カウンセリングがほぼ終わり、席を立ちながら小さな声で付け加えられる質問があります。「ところで、それって…かなり痛いですか?」効果や費用よりもこの一点が気にかかって、数か月、長い方では数年、施術を先延ばしにしてこられた方もいらっしゃいます。この記事は、どれくらい痛いのかをあらかじめお伝えして怖がらせるためのものではありません。痛みがどのように生まれ、どこで調節できるのかを知って臨めば、同じ施術でもずっと負担が軽く過ぎていく、というお話をするための記事です。
3行まとめ
- 痛みは皮膚から始まり、脊髄を経て脳で完成する4つの段階をたどります。大切なのは、その途中に調節の段階が挟まっているという点です。痛みは刺激の大きさで決まる固定値ではなく、いくつもの地点で手を入れられる変数です。
- 同じ施術でも、感じ方は人によって違います。皮膚の厚みと密度、部位の神経分布、前日の睡眠、予期不安と予測可能性が、いずれも痛みの強さに実際に関わっています。口コミで読んだ強さが、ご自身の強さではありません。
- 目標は我慢しきることではなく、扱うことです。痛いとお伝えいただくことは施術の安全のためにも必要な情報であり、施術前・中・後のそれぞれの段階に、取り出して使える手段があります。痛みの負担が軽い選択肢から始めるのも一つの方法です。
同じ施術なのに、なぜ平気な人とつらい人がいるのか
診察室で繰り返し確認することになる事実が一つあります。同じ機器で同じ設定、同じ部位に施術しても、反応は同じにならないということです。思ったより平気だったとおっしゃる方もいれば、同じ場所でとてもつらそうにされる方もいます。この違いは我慢強さの問題ではなく、痛みが生まれる条件そのものが違うためです。
皮下注射を対象に行われた研究を見ると、痛みの程度に影響する要因は四つのまとまりに整理されます。針の特性(太さ・長さ・鋭さ)、薬液の特性(粘度・pH・浸透圧・量)、注射の手技(速度・深さ・部位)、そして患者さん側の要因(年齢・性別・体重・不安)です。四つのうち一つが丸ごと人の側にあるという点が目を引きます。施術する側がどれだけうまく調整しても、受けられる方の条件が痛みの一つの軸を成しているということです。
痛みの閾値の個人差は、実際に存在します
痛みに敏感な方が診察室で最もよく口にされるのが、「みんな我慢しているのに、自分だけ大げさな気がする」という言葉です。そんなことはありません。痛みの閾値の違いは心の持ちようの問題ではなく、次のような物理的・生理的な条件から生まれます。
- 皮膚の物理的な条件 — 真皮が厚く密であるほど、同じ量の薬剤が広がる空間が狭くなり、その分だけ局所の圧が高くなります。
- 部位の神経分布 — 同じ顔の中でも、区域ごとに神経線維の密度の差が大きくあります。
- その日の体調 — 睡眠が不足すると痛みへの感受性が40〜50パーセントほど上がるという報告があります。
- これまでの経験 — 痛かった記憶は次の施術を前にした緊張を高め、その緊張がふたたび痛みの感じ方に関わります。
個人差が大きいという事実が重要な理由は、別のところにあります。痛みのコントロールも個別化されるべきだ、という意味になるからです。どなたにも一律に麻酔クリームを30分置いて始めるやり方では、敏感な条件をお持ちの方には十分でないことがあります。
口コミの強さを、ご自身の基準になさらなくて大丈夫です
施術の口コミを探すと、同じ施術について正反対の表現が出てきます。まったく痛くなかったという口コミと、二度とできないという口コミが、同じ名前の下に並んでいます。どちらも事実でありえます。ここまで見てきた条件が、それぞれ違うからです。
他の方の強さをご自身の基準にすると、両方向で不利になります。痛くないという口コミだけを見て何の準備もなく臨めば、予想と違う感覚に大きく驚くことになりますし、痛いという口コミだけを見て怖がれば、すでに緊張した状態から始めることになります。必要なのは他の方の強さではなく、ご自身の条件に合わせた計画です。
痛みが生まれる4つの段階
