「毛穴が気になって来たのに、どうして毛穴の施術の話をしてくださらないのですか」。診察室でこの質問をよく受けます。毛穴を小さくすると知られている施術を思い描いて来られたのに、バリアから見ましょうと言われれば、戸惑われるのは当然です。この記事は、その目標が間違っているという話ではなく、ある種の肌では同じ目標にたどり着く順番が変わるという話です。
3行まとめ
- 毛穴・色素・瘢痕のように目に見える目標が複数ある場合、敏感肌・酒さ傾向の肌でまず決めるべきなのは、どの施術かではなくどの順番かです。
- 分かれ道の基準は毛穴の見た目ではなく、弾力が落ちた原因が今も働いているかどうかです。損傷がすでに終わった肌と今も進行中の肌は、見た目が似ていても選択が分かれます。
- 目に見える目標を後ろに置くのはあきらめではなく、時期の調整です。赤みとヒリつきが減り、軽い施術の回復が想定の範囲内で終わるようになれば、順番を再び前に戻します。
目標が間違っているのではなく、順番が違う場合があります
カウンセリングで最もよく出会うのはお悩みが一つではない場合です。頬の毛穴が広がった気がして、しみなのか赤みなのか分からない跡が残っていて、昔のニキビ跡もまだ見えて、そのうえ最近は洗顔後にヒリヒリするとおっしゃいます。書き出すと四つも五つもになります。
このとき多くの方が自然に一番気になるものから順番を組まれます。鏡を見て最初に目に入るのが毛穴なら毛穴から、写真で一番気になるのが色素なら色素から。合理的な判断ですし、ほとんどの肌ではその順番で進めても問題はありません。
ただ一部の肌では、この順番がうまく働きません。一番気になるものと、一番先に扱うべきものが違う場合があるからです。
順番を変えると実際に何が変わるのか
順番を調整する理由は、抽象的な原則のためではありません。診察室で繰り返し確認してきたのは、敏感になっている状態で損傷を与える施術を重ねると回復が長引くという点でした。回復が長引けば、次の施術までの間隔も一緒に押されます。4週間隔で計画していた回が6週、8週に延び、途中で赤みが上がって一回分を飛ばすことが起きます。
ですから、後ろに回す選択がかえって全体の期間を縮める方向に働く場合が多くあります。順番を変えるのは目標を減らすことではなく、回数を無駄にしない組み立てを探すことに近いのです。
「まとめて受けてはいけませんか」
目標が複数あるとき、最初に浮かぶ代案は同時に進めることです。同じ日に複数の施術を重ねれば期間が縮まりそうに思えるからです。実際、反応性が安定している肌では、性質の違う施術を一回にまとめる場合もあります。
ただ敏感な状態では、この組み合わせが別の問題をつくります。複数の刺激が同じ日に重なると、どれが反応を起こしたのか見分けにくくなります。赤みが長く残ったときに出力を下げるべき対象が分からなければ、次回に調整する地点を見つけられないまま同じ組み合わせを繰り返すか、すべてを中断することになります。順番を分けるのは回復の負担を減らす意味もありますが、反応を読めるようにする意味のほうが大きいのです。
付け加えると、この記事で扱うのは赤ら顔の治療をどの段階で進めるかでもなく、敏感肌にどの製品が合うかでもありません。複数の目標が同時にあるとき、その目標をどの順番に並べるか、その組み立てだけの問題です。
分かれ道は一つ — 原因が今も働いているか
順番を決めるときに実際に見る基準は、意外なほど単純です。今見えている変化をつくった原因が、すでに終わったことなのか、それとも今も続いていることなのかです。
損傷がすでに終わっている場合
年齢とともに進む内因性の老化と、紫外線が蓄積して生じた光老化がここに当たります。この二つは性質が同じです。すでに蓄積された構造の損傷であり、原因そのものは過ぎたことです。光老化の場合、コラーゲンとエラスチンの骨格がすでに変形しているため、新しいコラーゲンの産生を促す方法が論理的に合います。
