「レーザーを頻繁に受けると、後で皮膚が薄くなるらしい」——これは、しみや毛穴のご相談で最もよく出る質問のひとつです。この話が心配で必要な治療を何年も先延ばしにして来られる方もいれば、逆にすでに何度も受けた後で不安になって来られる方もいます。先に結論を申し上げると、皮膚科で使うレーザーのほとんどは、研究では真皮のコラーゲンと皮膚の厚みが増える方向で報告されてきました。ただしそれは「だから頻繁に受けてもよい」という意味ではありません。どこまでが根拠で、どこからが過剰なのかを一緒に整理していきます。
3行まとめ
- 「レーザーを受けると皮膚が薄くなる」という通説は、研究の根拠とよく合いません。CO2フラクショナル、ナノ秒・ピコ秒の色素レーザー、ロングパルス1064nm、パルス色素レーザーのいずれも、施術後に真皮のコラーゲンと皮膚の厚みが増える方向で報告されてきました。
- 実際に皮膚を薄くするのはレーザーではなく、加齢・光老化・ステロイド外用薬の長期使用・閉経後のホルモンの変化・急激な体重減少と栄養不足です。
- それでも「薄くなった気がする」という感覚は、実際の経験です。多くの場合それは厚みではなく、バリア機能の低下、赤み、色素が減ることで生まれる透明感から来ています。そして回復期間を空けない繰り返しの施術は、まさにその感覚をつくる方向に働きます。
「皮膚が薄くなる」とは、実際に何を指すのでしょうか
この言葉を、漠然と悪い状態としてだけ理解している方が多くいらっしゃいます。間違った印象ではありませんが、正確には表皮と真皮層を合わせた全体の厚みが減った状態を指します。そしてその結果として現れる変化は、かなり具体的です。
- バリア機能の低下 — 水分を保ちにくくなって経表皮水分蒸散量が増え、乾燥しやすくなり、外からの刺激にも敏感に反応するようになります。
- ハリの低下としわ — コラーゲン線維束の密度が減ることが、しわの増加に直接つながります。
- 内出血しやすい状態 — 血管を包んで支える組織が薄くなり、小さな衝撃でも内出血が残りやすくなります。
- 傷の治りの遅れ — 同じ刺激を受けても、治るまでに時間がかかります。
- 血管拡張 — 広がった血管が透けて見えやすい状態になります。
まとめると、皮膚が薄くなるということは守る力と再生する力が一緒に落ちるという意味です。単に顔が透明に見えるとか、血色が透けやすいという印象とは別の話です。
厚みはひとかたまりではありません
皮膚は表皮と真皮が層になって重なっていて、この二つの層は別々の時間軸で動いています。表皮はもともと絶えず新しくつくられ、上から剥がれ落ちていく層です。一方で真皮はコラーゲンと弾性線維が網目のように絡み合って皮膚の厚みの大部分を占めており、一度減った密度が自然に早く戻るわけではありません。
ですから、問題になる「薄くなる」はおおむね真皮側の話です。施術直後の数日間、表皮がざらついたり角質層が一時的に薄くなったりするのは、戻らない厚みの減少とは性質が異なります。この区別をしておくと、以下の内容がずっと明確になります。
そこで確認すべき問いはひとつです
「レーザーが皮膚を薄くするのか」ではなく、「何が減ったのか」が正確な問いです。減ったものが真皮のコラーゲン密度なのか、回復途中の角質層なのか、それとも覆っていた色素にすぎないのかによって、対応はまったく変わります。
実際に皮膚を薄くするもの
皮膚の厚みが減る状況は、すでに比較的よく知られています。一覧を見ると、そこにレーザーが入っていないことにまず気づきます。
加齢 — 10年ごとに平均約6.4%
複数の論文で、成人期以降は10年間で平均約6.4%ずつ皮膚の厚みが減ると報告されており、この変化はコラーゲン合成の低下と関連していると考えられています。
もう少し詳しく見ると、表皮の厚みと真皮の厚みは20〜30代までは増えていき、その後は減少に転じる経過をたどります。とくに40〜60代から減少がはっきりしてきます。コラーゲンの含有量も同じように30代から減り始めます。コラーゲンを補ったり、刺激して増やそうとする施術がいくつもの系統に分かれて発展してきた背景でもあります。
男女差も報告されています。男性の皮膚が女性より厚いことは比較的知られていますが、厚みが減っていく速さもまた男性のほうが速いのです。調査された資料では、男性が10年ごとに約7.2%、女性が約5.7%減少するという結果でした。出発点が厚いからといって、お手入れを後回しにする理由にはならないわけです。
光老化 — 過ぎた時間より、浴びた日差し
年齢とともに生じる変化とは別に、日光を浴びることで生じる光老化も皮膚の厚みの減少に影響します。欧米人では、光老化が皮膚の厚みの減少をより直接的に引き起こすという報告があります。
この点が実際のご相談で重要になる理由があります。厚みが心配でレーザーを先延ばしにしている間にも、紫外線を浴びる量は毎日積み重なっていくからです。順番を考えれば、紫外線対策のほうがはるかに前にある要因です。