痛みは皮膚にある侵害受容器(Nociceptor)から始まります。私たちの体には数百万個の侵害受容器が分布し、皮膚1平方センチメートルあたり約2,000個程度とされています。この受容器が機械的・熱的・化学的な刺激を感知し、神経を通じて脳へ送り上げます。
伝達を担う神経線維も一種類ではありません。Aδ線維は鋭く局所的な痛みを速く伝え、C線維は鈍く長く続く痛みをゆっくり伝えます。注射のときに最初のチクッとした感覚が過ぎたあとにジンジンする感覚が残るのは、性質の異なる二つの経路が時間差をおいて働くためです。
刺激から感覚まで、4つの関門
- 第1段階 変換(Transduction) — 機械的・熱的・化学的な刺激が末梢神経の終末に届きます。損傷した細胞からブラジキニン・プロスタグランジン・ヒスタミンといった伝達物質が放出され、受容器が活性化して興奮します。
- 第2段階 伝達(Transmission) — 一次ニューロンが末梢で集めた情報を脊髄(後根神経節と後角)へ送り、そこからさらに二次ニューロンへ渡します。Aδ線維とC線維がそれぞれ速い痛みと遅い痛みを担います。
- 第3段階 調節(Modulation) — 脊髄と脳の抑制・興奮の回路が、痛み信号の大きさを調整します。ゲートコントロールと内因性オピオイドがここにあたります。
- 第4段階 認知(Perception) — 感覚の情報が視床と大脳皮質に届いて、はじめて「痛い」という感覚的・情動的な認識が完成します。
この4段階の中で最も注目していただきたいのが第3段階です。痛みは皮膚から脳までそのまま届けられるのではなく、途中で大きさが調整されてから到着します。調節回路が存在するということは、その回路に介入する方法も存在するということです。冷やす、振動を与えるといった単純に見える方法が実際に痛みを下げるのは、ここに理由があります。
そして第4段階も見過ごせません。痛みが完成する場所は皮膚ではなく脳であり、その認識は感覚であると同時に情動的な体験です。心の状態が痛みの強さに関わるという話は、気のせいだという意味ではなく、痛みの認識がもともとそのようにできているという意味です。
段階ごとに、手を入れられる場所が違います
4つの段階に分けて見ることが実際に役立つのは、段階ごとに介入できる方法が違うからです。
- 第1段階への介入 — 刺激そのものを減らす場所です。施術の深さと出力、注入速度、製剤の粘度、針の選択がここにあたります。
- 第2段階への介入 — 信号が上がっていく道を遮る場所です。表面麻酔と、痛みの強い区域に限定した神経ブロックがこの段階で働きます。
- 第3段階への介入 — 信号の大きさを調整する場所です。クーリングやバイブレーションのように、痛みを直接遮らずに感じ方を下げる方法がここに入ります。
- 第4段階への介入 — 認識が完成する場所です。十分な説明と予測可能性、呼吸、注意をそらすことが関わります。
痛みのコントロールを一つの方法ではなく複数の方法を重ねる形で組み立てるのは、ここに理由があります。一つの方法はたいてい一つの段階にしか作用しませんが、作用する段階が互いに異なる方法を併用すれば、それぞれの隙間を埋めることができます。
予期不安と予測不能さが、痛みに関わる仕組み
先ほど、痛みに影響する患者さん側の要因に不安が含まれていたのを覚えていらっしゃると思います。緊張すると交感神経が活性化し、その状態では同じ刺激も大きく感じられます。施術台の上で息を止め、肩に力が入っている状態は、痛みを受け止めるうえで最も不利な条件です。
分からない状態のほうが痛く感じます
不安のかなりの部分は予測不能さから来ます。いつ始まるのか、何回行うのか、この感覚がどれくらい続くのかが分からないと、施術の時間全体を警戒状態のまま通過することになります。反対に、次に何が来るのか分かっていれば、同じ刺激が来ても体は準備した状態で受け止めます。施術前の説明が親切さの問題ではなく、痛みのコントロールの一部である理由です。
予測可能性は、おおむね次の四つからつくられます。
- どんな感覚なのか — チクッとする痛みなのか、重く響く熱感なのか、締めつけられる感じなのかを、あらかじめ知っておいていただくこと
- 順序と回数 — どの部位から始めて、何回に分けて進めるのか