計画的な微細損傷で回復反応を起こす方法は、こうした組織、つまり損傷が止まった組織に使うときに意図どおり働きます。体が傷を認識して修復に向かう過程を借りているからです。
損傷が今も進行中の場合
繰り返す刺激と炎症で肌が敏感になって生じた変化は、性質が違います。この場合は原因が現在進行形です。炎症が今も線維芽細胞を消耗させていて、そのために弾力が落ち続けている最中です。
ここに損傷を追加するのは、すでに働いている損傷の機序に同じ種類の刺激をもう一つ重ねることになります。原因を放置して結果だけに触れるという程度ではなく、原因と同じ方向に押すことに近いのです。
外から見える毛穴の形は、二つの場合でかなり似ています。どちらも頬の側がたるんでいて、どちらも弾力が落ちています。ところが今、肌の中で起きていることが正反対なので、選択が分かれます。
同じ毛穴でも読み方が変わります
毛穴の拡大の原因を整理した文献レビュー(Leeら、Dermatol Surg 2016)では、臨床的に関連が大きい要因として皮脂分泌の過剰、肌の弾力と緊張度の低下、毛包そのものの大きさの三つが挙げられています。このうち前の二つが、実際の診療で最もよく出会う分かれ道です。
皮脂タイプ
Tゾーンを中心に円形に近い形ではっきりし、日中のテカリを伴い、手で触れると表面がなめらかに滑ります。この場合は皮脂分泌そのものを扱う方法が順番として前に来ます。アクアピールや状態に合わせたピーリング、ニキビを併発している場合のゴールドPTTのように、皮脂腺と角質の側を扱う選択肢がここに置かれます。
老化・光老化による弾力タイプ
頬全体がたるみながら一緒に伸び、紫外線を浴びてきた経歴と小じわが一緒に見られます。損傷がすでに終わった状態なので、コラーゲンを誘導する方法が第一の選択肢になります。ポテンツァ(ニードルRF)やピコプラスのフラクショナルモード、状態によっては高周波系がここに当たります。
炎症が介在する弾力タイプ
頬の内側で縦に長くなり、横になると目立たず、座ると目立ちます。重力の方向に伸びるということです。特徴的なのは、皮脂が特別に多いわけではないのに毛穴がたるんで見える点です。むしろ乾燥するとおっしゃる方に見られることもあります。赤みとヒリつき、回復の遅れが繰り返される経過が一緒についてきます。この記事が扱うのは、まさにこのタイプです。
| 区分 | 皮脂タイプ | 老化・光老化による弾力タイプ | 炎症が介在する弾力タイプ |
|---|---|---|---|
| 目立つ場所 | Tゾーン中心、円形 | 頬全体、たるみを伴う | 頬の内側、縦に長くなる |
| 一緒に見えるもの | 日中のテカリ、滑らかな表面 | 紫外線を浴びた経歴、小じわ | 赤み、ヒリつき、回復の遅れの繰り返し |
| 今起きていること | 皮脂分泌が多い状態 | 損傷はすでに終わった状態 | 損傷が進行中の状態 |
| 先に行うこと | 皮脂分泌そのものを整える | コラーゲンの誘導 | バリア回復と真皮の補強 |
| エネルギー施術の位置 | 状態を見て併行 | 第一の選択肢 | 落ち着いた後に再検討 |
ここで一つ整理しておくこと
皮脂分泌を調節する主な因子はアンドロゲンであり、バリアの状態が皮脂量を直接左右するとは考えにくいところです。ですから「肌が敏感になって皮脂が増え、それで毛穴が大きくなった」という説明は方向がずれています。敏感になった肌で広がった毛穴は、皮脂よりも弾力の側に原因を求めるほうが妥当です。
そして三つのタイプがきれいに分かれるわけでもありません。皮脂も多く、かつ敏感な方がいらっしゃいますし、光老化と繰り返す炎症が一緒にある方もいらっしゃいます。ですから実際にはどちらの比重が大きいかを見て順番を決めることになります。