ステロイド外用薬 — 最も見落とされやすい実際の原因
ステロイド外用薬の長期使用は表皮と真皮の萎縮を起こし、ハリを低下させ、内出血しやすい環境をつくります。仕組みも比較的はっきりしています。コラーゲンの合成とエラスチンの産生を妨げ、線維芽細胞の働きを抑えるためです。
皮膚炎の塗り薬を長く使い続けないようにお伝えする理由がここにあります。かゆみが治まるので塗り続け、症状がまた出てくるとまた塗る——そうして何か月、何年と経ってしまうことは珍しくありません。診察で「皮膚が薄くなった」というお話をうかがったとき、レーザーの履歴より先に確認する項目が、まさにこの塗り薬の使用期間です。
ホルモンと体重 — からだ全体の変化が皮膚に残ります
- 閉経後のエストロゲンの減少 — 皮膚の厚みとコラーゲン量を著しく減らすことが知られており、年間約1.13%ずつ減少すると報告されています。
- 栄養不足 — 皮膚を薄くします。つくる材料が足りなければ、維持も難しくなります。
- 急激な体重減少 — BMIが減ると皮膚の厚みも一緒に減ると報告されています。
減量の時期と施術の時期が重なると原因をレーザーに求めやすいのですが、この二つは互いに別の要因です。まとめると、30代以降の方、日光を浴びる量が多い方、男性、閉経後の女性、急激なダイエット中の方は、皮膚の厚みの減少に相対的に注意が必要な条件にあたります。
ところで、なぜこの一覧にレーザーが入り込んだのでしょうか
ここまで見てきた原因には共通点があります。どれもゆっくりと、気づかないうちに進むという点です。加齢もホルモンの変化も塗り薬の使用も、ある日突然始まるものではありません。ですから、ある時点で皮膚が変わったと感じると、人はその頃にあった最も目立つ出来事を原因として指し示すことになります。
レーザーは日付の残る出来事です。いつ受けたかがはっきりしていて、受けた直後の数日は実際に皮膚がいつもと違って見えます。一方、ここ数年の紫外線や長く塗ってきた薬には日付がありません。記憶に残るほうが原因として名指しされるのは自然なことですが、どれだけ寄与したかとは別の話です。通説が長く生き残る理由もここにあります。
論文はレーザーについて実際に何を示しているのか
レーザーやエネルギーベースの機器が皮膚を薄くするという話は、臨床研究や組織学的な研究の根拠に照らすと、裏づけを見つけにくい通説に近いものです。むしろ多くの機器は、皮膚の中のコラーゲン産生、真皮の厚み、ハリの増加と関連づけて報告されてきました。種類ごとに分けて見ていきます。
| レーザーの種類 | 研究で確認された方向 | 確認方法 |
|---|---|---|
| CO2フラクショナル | 皮膚の厚みの増加 | 超音波測定+生検 |
| Qスイッチ ナノ秒 1064nm Nd:YAG | 真皮の厚みの増加(アブレイティブなレーザーよりは小さい幅) | 生検 |
| ピコ秒レーザー(トーニング・MLA) | コラーゲンの再生、施術後28日まで真皮コラーゲンの増加 | 臨床・組織学的評価 |
| ロングパルス 1064nm Nd:YAG | コラーゲンの増加 | 生検 |
| パルス色素レーザー(PDL) | 真皮コラーゲン産生の誘導、一時的な厚みの減少の後に回復 | 超音波画像 |
CO2フラクショナル — 最も「削っている」ように見えるレーザー
名前からして表面を扱う施術なので、最も誤解されやすい機器です。ところが結果は反対の方向でした。フラクショナルの施術前後に超音波を用いて皮膚の厚みを測定した研究で厚みの増加が確認され、生検で行った研究でも皮膚の厚みの増加が確認されています。
つまりCO2フラクショナルは、皮膚を薄くする施術というより、真皮を厚くする方向に近い施術です。エイブル皮膚科では、毛穴・傷あと・肌のキメを扱うときにCO2フラクショナルを、ほくろやシミのように病変を一点ずつ取り除くときにCO2レーザーを使います。
ナノ秒 Qスイッチ 1064nm Nd:YAG
レーザートーニングに最も広く使われてきた系統です。コラーゲンを改善する方法が今ほど多くなかった時期に、しわの改善効果をめぐって研究が行われ、施術前後で3か月の間隔を置いて生検で評価したところ真皮の厚みが増加したという報告があります。ただしCO2フラクショナルのように表面も併せて扱うアブレイティブなレーザーに比べると、その幅は小さいと整理されています。
Goldberg DJ, Silapunt S. Histologic evaluation of a Q-switched Nd:YAG laser in the nonablative treatment of wrinkles. Dermatol Surg. 2001 Aug;27(8):744-6.
