維持・管理をしたい場合
非適応または慎重な適応
- 妊娠中・授乳中
- 施術部位に活動性の感染・開放創がある場合
- 活動性の炎症性ニキビ・重いトラブルが進行中の場合 — 安定後に再評価します。
- 使用する素材に対する過敏の既往がある場合
- 自己免疫疾患など組織反応の調整が必要な状態 — 使用素材ごとに判断が異なるため個別にご相談します。
- 腫れの反応を許容しにくい時期(重要なご予定の直前など) — PDLLA・PCL系は特に時期の調整が必要です。
- 最近、他のフィラー・ブースターを行って十分な間隔をおいていない場合 — 順序と間隔を調整します。
非適応には絶対的禁忌と慎重適応が混在していますので、カウンセリングの際に既往歴・服用中の薬・施術歴を正確にお伝えいただければ、安全に計画を立てられます。
スキンブースターが扱わないこと — そしてエビデンスの強さの違い
スキンブースターはさまざまな組織反応を促す道具ですが、次の点が結果の現実的な限界をつくります。
- 製品同士を直接比較した臨床研究はまだ限られている — どの製品が絶対的に優れていると結論づけることは難しく、素材ごとにエビデンスの厚みも異なります。カウンセリングではこの差を踏まえたうえで判断します。
- PDLLA・PCL系の腫れは素材の特性 — 一時的ではあるものの個人差があり、施術時期の選択が満足度に影響します。
- 骨格の変化やボリュームロスが大きい場合 — スキンブースターで補うより、フィラーやボリューム施術のほうが適していることがあります。
- 深部のたるみ・SMASのゆるみ — スキンブースターが扱う層ではありません。リフティング機器が扱う層です。
- 回数と間隔が結果を左右する — 1回で劇的に変わるというより、複数回にわたって組織の反応を積み重ねるアプローチが自然です。
スキンブースターは表層〜中間層の組織の状態を維持・改善する道具であって、顔の老化やたるみ全般を巻き戻す道具ではありません。この区別が、回数を重ねる途中での落差を小さくするポイントです。
エイブル皮膚科のアプローチ
スキンブースターのカウンセリングで私たちが守っている原則は3つです。
- 製品より組織の状態を先に診る — バリア・組織の準備状態・活動性の炎症の有無を確認してから素材を決めます。
- 腫れの反応の特性を事前にお伝えする — 特にPDLLA・PCL系は、施術後数日の腫れや微細な硬結感が素材の特性であることを、カウンセリングで事前にご説明します。
- 単一素材の繰り返しより、組み合わせと間隔が自然なことが多い — 目的に応じて異なる素材を順に組み合わせたり、エネルギー機器と併用して組織の反応を後押ししたりします。
どのブースターが良いかよりも、ご自身の組織の状態でどの素材をどの順序で入れるのかを、カウンセリングで確認されることをおすすめします。
まとめ
スキンブースターはリジュラン(PN)・ジュベルック(PDLLA)・GOURI(液状PCL)・Re2O(hADM)・HA系に分かれ、素材ごとに組織の反応が異なります。選択の出発点は製品名ではなく、バリアの状態・組織の準備状態・目的・腫れの許容度を先に評価することです。PDLLA・PCL系の一時的な腫れは素材の特性であり、製品同士を直接比較した臨床研究はまだ限られているため、カウンセリングではその差を踏まえて判断します。
よくあるご質問
- スキンブースターを何種類か一緒に受けてもいいですか?
- 異なる素材を組み合わせることはできますが、順序と間隔が結果と安全性に影響します。特に腫れの反応が大きい素材を同時に複数部位へ行うことは避け、組織の反応を確認しながら順に組み合わせるほうが自然です。詳しい組み合わせの計画はカウンセリングで設計します。
- リジュランとジュベルック・GOURIはどう違いますか?
- リジュランはポリヌクレオチド(PN)を用いる素材で、再生・回復に重点があります。ジュベルック(PDLLA)・GOURI(液状PCL)はコラーゲン産生の反応を通じて弾力・ハリの方向にアプローチします。目的(保湿・再生か、弾力・ボリュームか)によって選択が変わり、組み合わせて用いることもあります。
- PDLLA・PCL系のスキンブースターは腫れが長く続くと聞きましたが、なぜですか?
- ジュベルック(PDLLA)・GOURI(液状PCL)は、組織内でゆっくり分解されながらコラーゲン産生の反応を促す素材です。この過程で一時的な腫れや微細な硬結感が現れることがあり、これは素材自体の組織反応の特性です。施術部位・注入する層・間隔を調整して管理します。
- スキンブースターはどのように選びますか?
- 製品名よりも組織の状態を先に診ます。皮膚バリアの状態・組織の準備状態・腫れの許容度・回復期間の許容度・施術の目的を確認したうえで、それに合う素材と施術間隔を決めます。同じ素材でも組織の準備状態によって反応が変わりますので、カウンセリングでご確認いただくことをおすすめします。
- スキンブースターにはどのような種類がありますか?
- エイブル皮膚科では、リジュラン(ポリヌクレオチド・PN)、ジュベルック(PDLLA)、GOURI(液状PCL)、Re2O(ヒト由来無細胞同種真皮・hADM)、HAスキンブースターを使用しています。それぞれ成分・分解の速さ・組織の反応が異なり、目的(保湿・弾力・再生・ボリューム)と組織の状態に応じて選択します。
本コンテンツは一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の施術の適応・期待できる効果・回数・費用は、肌の状態や既往歴によって異なります。正確なご案内は皮膚科専門医の対面診療でご確認ください。
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