バリアの問題がなぜ真皮まで降りてくるのか
「バリアが弱いことと毛穴が広がったことに、どんな関係があるのか」という質問をよく受けます。表皮の問題と真皮の問題が別々のことに感じられるからです。ところがこの二つは、思っている以上に近くつながっています。
悪循環の構造
バリアが慢性的に崩れた状態では、損傷と炎症が互いを呼び合う循環が生まれます。バリアが壊れると外部の刺激が入りやすくなり、その刺激が炎症を起こし、炎症がまたバリア回復を妨げます。一度の損傷で終わらず、低強度の炎症が維持され続ける状態になります。
問題は、この炎症が表皮だけにとどまらない点です。真皮にサイトカインの負担が蓄積すると、線維芽細胞の老化が早まると説明されています。線維芽細胞はコラーゲンをつくる細胞ですから、この細胞が疲弊すると真皮の構造そのものが薄くなり、弾力が低下することがあります。
アトピー性皮膚炎の動物モデルでも似た図が観察されます。Th2系の炎症が持続する状態でフィラグリンの発現が下がると同時に、真皮の側でも肥満細胞の浸潤とコラーゲン沈着の異常が一緒に現れました。表皮の炎症と真皮の変化が別々に動くのではないという意味です。
弾力が落ちると毛穴が広がるのか
それでは、弾力の低下が実際に毛穴につながるのかも確認が必要です。この部分にはヒトを対象に実際に測定した相関研究があります。Cutometerで肌の弾力を測定した研究では、R7パラメータが大きい毛穴と統計的に意味のある負の相関を示し(r=-0.337、P=0.033)、R9パラメータは逆に正の相関が現れました(r=0.54、P<0.001)。弾力が落ちるほど毛穴が大きく測定されるという意味であり、研究陣は弾力の改善が毛穴の大きさと数を減らす根本的な戦略になりうると整理しています。
老化と光損傷が進んだ肌では、コラーゲンとエラスチンの骨格が崩れながら、毛穴周りの弾性線維の形成に関わるMAGP-1の発現が減少することも報告されています(Zhengら、Clin Cosmet Investig Dermatol 2013)。
根拠の水準について
ただし正直に申し上げる部分があります。バリアの損傷が真皮の弾力低下につながるという説明は、レビュー論文の機序の説明と動物モデルの所見に基づいています。ヒトで長期に追跡した研究はまだ不足しており、その点を踏まえてお読みいただければと思います。
エネルギーベースの施術が悪いのではなく、時期が違います
ここまでお読みになると、自然にこんな誤解が生まれることがあります。「ではニードルRFやフラクショナルレーザーは肌を傷める危険な施術なのか」。そうではありません。
損傷は副作用ではなく作動の原理です
ポテンツァのようなニードルRFやCO2フラクショナル、ピコプラスのフラクショナルモードのようなエネルギーベースの施術は、微細な損傷を通じて回復の過程でコラーゲンを誘導します。その過程で角層の脂質構造が一時的に乱れ、経表皮水分蒸散量が増え、炎症性のシグナルが放出されます。ですがこれは意図された過程であり、思うほど長く続く変化でもありません。
ニードルRFを対象とした研究では、施術後1〜3日は経表皮水分蒸散量(TEWL)が上昇し、7日目には元の値に戻り、肌の敏感さの指標でも長期的に意味のある変化は確認されませんでした。つまり正常な肌で通常の条件で行うのであれば、バリアの損傷は一時的で元に戻る範囲だという意味です。「エネルギー施術がバリアを壊す」といった説明は正確ではありません。
そのデータが当てはまらない肌
重要なのは、先ほどの回復のデータがバリアの正常な肌から出たものだという点です。すでにバリアが弱まり、炎症の反応性が上がっている肌では、同じ刺激でも反応がより大きく長く続くことがあります。赤みが長く残ったり、ヒリつきが想定より長く続いたりする場合がこれに当たります。すでに拡張した毛細血管をもつ肌では、ニードルRFの施術が赤ら顔を悪化(フレア)させうるという臨床的な懸念も示されています。