エイブル皮膚科では、この系統としてスペクトラを運用しています。ナノ秒とピコ秒の違い、そしてトーニングという方式そのものを選ぶ基準は別のコラムで扱っていますので、ここでは厚みに関する部分だけを取り上げます。
ピコ秒レーザー
ピコ秒レーザーはトーニング方式とフラクショナル方式(MLA)に分かれます。トーニング方式でもコラーゲンが再生されるという報告があり、皮膚が厚くなる方向が確認されています。また毛穴や傷あとを扱うときに使うピコフラクショナル方式では、施術後28日まで真皮のコラーゲンが増加することが確認されています。
Han HS, Hong JK, Park SJ, Park BC, Park KY. A Randomized, Prospective, Split-Face Pilot Study to Evaluate the Safety and Efficacy of 532-nm and 1,064-nm Picosecond-Domain Neodymium:Yttrium-Aluminum-Garnet Lasers Using a Diffractive Optical Element for Non-Ablative Skin Rejuvenation: Clinical and Histological Evaluation. Ann Dermatol. 2023 Feb;35(1):23-31.
肝斑や傷あとを治療しながら、同時にコラーゲンを増やす方向に働くとご理解いただければと思います。エイブル皮膚科では、ピコプラスでトーニングとフラクショナルの両方を運用しています。
ロングパルス 1064nm Nd:YAG
色素と赤みの両方に使われる系統で、この波長を低い出力で繰り返し照射する方式をジェネシスと呼ぶことが多いです。この名前自体がコラーゲン産生(collagenesis)から来ています。実際にこの系統でも皮膚のコラーゲンが増加したという報告があります。
エイブル皮膚科では、この波長をゴールドPTTとジェネシストーニングに使います。真皮層の環境改善も併せて必要な場合に選ぶ方式です。
パルス色素レーザー(PDL) — ここに重要な手がかりがあります
血管レーザーとして知られるVビームがこの系統です。2000年代初めにPDLが真皮層のコラーゲン産生を促したという研究がいくつも行われ、超音波画像でコラーゲンの増加を確認した研究もあります。
ただし、ここに目を留めておきたい箇所があります。一部の研究では、血管レーザーの施術後に皮膚の厚みが一時的に薄くなり、その後もとに戻る経過が報告されました。最終的な結果として薄くなるという結論は出ていませんが、途中にそうした区間が存在するという意味です。後で扱う「薄くなった気がする」という実感と、ちょうど重なる地点です。
超音波・高周波など、ほかのエネルギーベース機器
レーザーではないエネルギーベースの機器の多くは、そもそもコラーゲンの再生とエイジングケアを目的に設計されています。複数の研究で、コラーゲン密度の有意な増加、筋膜層(SMAS層)までの構造的な厚みの増加、長期にわたるコラーゲン合成の持続が報告されています。こちらは薄くする施術ではなく、厚くする方向の施術に分類されます。
表皮と真皮では変化の方向が異なります
研究の結果が一貫して一つの方向を示しているのに通説が消えないのは、レーザーが皮膚に当たる場面と、その後に起きることが、互いに違って見えるからです。
アブレイティブとノンアブレイティブ — 表皮を扱うか、表皮を残すか
- アブレイティブ(剥離型) — CO2フラクショナルとCO2レーザーがここにあたります。表皮と上層の真皮にごく細い柱状の損傷をつくり、その間に残しておいた正常な組織に回復を導かせます。目に見える場面だけを見れば削り取る施術ですが、その部分を埋めていく過程で新しいコラーゲンがつくられます。
- ノンアブレイティブ(非剥離型) — 色素・血管レーザーのほとんどがここに属します。表皮を保ったまま表皮の上層だけを微細に刺激するか、表皮を通過して真皮に熱を届けます。表面を取り除く方式ではないので、「削って薄くする」という説明自体が成り立ちません。