- 止める合図 — 手を挙げれば止めるという約束があること自体が、コントロール感をつくります
- 終わる地点 — 残りの量と残りの時間を、途中途中でお伝えすること
ご自身で準備できる部分もあります。前日にしっかり眠っていただくことが一つ目です。睡眠不足が痛みへの感受性を上げる点は、先ほど申し上げたとおりです。二つ目は呼吸です。5秒吸って、5秒止めて、5秒吐いて、5秒休む5-5-5-5呼吸は緊張を下げるのに役立ち、注射の施術ではいっそ呼吸のリズムに合わせて進めることもあります。
一つだけ、はっきりさせておきたいことがあります。予期不安が痛みを大きくするという話は、痛みがあなたのせいだという意味では決してありません。むしろ逆です。手を入れられる変数がもう一つあるという意味であり、その変数のかなりの部分は、説明と進め方によってクリニックがつくってお渡しすべき役割です。
施術ごとに、痛みの性質が違います
痛みを痛い・痛くないの一本の線だけで見ると、準備できることがありません。ところが実際には、施術ごとに痛みの性質が違います。どこで、どのような形で、どれくらい続くのかが違い、性質が分かれば備え方も変わります。
深い層の熱 — 重く響く痛み
ウルセラプライムのような高密度焦点式超音波は、超音波エネルギーを一点に集めて皮下、とくに筋膜の部位に60〜70度の熱凝固点をつくります。この過程で熱を感知するTRPV1チャネルが活性化し、substance PやCGRPといった神経ペプチドが放出されます。ひとことで言えば熱による侵害受容です。
深さによって感覚の質も変わります。筋膜層を狙う4.5mmチップでは筋膜が収縮して重く深い痛みを感じ、3.0mmチップではコラーゲンが変性して締めつけられる感じが際立つ傾向があります。骨が響くようだという表現はここから出てきます。ただ、この痛みには予測可能性の面で有利な点が一つあります。ショット単位で区切られる痛みなので続けて続かず、一回の感覚が短く過ぎていくという点です。
表面の熱 — ひりひりと熱い感覚
デンシティのような順次照射の高周波や、オンダのようなマイクロ波系は、組織の中のイオンが振動して熱が発生する方式です。そのため痛みもより浅いところで、チクチクとした感じと熱感の形で感じられます。深いところで響く痛みとは性質が明らかに違います。
高周波では一つ押さえておきたいことがあります。痛みを完全になくしてしまうことが、かえって不利になりうるのです。組織に伝わる熱の程度を感覚で確かめながら出力を調節する必要がある施術だからです。耐えられる範囲の中で十分に伝わることが望ましく、部位によって強さに差をつける必要もあります。ですので高周波の施術では、注射や超音波の施術ほど痛みを強く遮断せず、代わりに今どのくらいかを途中途中で伺います。ここでの痛みは、なくすべきものではなく読み取るべき情報です。
注射 — 機械的な圧と化学的な刺激が重なる痛み
リジュランのように真皮の中に薬剤を入れる注射は、また別の痛みです。真皮は浅く密な組織なので、広く深い皮下脂肪に比べて注入により大きな圧が必要になります。真皮内注射では皮下組織よりも65パーセントほど高い圧がかかる必要があると報告されています。
ここに粘度が加わります。粘度の高い製剤ほど周囲へゆっくり広がりながら一か所にとどまって周りの組織を押しのけ、その圧が機械受容器を刺激します。さらに、水ではない成分が入ることで生じる反応もあり、PN成分が起こす炎症反応が施術後のひりひり感として残ることもあります。密なコラーゲン線維網を突き抜けて入る機械的な刺激、毛穴や皮脂腺の構造に沿って不均一に広がる拡散、厚い真皮で長く保たれる圧が重なるわけです。
そのため、真皮が厚く毛穴が多い部位、すぐ下に骨があって圧が分散されにくい部位で強く感じられる傾向があります。前頬と顎先、口の周りが代表的です。部位もさることながら、皮膚のタイプ自体が厚く密な方のほうが強く感じられる傾向があります。
短く繰り返される刺激 — ニードルとレーザー系
ポテンツァのようなニードル高周波は、先の二つが重なる形です。微細な針が皮膚に入る機械的な刺激と、針先から伝わる高周波の熱刺激が一緒に来るためです。そのためチクッとした感覚と熱感が重なって感じられ、針が入る深さによっても感じ方が変わります。