ただしこれは禁忌ではなく条件の問題です。してはいけないという話ではなく、パラメータを下げ、間隔を空け、順番を調整すべきだという水準です。正常な肌では損傷を与えて回復する段階にスキンブースターを加えて回復を後押ししますが、すでに損傷のある肌では追加の損傷をそもそも入れないか、順番を後ろに移すほうがよいという意味です。
実際にはこの順番で組み立てます
ですから目標が複数ある敏感肌では、リストを三つの塊に分け直して並べます。重要度の順ではなく先行条件の順です。
まず — 刺激の原因を減らし反応性を下げる段階
一番前に来るのは施術ではなく、今も働いている刺激要因を見つけて減らすことです。使用中の化粧品と有効成分、洗顔の習慣、最近受けた施術の履歴、季節と環境の要因を一緒に見ます。この段階が抜けたまま鎮静の施術だけを繰り返すと、同じ場所に戻ってきやすくなります。
- LDM(低強度超音波による鎮静) — 熱の負担が少ない方法で、鎮静と回復を助ける位置に置きます。他の施術と間隔を合わせるのも比較的しやすいほうです。
- Vビーム(595nmパルスダイ) — 赤みと拡張した血管の負担が大きい場合、血管側の負担を先に下げる選択肢になります。この場合も出力と間隔は反応性を見て保守的に取ります。
- PDT・ゴールドPTT — ニキビの炎症を併発していて、それが敏感さの一つの軸になっているなら、そちらを先に整えるほうが順番としては前に来ます。
- アクアピール・ピーリング — 角質と皮脂の負担が重なっている場合に限り、出力と周期を落として慎重に配置します。敏感な状態で慣例どおりの強さで繰り返すと、かえって刺激の側に傾くことがあります。
次に — 追加の損傷なしに真皮を補強する段階
反応性がある程度下りてきたら、損傷を与えずに真皮を補う方向に移ります。ここで前に来るのが二つの系統です。
- リジュランヒーラー(PN) — ポリヌクレオチドについての資料は比較的豊富なほうです。DNCBでアトピー性皮膚炎を誘発したマウスモデルの研究では、PNを局所に塗布したとき経表皮水分蒸散量と血清IgEが有意に減少し、表皮と真皮の厚さ、肥満細胞の数も一緒に減りました。バリアの側を扱いながら、わずかなボリュームの効果も一緒に期待できるため、損傷した肌の毛穴では前の方に配置しています。逆に正常な肌の毛穴の改善では第一選択としては使いません。
- Re2O・CellREDM — hADM(ECM)系で、脱細胞化した細胞外基質を真皮に直接補充する方法です。コラーゲンの産生を誘導するのではなく、不足している構造物そのものを補う考え方なので機序が異なります。毛穴周りの弾力に対して、別の方向からのアプローチになりえます。ただし関連する論文が相対的に少なく、PNより根拠の水準が低い点は踏まえてご覧いただく必要があります。
注入の施術だからといって、すべて負担が同じというわけではありません。針を使わない注射(シナジェット)のように軽く見える方法も、圧そのものが刺激になりうるため、敏感な状態では出力と範囲を落として設定します。
最後に — 最初に望まれていたその目標
毛穴、色素、瘢痕のように最初に診察室に来られた理由がここに置かれます。後ろに配置するからといって、重要度の低い目標という意味ではありません。前の二つの段階がこの段階の結果を左右するため、順番がこう決まるのです。反応性が落ち着けば、ポテンツァ(ニードルRF)、ピコプラス、CO2フラクショナルのように、もともと検討していた選択肢が同じ条件で再び候補になります。
回数と間隔の決め方
この組み立てでは、回数と間隔はあらかじめ決めた表に従うよりも、前回の回復を見て次回を決めるやり方に近いものです。敏感な肌では、同じ施術を同じ出力で受けても回復にかかる時間が方によって違い、同じ方でも季節によって変わるからです。