どちらの方式も、最終的に向かう先は同じです。真皮の環境を改善し、コラーゲンを増やす方向です。ただし、そこへ至る経路と回復に必要な時間が異なります。
表皮は減るのではなく入れ替わります
表皮は下で新しい細胞が絶えずつくられ、上から剥がれ落ちていく、もともと循環する層です。施術直後の数日間、角質層が薄くざらついて感じられるのは、この循環が一度に前倒しされたためであって、そのまま固定する減少ではありません。
大切なのはその次です。回復期間が十分であれば、表皮はもとの構造に戻ります。反対に、回復が終わる前に同じ部位へまた刺激が入ると、その層は未完成の状態にとどまり続けることになります。この記事で最も重要な分かれ目がここです。問題はレーザーそのものではなく、レーザーとレーザーの間の時間に生じます。
真皮は刺激に対して、つくる方向で反応します
真皮に微細な損傷や熱の刺激が届くと線維芽細胞が活性化し、創傷治癒の反応にそって新しいコラーゲンがつくられます。先ほど見てきた研究が示したのは、まさにこの過程の結果です。
ただしこの反応は、刺激を与えた回数に比例して限りなく大きくなるわけではありません。真皮リモデリングは刺激そのものではなく、刺激の後の回復期間のあいだに進むからです。回復する時間を与えないまま刺激だけを積み重ねると、積み上がるのはコラーゲンではなく炎症に近いものになります。
それでは、なぜ「薄くなった気がする」と感じるのでしょうか
この実感は軽く扱ってよいものではありません。実際に鏡の前で何かが違って見えるから出てくる言葉であり、その観察自体はおおむね正確です。ただ、観察されたものが厚みではない場合が多いのです。
① バリア機能の低下 — 薄くなった感覚の最も多い正体
ヒリヒリして、突っ張って、化粧がのらず、小さな刺激でもすぐ赤くなる状態。この感覚のまとまりは、日常の言葉ではほぼ例外なく「皮膚が薄くなった」と翻訳されます。しかしこれは角質層とバリア機能の問題であって、真皮の厚みの問題ではありません。
バリアは回復が可能な層です。刺激を減らし、回復する時間を確保すれば、突っ張りやヒリつきも一緒に軽くなっていく傾向があります。反対に、回復期間を空けずに施術を続けたり、施術後のケアが強すぎた場合には、この状態が長引きます。
② 血管がより透けて見える
皮膚が実際に薄くなると血管が透けて見えます。そのため人は逆方向に推論します。血管がよく見えれば薄くなったのだ、と結論づけてしまうのです。
ところが血管を目立たせる要因は、厚み以外にもいくつもあります。施術後の一時的な血管拡張、炎症が過ぎた跡に残る紅斑、回復途中の表皮の状態は、いずれも厚みの変化なしに赤みをつくります。先ほどのPDLの研究で一時的に厚みが減ってから回復する区間が観察されたという点も、ここにつながります。回復期間の一場面を最終的な状態と取り違えやすい、という意味です。
③ 色素が減ることで生まれる透明感
色素治療がうまく進むと、トーンが明るくなり均一になります。そうして、それまで皮膚を覆っていた薄い影が晴れ、その下の血色やキメが以前よりはっきりと見えるようになります。多くの方がこの変化を「皮膚が薄く見える」「透明になった」と表現されます。
このとき減ったのは厚みではなく、覆っていた色素です。治療が意図したとおりに進んだ結果である場合がほとんどです。ただし、治療すべき病変がすでに整理された後も同じ施術を続けるのはまったく別の話で、次の章で扱います。
④ 回復期間と最終的な結果の時間差
真皮リモデリングは数か月かけて進みます。一方、施術直後の数週間は皮膚が最も敏感で赤い期間です。この時期の印象が固まってしまうと、「レーザーが皮膚をだめにした」という結論につながりやすくなります。
ですから施術の前に、回復期間がどのような見え方になるかを事前にお伝えするようにしています。何を見ることになるかを知っていれば同じ場面も違って読めますし、不必要に次の施術を急いだり中断したりする判断を減らすことができます。
薄くなったものと、薄く見えるものを見分ける基準