CO2フラクショナルのように微細な熱刺激の点を格子状に残すレーザーや、Vビームのような血管レーザーは、一回の刺激が短く終わる代わりに、それが何度も繰り返される構造です。この系統で感じ方を左右するのは、一回の強さよりも繰り返される回数とその間隔である場合が多くあります。
短く繰り返される刺激は、予測可能性をつくるうえではむしろ扱いやすい形でもあります。何回に分けて進めるのか、一区域にどれくらいかかるのかを知っていただければ、同じ刺激もずっと楽に過ぎていきます。途中で少し休憩を挟むことも十分に可能です。
痛みの性質が違うということは、対応も違うべきだという意味です。深い層の熱による痛みには、部位ごとの深さと出力の調整、そして麻酔の方法を足していく組み立てが合います。表面の熱による痛みにはやり取りしながら強さを合わせるほうが合い、注射の痛みには製剤の粘度と針の選択、注入速度と深さの調整が先に来ます。
顔には、より敏感な区域があります
顔の感覚は三叉神経が担っており、この神経は三つに分かれます。上からV1(眼神経)が額と目、鼻の上部を、V2(上顎神経)が頬の中央部と鼻、上唇を、V3(下顎神経)が下唇と顎、フェイスライン、耳の周りを担当します。
この三つの区域の感じやすさは同じではありません。慢性顔面痛を分析した研究では、V2とV3が全体の痛みの95パーセント以上を占めると報告されており、V3の神経線維の密度はV1の約2倍に達します。密度を数値で見ると、下唇・顎・フェイスライン・耳の周り(V3領域)が84 Units/cm²、頬の中央部・鼻・上唇(V2領域)が67 Units/cm²、額・目・鼻の上部(V1領域)が48 Units/cm²程度と報告されています。
そのため、リフトアップ系の施術でフェイスラインや顎の下を通るときに、とりわけ強く感じられる方が多くなります。反対に額と目の周りは、比較的楽に過ぎていく傾向があります。
この地図をお伝えする理由は、どこが痛いかを先にお知らせして怖がらせるためではありません。あらかじめ分かっていれば、その区域だけを個別に準備できるからです。該当する部位に麻酔の時間を長めに取る、その区域に限定して麻酔の方法を追加する、その部位を通るときにクーリングとバイブレーションを併用する、といった形です。敏感な区域を施術のどの時点に配置するかも調整できます。
注射系は少し違う地図に従います。神経の分枝よりも皮膚の厚みと密度、骨との距離のほうが大きく働くためです。同じ方の中でも部位ごとに違い、方によっても違います。ですので注射の施術では、皮膚の状態を見て痛みの程度をあらかじめ見積もったうえで、麻酔の時間を調整したり方法を足したりする準備をします。
一つ付け加えると、痛みの強い区域が効果の面で重要な区域と重なることが少なくありません。フェイスラインがそうです。痛いからその部位を飛ばすのではなく、痛みを管理しながらきちんと進めるほうが適切な理由です。
我慢することではなく、扱うこと
痛みへの向き合い方が変わると、施術の体験そのものが変わります。耐えるべき関門として見れば施術のあいだ持ちこたえることしか残りませんが、調節できる条件として見れば、手を入れられる場所がいくつも出てきます。
痛みは、施術中に必要な情報でもあります
痛みはもともと体を守るための防御機構です。予想と違う感覚、たとえば特定の一点だけがやけに鋭いとか、骨が響く感じがとりわけ強いとか、熱が長く残るといった信号は、深さや出力を調整すべきだという情報でありえます。お伝えいただいてはじめて調整が可能になります。
エイブルで鎮静・睡眠麻酔を基本に置いていない理由も、ここにあります。
- リアルタイムの確認が必要な施術が多くあります — 手術と違い、皮膚科の施術は鏡で確認しながら、あるいは進行に伴う変化を見ながら進める必要がある場面が多くあります。
- 感覚のフィードバックが安全に関わります — 強すぎる熱や想定外の痛みをその場で教えていただけてはじめて、施術中に方向を変えることができます。