ですから初回は意図的に低い出力から始める場合が多くあります。効果を控えめにするためではなく、その肌の反応の幅をまず確認するためです。この一回で得た情報がその後の回の出力と間隔を決める基準になり、結果として途中で計画が止まることを減らしてくれます。回数と間隔、メンテナンスの時期は最初の施術の前に一緒に決めますが、経過によって調整されうるという前提を置いて始めます。
後ろに回る選択肢と、その理由
どの施術が後ろに回るのかを整理すると、基準がより明確になります。共通点は一つです。損傷や炎症を作動の原理としている施術だという点です。
計画された損傷で作動する施術
ポテンツァ(ニードルRF)、CO2フラクショナル、ピコプラスのフラクショナルモードがここに属します。先に見たとおり正常な肌ではバリアへの影響は元に戻る範囲ですが、反応性が上がった肌では同じ条件でも赤みとヒリつきが長引くことがあります。ですから出力を下げて間隔を空けるか、いっそ順番を後ろに移す判断をすることになります。
意図された炎症で作動する施術
ジュベルックボリューム(PDLLA)やスカルプトラ(PLLA)、レディエッセ(CaHA)のようにコラーゲンの産生を誘導する系統は、作動の仕方が少し違います。真皮に入った粒子を免疫系が異物として認識することで反応が始まり、このとき生じる低強度の炎症反応がマクロファージの分化と線維芽細胞の活性化につながり、コラーゲンとエラスチンの合成が誘導されます。効果そのものが意図された炎症に支えられている構図です。
正常な肌では、この反応は予測できる範囲で起こります。ところがすでに炎症の反応性が上がっている肌なら、同じ刺激に対する反応が正常の範囲を外れる可能性を考えてみることになります。発赤が長引いたり、腫れが想定より長く残ったりする場合がそうです。参考までに、コラーゲンの産生を誘導する施術そのものが、活動性の感染や湿疹、乾癬のように炎症が進行中の部位には施術を避けるか延期するよう勧められています。
ここで明確にしておくこと
ただし一つは正直に申し上げなければなりません。敏感肌でこの系統が他の成分より劣ることを直接比較した臨床研究は確認されていません。機序上慎重であるべきだという推論であって、立証された結論ではありません。異物反応に基づく施術を後回しにする判断は機序的には妥当ですが、比較臨床研究で確証されたものではないという点を、説明する側が先に明らかにしておくのが筋だと考えています。
順番を前に戻してよい合図、戻すべき合図
最も多くいただく質問は、結局これです。「では、いつ元々受けたかった施術を受けられますか」。カレンダーで決まった期間があればよいのですが、実際には状態を見て判断します。
前に戻してよい合図
- 普段の赤みとヒリつきが目に見えて減ったか — 一日のうち赤くなる頻度と続く時間が一緒に減っているかを見ます。
- 洗顔や化粧品の使用後のしみる感じが以前より軽いか — 同じ製品を使ったときの反応が基準になります。
- 軽い施術を受けたときに回復が想定の範囲内で終わるか — 鎮静の段階の施術や低い出力の施術で、回復が計画どおりに収まるかが実質的な試金石になります。
この三つは、精密な撮影や特定の機器の数値で判定される項目ではありません。主観的な症状と目に見える状態を総合して判断すべき部分であり、だからこそ診察で一緒に確認します。三つがある程度整えば、そこからは老化・光老化による弾力タイプと同じ方法が可能になります。
逆に順番を戻すべき合図
進行中だった計画を再び前の段階に戻す場合もあります。次のような流れが見えたら、出力と順番を組み直します。
- 施術後の赤みが普段より長く残る場合 — 同じ施術を同じ条件で受けたのに回復期間が目に見えて延びたなら、合図と見ます。