診察ではおおむね次の順序で確認します。ご自宅でもどちら寄りかを見当づけていただける項目です。
- いつからか — 特定の施術の直後から始まった変化なら回復期間である可能性が高く、数年かけてゆっくり進んだ変化なら、前の章で整理した原因から先に見ていきます。
- 内出血しやすいか — 実際に厚みが減った状態では、小さな衝撃でも内出血が残る変化が一緒に現れる傾向があります。赤くて敏感なだけで内出血はふだんと変わらないなら、バリア側である可能性が高いといえます。
- 傷の治る速さ — 厚みと再生する力はおおむね一緒に動きます。小さな傷が以前と同じくらいの速さで治るなら、再生する力そのものが落ちた状態とは考えにくいでしょう。
- どの部位か — 施術した部位に限られた変化なら回復の過程である可能性が高く、施術していない部位やからだまで一緒に変わっているなら、全身的な原因を見ます。
- 時間が経てば戻るか — 刺激を減らして数週間様子を見たときに回復する変化なら、バリアと赤み側です。真皮の厚みは、そんなに短い時間で行き来しません。
この区別が重要なのは、二つの状況で対応が異なるからです。バリアと赤みの問題であれば回復する時間と刺激を減らすケアが必要ですし、実際に厚みが減っているのであれば、原因になっている要因から整理する必要があります。いずれにしても判断の出発点は原因を確認することであって、施術を受けたかどうかだけで結論を出すことではありません。
では、繰り返しはどこから問題になるのでしょうか
ここまでの内容が「レーザーは安全だから何度受けてもよい」と読まれては困ります。研究が示したのは、適切な間隔と出力で施術したときに真皮のコラーゲンと皮膚の厚みが増える方向で報告された、ということです。条件のついた結論であり、その条件が結果をつくります。問題が生じる地点は、おおむね四つです。
① 回復期間がないとき
同じ部位への過度に頻繁な施術と、過剰な出力は避けなければなりません。クリニックでよく案内される間隔、たとえばトーニングやフラクショナルの3〜4週の間隔は、研究と臨床経験にもとづいて定められた範囲です。
診察で最もよく向き合うご要望が、「早く終わらせたいので間隔を詰めてほしい」というものです。ところが表皮とバリアが修復される前にまた刺激が入ると、積み重なるのは結果ではなく炎症です。そしてその状態が、前の章で整理した「薄くなった感覚」をそのままつくり出します。通説を現実にする最も早い道が、間隔を詰めることだというわけです。
また、3〜4週という数字もすべての人に同じ意味を持つわけではありません。回復の速さには個人差がありますので、まだ赤みや粉ふきが残っているなら、カレンダーより皮膚の状態を基準にするほうがよいでしょう。
② 適応がないまま繰り返すとき
治療すべき病変が残っていないのに、「維持」という名前で同じ施術を続けてしまう場合があります。このとき得られるものは少なく、皮膚が引き受ける負担はそのまま残ります。
目標のなくなった繰り返しは、回数を埋める作業になりがちです。とくに色素の施術は、経過がよいほど続けたくなる方向に流れますので、始めるときにやめる時期も一緒に決めておくことが重要です。どの程度まで整理されたら間隔を延ばすのか、終了するのかを事前に取り決めておけば、判断がずっと容易になります。
③ 出力を上げて速度を出そうとするとき
強くすれば早くよくなるだろうという期待は自然なものです。ただし出力を上げると回復に必要な時間も一緒に延び、炎症後色素沈着や長引く赤みの可能性も一緒に上がります。
とくに色素病変は、刺激が強いほどかえって反応が不安定になる場合があります。ですから強度を上げて回数を減らす方式より、適正な強度で計画した間隔を守る方式のほうが、経過は安定しやすいといえます。反応には個人差があります。
④ 皮膚の条件がすでに不利なとき
先に整理した実際の原因が進行中の状態であれば、話は変わってきます。
- ステロイド外用薬を長期間使ってきた場合 — すでに萎縮が進んだ皮膚は、同じ施術でも回復が遅く現れます。
- 急激な体重減少が進行中の場合 — からだ全体の回復する余力が落ちている時期です。