- 進行の過程を一緒に確認していただけます — どの部位をどの強さで何回進めるのかを分かった状態で受けていただくほうが、お互いにとって良いと考えています。
もちろん、これはただ我慢してくださいという意味ではありません。意識のある状態でも使える調節手段が十分に多いので、そちらを先に使うという意味です。
「少し痛いです」とおっしゃっていただくほうが良いのです
痛みを我慢されていると、体の中でいくつものことが同時に起こります。筋肉が緊張し、呼吸が浅くなり、交感神経がさらに活性化して、結果として痛みへの感受性がいっそう上がります。我慢することが痛みを減らしてはくれない、ということです。
長い目で見ると、より重要な理由もあります。痛みの経験が重なると神経が敏感になり、次の施術の感じ方を強めうるのです。ですので最初の施術で痛みがうまく調節されることが、その後の回全体を左右することが多くあります。最初からうまく扱っておくほうが、結果的に得になります。
お伝えいただくときは、数字で表していただけると調整がより正確になります。NRS(0〜10)で今どのくらいか、そして耐えられる線がどこかを教えていただければ、その範囲の中で強さを合わせることができます。施術の途中で伺うのも、同じ理由からです。
施術前・中・後、取り出して使える手段の地図
痛みのコントロールは、一つの方法に頼る作業ではありません。麻酔クリームは真皮の神経終末に、クーリングとバイブレーションは脊髄の調節回路に、施術パラメータの調整は刺激の大きさそのものに作用します。作用する地点が違うので、重ねて使うほど隙間が減ります。段階ごとに整理すると、次のようになります。
施術前
- 予防的な鎮痛薬 — あらかじめ飲んでおくと痛みを減らすのに役立つと言われています。服用中のお薬と持病を考慮する必要があるため、診察で決めます。
- 睡眠 — 前日にしっかり眠っていただくだけでも、痛みへの感受性の条件が変わります。
- 十分な説明 — どんな感覚がどの順序で来るのか、いつ終わるのか、止めたいときはどうすればよいのかまで、あらかじめ擦り合わせておきます。
- 表面麻酔クリームの塗布 — 塗布時間と範囲、部位によって効果が変わります。方と施術によって時間の取り方を変えます。
- 順序と部位の配置 — 敏感な区域を施術のどの時点に置くかを、あらかじめ決めておきます。
施術中
- クーリング — 冷却パックやアイスローラー、クーリング装置は神経伝導を遅らせて痛みを減らし、施術後のむくみを鎮めるのにも役立ちます。単純に見えますが、よく見落とされる方法です。
- バイブレーション — 太い感覚神経(Aβ)を刺激して、脊髄で痛み信号が通る道筋を閉じる方式です。同じ分節に振動を与えたときに効果が最も高かったという研究結果があります。
- 部位ごとの神経ブロック — 痛みの強い区域に限定して適用する方法で、痛みへの不安が大きい場合に役立つこともあります。
- 笑気吸入鎮静 — 意識を保ったまま不安と痛みの感じ方を下げる方式で、必要な場合に検討します。
- 施術パラメータの調整 — 深さと出力、パス数、注入速度、針の選択、製剤の粘度まで、いずれも痛みに直接関わります。とくに深い層への熱の施術では、画面で層を確認しながら進めることが、痛みと安全の両面で重要です。
- 呼吸と会話 — 呼吸のリズムに合わせて進めたり、軽い会話で注意をそらしたりすることも、実際に役立ちます。
施術後
- 冷罨法 — 残った熱感とむくみを鎮めるのに役立ちます。
- 回復の過程のご案内 — いつまでどんな感覚が残るのが自然なのかをあらかじめ知っていただくと、不要な不安が減ります。
- 次回に向けた調整 — 今回どの部位がとくにつらかったのかを記録しておき、次の計画に反映します。
これらの手段は互いの代替ではなく、補い合うものです。どの組み合わせを使うかは、施術の種類と部位、そして痛みの閾値によって変わります。この中で最も基本となる表面麻酔クリームをどうすればより効率よく使えるのか、ほかの手段とどう重ねるのかは、麻酔クリームの効果を高める — マルチモーダル痛みコントロールで続けて取り上げます。
痛みの負担が軽い選択肢から始めることもできます