- 次回の前に状態が元に戻らない場合 — 間隔を空けても出発点が後ろに押され続けるなら、順番そのものを再検討します。
- しみる感じやほてりが新たに生じたり頻繁になったりする場合 — なかった症状が出たなら、出力より先に刺激要因をもう一度見ます。
- 結果は変わらないのに回復だけ長引く場合 — 損傷に対して回復が追いついていないという意味かもしれません。
色素と瘢痕も同じ原則です
この記事は毛穴を例に挙げましたが、基準そのものは他の目標にもそのまま当てはまります。色素が目標の場合、今も炎症が上下している肌では跡が戻ってくる流れが生じやすくなります。また赤み自体が色素のように見える場合もあるため、何を目標に置くのかを確認し直すことが順番としては先に来ます。瘢痕も同じく、構造を扱う治療は周りの組織の回復力を前提にするため、反応性が落ち着いた後のほうが条件が良くなります。
最後に
診察室でこのお話をすると、ほとんどの方が少し戸惑われます。毛穴に良いと知られている施術を思って来られたのに別の話を聞かれるのですから、当然のことです。そのお気持ちは十分に分かります。ですからもう一度申し上げると、ずっと受けられないのではなく、順番が後ろになるだけです。
そして今日お話しした判断は、確立されたプロトコルではなく、今ある根拠で立てた最も合理的な方向です。順番についての判断は個別の機序の根拠を組み合わせた推論であり、これを直接検証した比較臨床研究はまだありません。今後の研究によって変わりうるものであり、そこまでお伝えするのが筋だと考えています。
付け加えると、肌の状態とバリアの機能、炎症の程度は方によって大きく違います。同じ順番を当てはめても経過と所要期間は変わりうるため、個人差があります。エネルギーベースの施術では赤み、腫れ、色素の変化、まれに瘢痕が生じることがあり、注射の施術では内出血、しこり、腫れ、感染の可能性があります。バリアが損傷した状態では、こうした反応がより大きかったり長く続いたりすることがあります。ですから施術前の状態の評価が必要です。
診察から施術まで
皮膚科専門医が直接診察して原因の層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで、同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術をおすすめする仕組みではありません。
回数・間隔・メンテナンスの時期・費用は、最初の施術の前に一緒に決めます。
よくあるご質問
- 順番を後ろにすると、かえって全体の期間が長くなるのではないでしょうか。
- 逆の場合が多くありました。敏感な状態で損傷を与える施術を重ねると回復が長引き、次の施術までの間隔も押し続けるため、結果として総期間がかえって延びてしまいます。ずっと受けられないのではなく、たどり着く道を短く取る選択だとお考えください。
- もともと受けたかった施術は、どのくらい待てば受けられますか。
- カレンダーで決まった期間ではなく、状態で判断します。普段の赤みとヒリつきが目に見えて減ったか、洗顔や化粧品の使用後のしみる感じが以前より軽いか、軽い施術を受けたときに回復が想定の範囲内で終わるかを合わせて見ます。かかる時間は方によって大きく違い、個人差があります。
- 色素や瘢痕のほうが急ぎたいのですが、それも後回しになりますか。
- 同じ基準で見ます。今も炎症が上下している肌でトーニングや瘢痕の施術を進めると、回復が長引き、色素がかえって戻ってくる流れが生じることがあります。逆に赤み自体が色素のように見える場合もあるため、何を目標に置くのかを診察で確認し直すほうが、順番としては先に来ます。
- ジュベルックやスカルプトラもコラーゲンをつくると聞きますが、なぜ後回しにするのでしょうか。