- 閉経前後 — ホルモンの変化で厚みとコラーゲンが一緒に減っていく区間です。
- バリアがひどく損なわれた状態 — 施術後の赤みや敏感さが、ふだんより長く続きます。
こうした場合に問題となるのは、レーザーが厚みを減らすからではなく回復力が落ちているからです。ですから順番を変えるほうがよいのです。バリアと赤みを先に落ち着かせ、レーザーを後に置けば、同じ施術でも回復が楽になり、結果もより素直についてきます。
まとめると、確認することは四つです
- 間隔 — カレンダーではなく、皮膚の回復の状態を基準に次回を決めます。
- 適応 — 今回の施術で何を扱うのかを言えることが必要です。
- 出力 — 速さのために強度を上げる選択になっていないか確認します。
- コンディション — 塗り薬の使用、体重の変化、ホルモンの状態、バリアの状態を先に見ます。
エイブル皮膚科がレーザーの計画を立てる方法
エイブル皮膚科で運用しているレーザーは、ピコプラス(ピコ秒Nd:YAG — トーニング・フラクショナル)、スペクトラ(ナノ秒QスイッチNd:YAG)、CO2フラクショナルとCO2レーザー、Vビーム(パルス色素595nm)、そしてロングパルス1064nmを使うゴールドPTTとジェネシストーニングです。これに加えて、難治性のニキビに使うPDT、鎮静とバリア回復に使うLDMを併せて運用しています。
機器を選ぶ前に決めることのほうが多くあります。
- 厚みが心配なら、レーザーの履歴から見ることはしません — ステロイド外用薬の使用期間、最近の体重の変化、紫外線を浴びる量、閉経前後かどうかを先に確認します。実際に厚みへ大きく働く要因が、そちらにあるからです。
- 回数より先に目標とする病変を決めます — どの病変をどこまで扱うかを決めておけば、いつやめるかも一緒に決まります。
- 間隔は皮膚の状態を見て調整します — 赤みや粉ふきが残っていれば次回を延ばします。同じ3〜4週でも、人によって意味が違います。
- バリアと赤みが不安定なら順番を変えます — 安定化が先で、レーザーは後です。急いで見える状況ほど、この順番が結果を分けます。
- 強度で速度を出すことはしません — 早く終わらせるために出力を上げるのではなく、計画した間隔を守るほうを選びます。
- やめる時期を事前にお伝えします — 目標とした病変が整理されたら、維持の周期を延ばすか終了します。
レーザーが皮膚を薄くするという心配のために、必要な治療を先延ばしにする必要はありません。同時に、安全だという言葉が無制限という意味でもありません。研究が示した結論には適切な間隔と出力という条件が一緒に入っており、その条件を守ることが実際の診療の大部分を占めます。効果と回復の速さには個人差があります。
診察から施術まで
皮膚科専門医が直接診察して原因の層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで、同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術をすすめる仕組みではありません。
回数・間隔・維持の時期・費用は、初回の施術前に一緒に決めます。
よくあるご質問
- 皮膚の厚みが心配なとき、何から確認すればよいでしょうか?
- レーザーの履歴より先に確認することがあります。ステロイド外用薬の使用期間、最近の急激な体重変化、ふだんの紫外線を浴びる量、閉経前後のホルモンの変化のほうが、皮膚の厚みにはるかに大きく働く要因として知られています。診察ではこの部分を一緒に確認したうえで、施術の可否と強さを決めます。
- レーザーを頻繁に受けるほど、コラーゲンは多くつくられますか?
- そうではありません。真皮リモデリングは刺激を与えた後、組織が回復していく間に進むので、回復が終わる前にまた刺激が入ると、積み重なるのは結果ではなく炎症に近いものになります。回数を増やすより、目標とした間隔を守るほうが、たいていは安定した経過につながります。
- 男性は皮膚が厚いので、あまり心配しなくてよいですか?