痛みが今いちばん大きな壁になっているのであれば、順序を変えるのも一つの方法です。目標とする変化にたどり着く経路が一つしかない場合は思ったより少なく、最初から痛みの負担が大きい施術で始めなくてよい場合が多くあります。
- シナジェット(針を使わない薬剤デリバリー) — 針の代わりに圧力で薬剤を皮膚に届ける方式です。針そのものへの恐怖が大きい場合に検討できる選択肢です。
- オレウェーブ(圧電方式の体外衝撃波) — 熱凝固点をつくる方式ではないため痛みの負担が軽めで、コラーゲンの刺激と鎮静の側に位置づけられます。
- 同じ系統の中での選択 — リジュラン系の中でも、PNにヒアルロン酸が加わって粘度が低いリジュランHB+は痛みの負担が軽めです。ただし構成と回数の計画が変わりますので、診察で一緒に決めます。
- 部位を分けて進める — 一度に全体を行わず、敏感な区域は次の回に回す方法も可能です。
ただ、目標は痛みの少ない施術だけを選んで受けることではありません。必要な施術を受けられる状態をつくることが目標です。痛みの負担が軽い施術から始めて施術という体験そのものに慣れ、その過程でどの方法がご自身に合うのかを確かめたうえで、必要な施術へ移る順序のほうが現実的な場合が多くあります。
付け加えますと、この記事に整理した内容は痛みの一般的な仕組みと傾向についての説明であり、すべての方に同じように当てはまるわけではありません。引用した研究結果にも、条件の異なる状況で得られたものが含まれています。痛みの閾値と皮膚の条件、持病や服用中のお薬、これまでの施術の経験によって実際の体験は変わりうるため、どの方法をどう組み合わせるかは診察で確認したうえで決めます。
診察から施術まで
皮膚科専門医が直接診察して原因の層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術をすすめる仕組みではありません。
回数・間隔・メンテナンスの時期・費用は、最初の施術の前に一緒に決めます。
よくあるご質問
- 痛みが強い部位は、外して施術してもらうことはできませんか?
- そのように進めたほうがよい場合もありますが、痛みの強い区域が効果の面で重要な区域と重なることも少なくありません。リフトアップの効果が出やすいフェイスラインなどがそうです。ですのでその部位を外すよりも、その部位に痛みのコントロール手段を足して進めるほうを先にご提案することが多いです。もちろん最終的には相談して決めますし、今回の回でどこまで行うかを分けて設定する方法もあります。
- 以前とても痛かった記憶があって、また受けるのが怖いです。
- 痛みの経験が重なると次回の感じ方が強まりうることは、実際に知られています。ですので再開されるときは、以前どこがどのようにつらかったのかを先に伺い、その部位とその段階に手段を集中させる形で計画を組みます。痛みの負担が軽い施術から始める、部位を分けて進めるといった方法もあります。一度楽に終わる経験ができると、次の回がずっと進めやすくなることが多いです。
- 針そのものが怖くて、注射の施術はとても受けられません。
- 針への恐怖が大きい場合は、針を使わないシナジェットのように、圧力で薬剤を皮膚に届ける方法を選択肢として検討できます。痛みの負担が軽めのオレウェーブのような施術から始めて、施術という体験そのものに慣れていく順序も可能です。どの方法が合うかは、目標とする変化と皮膚の状態によって変わりますので、診察で一緒に決めていきます。
- 高周波リフトは痛みを我慢したほうが効果が出ると聞きましたが、本当ですか?
- 我慢するという言い方は正確ではありませんが、高周波系で痛みが一つの指標の役割を果たしているのは確かです。組織に伝わる熱の程度を感覚で確かめながら出力を調節するため、感覚を完全になくしてしまうとかえって調整が難しくなります。ですので高周波では、痛みを強く遮断するよりも、耐えられる範囲の中でやり取りしながら強さを合わせていく形で進めます。耐えがたい水準であれば、それも調整が必要だという合図ですので、遠慮なくお伝えください。
- 施術前に痛み止めを飲んでおいてもよいですか?