- この系統は、真皮に入った粒子を免疫系が認識することで生じる低強度の炎症がコラーゲン合成につながる仕組みです。効果そのものが意図された炎症に支えられているため、すでに炎症の反応性が上がっている肌では、反応が想定の範囲を外れる可能性を考えることになります。ただしこれは機序上の慎重さであって、比較臨床研究で確証された結論ではありません。
- リジュランを受けると、毛穴も一緒に良くなりますか。
- 毛穴を直接引き締める施術ではありません。バリアと炎症の側が整うことで毛穴周りの真皮の状態が良くなり、その結果として目立ちにくくなる、という順序に近いものです。PNが毛穴を小さくすることを直接確認した研究はまだないため、正常な肌の毛穴には第一選択としては使わず、バリアが損傷している方の毛穴では前の方に配置しています。
- では、先に行う施術としてはどのようなものを考えますか。
- 刺激要因を整理することが一番前に来て、その次にLDM超音波のように熱の負担が少ない鎮静の段階を置きます。赤みと血管の負担が大きい場合はVビームを、ニキビを併発している場合はPDTやゴールドPTTを状態に合わせて配置します。真皮を補強する必要があるときは、リジュランヒーラー(PN)やRe2O・CellREDM(hADM/ECM)のように、追加の損傷なしに補う方向を先に検討します。
- では、私の肌ではなぜ違う見方をされるのでしょうか。
- その回復のデータが、バリアが正常な肌から出たものだからです。すでにバリアが弱く、炎症の反応性が上がっている肌では、同じ刺激でも赤みが長く残ったり、ヒリつきが想定より長く続いたりすることがあります。してはいけないという意味ではなく、出力を下げ、間隔を空け、順番を調整しましょうという水準の話です。
- ポテンツァやフラクショナルレーザーは、肌を傷める施術なのでしょうか。
- 損傷は副作用ではなく、作動の原理です。微細な損傷を与え、回復の過程でコラーゲンがつくられるようにする方法で、ニードルRFを対象とした研究では、施術後1〜3日は経表皮水分蒸散量(TEWL)が上昇し、7日目には元の値に戻りました。正常な肌で通常の条件で行うのであれば、バリアへの影響はおおむね元に戻る範囲と考えています。
- バリアが弱くなると、本当に弾力まで落ちるのでしょうか。
- バリアが壊れると刺激が入りやすくなり、その刺激が炎症を呼び、炎症がまたバリア回復を妨げるという流れが生まれます。この負担が真皮まで蓄積すると、コラーゲンをつくる線維芽細胞の老化が早まると説明されています。ただしこの部分は機序の説明と動物モデルの所見に基づくもので、ヒトで長期に追跡した研究はまだ不足しています。
- 頬の毛穴が広がった気がしますが、皮脂のせいか弾力のせいか、どう見分けるのでしょうか。
- 皮脂によるものはTゾーンを中心に円形に近い形ではっきりし、日中のテカリを伴う傾向があります。弾力によるものは頬の内側で縦に長くなり、横になると目立たず、座ると目立つという特徴があります。両方が混ざっている方も多いので、実際にはどちらの比重が大きいかを見て順番を決めます。
- 私のお手入れが悪くてこうなったのでしょうか。
- そういう意味ではありません。肌が敏感になる背景には、生まれ持った反応性、季節や環境、これまでの治療歴のように、ご自身では選べなかった要因が多く混ざっています。診察室で順番を組み直すのは、原因を問うためではなく、これからの回数を無駄にしないためです。
- 毛穴が気になって来たのに、バリアからと言われると、毛穴は診ていただけないということでしょうか。
- 毛穴を目標から外すのではなく、順番の後ろに移すということです。今広がって見える毛穴が、毛穴そのものよりも周りの真皮が弱くなった結果である場合、その弱まりがまだ進行中なら、毛穴の施術を先に入れても原因はそのまま残ります。目標は同じで、たどり着く道筋だけが変わるとお考えください。