- 男性の皮膚が女性より厚いのは事実ですが、厚みが減っていく速さは男性のほうが速いと報告されています。10年ごとに男性は約7.2%、女性は約5.7%減少するという調査結果があります。出発点が厚いからといって、紫外線対策やお手入れを後回しにする理由にはなりません。
- 血管レーザーを受けた後、皮膚が薄くなった感じがしたのですが。
- 一部の研究では、血管レーザーの後に皮膚の厚みが一時的に薄くなり、その後もとに戻る経過が報告されています。同じ系統の研究では、真皮のコラーゲン産生が促され、超音波画像でコラーゲンの増加が確認されたものもあります。回復期間中の一時的な変化と最終的な状態を分けて見ていただくと、理解しやすくなります。
- ダイエット中で肌が薄く見えます。レーザーのせいでしょうか?
- 体重が急激に減ると皮膚の厚みも一緒に減ると報告されていますし、栄養不足も皮膚を薄くします。減量の時期と施術の時期が重なると原因をレーザーに求めやすいのですが、この二つは別の要因です。体重の変化が大きい時期には、施術の計画もそれに合わせて調整するほうがよいでしょう。
- レーザーの間隔はどのくらい空けるのがよいでしょうか?
- トーニングやフラクショナルでよく案内される3〜4週の間隔は、研究と臨床経験にもとづいた範囲です。ただし同じ3〜4週でも回復の速さは人によって違うので、赤みや粉ふきが残っているなら間隔を延ばすほうがよいでしょう。早く終わらせたくて間隔を詰めたいというご要望が最も多いのですが、結果として回復が遅れることが少なくありません。
- ステロイド外用薬を長く使っていましたが、レーザーを受けてもよいですか?
- ステロイド外用薬の長期使用は、表皮と真皮の萎縮を起こし、ハリを低下させ、内出血しやすくすることが知られています。コラーゲンの合成とエラスチンの産生を妨げ、線維芽細胞の働きを抑えるためです。この場合はレーザーが問題というより回復力が落ちている状態ですので、使用歴をまず確認したうえで、施術の強さと間隔を調整します。
- もともと皮膚が薄いほうですが、レーザーを受けても大丈夫でしょうか?
- 皮膚が薄いこと自体は、施術を受けられない理由にはなりません。ただし同じ出力でも赤みや刺激感が長引くことがあるため、出力と間隔は控えめに設定します。バリア機能が不安定な状態であれば、先に整えてからレーザーを後に置く順番のほうが、結果にも回復にも有利です。
- レーザーの後にヒリヒリして突っ張るのですが、皮膚が薄くなったのでしょうか?
- その感覚はほとんどの場合、角質層とバリア機能の問題であって、真皮の厚みの問題ではありません。バリアが回復すると、突っ張りやヒリつきも一緒に軽くなっていく傾向があります。回復期間が十分でなかったり、施術後のケアが強すぎた場合に出やすいので、次回を急ぐより先に回復を確認するほうがよいでしょう。
- レーザートーニングを長く続けたら、肌が薄く透けて見えるのですが。
- 色素が薄くなると、肌を覆っていた影が消えて、その下の血色やキメがより見えるようになります。このとき感じる透明感は、厚みが減ったからではなく色素が減ったことで生まれる印象であることが多いのです。ただし、治療すべき病変が整理された後も同じ施術を続けるのは別の問題ですので、やめる時期をあらかじめ決めておくことをおすすめします。
- フラクショナルレーザーは皮膚を削る施術ではないのでしょうか?
- アブレイティブ(剥離型)のフラクショナルは、表皮と上層の真皮にごく細い柱状の損傷をつくり、その間に残った正常な組織が回復を導く方式です。施術前後に超音波で厚みを測定した研究でも、生検(組織検査)を行った研究でも、皮膚の厚みが増えたと報告されています。削った分だけ薄くなるというより、その部分が埋まっていく過程で真皮が厚くなる方向に近いといえます。
- レーザーを長く受け続けると、結局は皮膚が薄くなりますか?
- これまでに出ている研究では、適切な間隔と出力で施術した場合、真皮のコラーゲンと皮膚の厚みが増える方向で報告されたものがほとんどでした。フラクショナル、ナノ秒・ピコ秒の色素レーザー、血管レーザーのいずれも同じです。ただしこの結論には「適切な間隔と出力で」という条件がついています。間隔を守らない繰り返しまで安全という意味ではありません。