- 予防的に鎮痛薬をあらかじめ飲んでおくと、痛みを減らすのに役立つと言われています。ただ、服用中のお薬や持病によっては避けたほうがよい薬剤があり、施術の種類によっては出血や内出血に影響しうる成分もあります。ご自身の判断で飲まれるよりも、どのお薬をいつ飲むかを診察で確認して決めることをおすすめします。
- 前日にほとんど眠れませんでした。施術は延期したほうがよいでしょうか?
- 睡眠が不足すると痛みへの感受性がはっきり上がると報告されていますので、可能であれば前日にしっかり眠っていただくほうが有利です。ただ、一日眠れなかったから必ず延期しなければならないわけではなく、事前に教えていただければ、麻酔の時間を長めに取る、クーリングを強めるといった調整ができます。痛みの負担が大きい施術を予定していて体調がかなり落ちている場合は、日程をずらす選択肢も一緒に検討します。
- 顔の中で特に敏感な部位はありますか?
- あります。顔の感覚を担う三叉神経はV1・V2・V3の三つに分かれますが、神経線維の密度は下にいくほど高くなる傾向が報告されています。そのため、フェイスラインや顎の下、口の周りで強く感じる方が多くなります。この地図が役に立つのは、そこが痛いという事実そのものではなく、その区域に入る前に麻酔の時間を長めに取ったり、クーリングとバイブレーションを一緒に準備したりできる点にあります。
- 施術中に痛いと言うのは失礼になりませんか?
- むしろ言っていただいたほうがずっと助かります。痛みは体が送ってくる情報ですので、ここだけ特に鋭い、熱が長く残る、といったお話が深さと出力を調整する根拠になります。施術の途中で今どのくらいかを伺うのもそのためで、NRS(0〜10)の数字で表していただけると調整はさらに正確になります。我慢されていると、こちらには知る手立てがありません。
- 静脈麻酔(眠った状態)で受けたほうが、ずっと楽ではないでしょうか?
- エイブルでは鎮静・睡眠麻酔を基本には置いていません。皮膚科の施術は鏡で確認しながら、あるいはリアルタイムの反応を見ながら進める必要がある場面が多く、強すぎる熱や想定外の感覚をその場で教えていただけることが安全に直結するためです。代わりに、意識のある状態で使える調節手段を重ねていく方法を先に取ります。我慢してくださいという意味ではなく、痛みを減らしながら、やり取りができる状態を一緒につくるという意味です。
- 麻酔クリームを塗れば痛くないのでしょうか?
- 麻酔クリームは最も基本になる手段ですが、それだけですべての痛みがなくなるわけではありません。皮膚の表面に塗る薬なので真皮の深い部分まで浸透する程度には限りがあり、塗布時間と範囲、部位によって効果も変わります。ですので、クーリングやバイブレーションのように作用する場所が異なる方法を併用する形を取ります。麻酔クリームの吸収を高める方法や重ねて使う組み立ては、続く2本目の記事で改めて取り上げます。
- 自分は人より痛みに弱い気がします。おかしいのでしょうか?
- まったくおかしくありません。痛みの閾値には個人差が大きく、皮膚の厚みと密度、部位の神経分布、その日の体調、これまでの経験まで、いくつもの要因が重なって働きます。皮下注射の研究でも、痛みに影響する要因として、針や薬液の特性、注射の手技と並んで患者さん側の要因が挙げられています。痛みに敏感だというお話は、我慢が足りないという意味ではなく、痛みの計画をより細かく立てる必要があるという情報として受け取っていただければと思います。
- 皮膚科の施術は、正直なところかなり痛いのでしょうか?
- 施術ごとに痛みの性質が違い、感じ方の個人差も大きいため、ひとことでお答えするのは難しいところです。ただ、はっきりしていることがあります。痛みは決まった値ではない、ということです。同じ施術でも、麻酔の方法、クーリングやバイブレーションを併用するかどうか、部位ごとの深さと出力の調整、施術前の説明やその日の体調によって、感じ方はかなり変わります。ですので診察では、痛いか痛くないかではなく、どんな感覚がどのくらい来るのか、そのうち何を減らせるのかを先に決めていきます。