瘢痕のご相談でいちばん多く出てくるのは「これはレーザーで削れば良いのですよね?」という言葉です。ところが、色が薄くなって白く残った傷あと、古い手術痕、硬くなってしまった熱傷瘢痕のように組織そのものが硬くなった瘢痕は、表面を削っても整いません。削ったところに新しい瘢痕ができることもあります。この記事は、そうした瘢痕に使われるCO2ピンホール法がどのような治療で、名前が似ていて混同されやすいフラクショナルレーザーと何が違うのかを整理したものです。
3行まとめ
- ピンホール法は瘢痕を削る治療ではなく、穴を開ける治療です。炭酸ガスレーザーで表皮から深い真皮まで届く微細な穴を作り、線維化した組織をいくつもの区画に断って、回復の過程でコラーゲンの束が並び直すように促します。
- フラクショナルCO2とは照射のしかたが違います。フラクショナルは決まった格子の中に一定の間隔でビームを出すため正常な皮膚にも一緒に当たりますが、ピンホールは線維化の強い場所だけを選んで一発ずつ照射します。そのぶんビームは深く入り、正常な皮膚にはあまり触れません。
- ダウンタイムと色素沈着の管理が前提です。穴を開ける治療ですので1週間ほどかさぶたが付く期間が必要で、色素沈着を起こしやすい肌質では炎症後色素沈着(PIH)が後から出てくることがあります。通常は1回で終わらせず、回数を分けて進めます。
ピンホール法とは何か
まず、瘢痕治療が何を目標にしているのかから整理しておくほうが良いと思います。瘢痕治療は瘢痕をなくす治療ではありません。瘢痕をできるだけ目立たなくし、肌のキメをより滑らかにすることが目標です。この前提が揺らぐと、どの治療をしても期待とずれた感触だけが残ります。
ピンホール(pinhole)法は名前のとおり、針の穴のように小さな穴を瘢痕にいくつも開ける方法です。炭酸ガスレーザーのビームを瘢痕組織に一発ずつ照射し、表皮から始まって深い真皮に至るまで、線維化した部分を断つ穴を作ります。瘢痕を広く焼くのではなく、硬くなった場所に点を打つように通り道を作る治療だとお考えいただくと近いです。
穴が開くと瘢痕に何が起こるのか
瘢痕組織の問題は、コラーゲンがないことではなくコラーゲンの並び方が乱れていることです。正常な皮膚のコラーゲンはさまざまな方向に絡み合っているので引っ張られてもしなやかに耐えますが、瘢痕組織のコラーゲンは一方向にぎっしりと押し固められています。そのため色が違って見え、光の反射が異なり、触ると硬く、周りの皮膚と一緒に動きません。
瘢痕が目立つ理由を色だけで考えていらっしゃる方が多いのですが、実際には光の反射のしかたの違いのほうが大きく働いていることがよくあります。コラーゲンが一方向に揃った表面は周りの皮膚と違う形で光を返すため、メイクで色を覆っても照明の下ではその場所が浮き出てしまいます。色はすでに周りの皮膚とほとんど同じになっているのに瘢痕が見え続ける、という方がこれに当たります。キメを扱わないとなかなか解決しないタイプです。
ピンホールで穴を開けると、3つのことが同時に起こります。1つ目は、穴に沿ってコラーゲンの束が並び直すことです。2つ目は、回復の過程で真皮の厚みが改善し、表面の陥凹や隆起がなだらかになることです。3つ目は、長くつながっていた線維化組織がいくつもの区画に分かれることで瘢痕にかかっていた張力が減ることです。3つ目は外からは見えませんが、実際には重要な部分です。長くつながった1本の帯が引っ張る力と、いくつにも分かれた組織がそれぞれ耐える力とでは、皮膚の表面にまったく違う形で現れます。
エネルギーとパルス幅が結果を分けます
ピンホール法で調整するのは大きく2つです。エネルギーは穴の深さを決め、パルス幅は穴の周りの組織に残る熱損傷の範囲を決めます。深さが足りないと硬くなった層まで届かず表面だけを触って終わり、深すぎると回復の過程で新しい瘢痕を作る危険が出てきます。同じ機器、同じ手技でも、この2つの値をどう設定したかによって結果が変わります。
ですからピンホール法は「この機器でこのモードを回す」という種類の治療ではありません。瘢痕一つひとつの硬さと厚みを見て、その場所に合う値を決める治療に近いものです。同じ瘢痕の中でも、中央部と辺縁で設定が変わることがよくあります。
なぜ削るのではなく穴を開けるのか
隆起した瘢痕を前にして最初に浮かぶのは「出っ張っているのだから削って平らにすれば良いのでは」という考えです。実際にレーザーで表面を蒸散させて高さを下げる方式(アブレーション)は古くから使われてきましたし、今も状況に応じて使います。ただ、この方式には構造的な限界があります。
削る方式の限界
- 高さは下がっても性質はそのままです — 隆起した瘢痕の本体は、表面より上に出ている部分ではなく、その下で硬くなっている線維化組織です。表面だけを削ると高さは減りますが下の線維化は残っているため、時間が経って再び盛り上がってくることがあります。
- 削った場所が新しい傷になります — 表面全体を広く蒸散させると、その面積のぶんだけ新しい傷が作られます。その傷がどのように治るのかは結局その方の回復の傾向に左右され、結果としてもとの瘢痕を別の形の瘢痕に置き換えることになる場合もあります。
- 色の薄い瘢痕には使いどころが狭いです — 色が白く、大きく出っ張ってもいないのに、表面の質感の違いのせいでやけに目立つ瘢痕があります。こうした瘢痕は削る高さ自体がほとんどありません。
穴を開ける方式が違う点
ピンホールは表面を広く取り去りません。穴と穴の間に傷んでいない組織が島のように残り、この残った組織が回復の出発点になります。ですから同じ炭酸ガスレーザーを使いながらも、表面全体を蒸散させる方式より回復が早く、新しい瘢痕を作る余地が相対的に少なくなります。
もう一つの利点は、狙った場所だけを正確に選べることです。瘢痕を触ってみると、全体が均一に硬いわけではありません。とくに硬く固まっている場所があり、すでに周りの皮膚と似た状態になっている場所もあります。ピンホールは断つ必要のある場所にだけ一発ずつ照射しますので、あえて触る必要のない部分はそのまま残せます。
瘢痕形成術とは性格が異なります
瘢痕を扱う方法には、瘢痕を切除して方向を変えて縫い直す外科的な方式(Z形成術など)もあります。この方式は瘢痕の方向と張力そのものを変えるアプローチですのでピンホールとは目的が異なり、必要な場面がはっきりとあります。ただ性質上、正常な皮膚に新しい切開線が加わり、回復期間も長くなります。エイブル皮膚科では瘢痕の切除手術は行っておらず、レーザーと注入治療を中心に計画します。どちらが良いという話ではなく、ダウンタイムと追加の切開を引き受ける状況かどうかによって選択が分かれるという意味です。
フラクショナルCO2と何が違うのか
「穴を開けてコラーゲンの再生を促す」という説明だけを並べると、フラクショナルCO2レーザーとピンホール法は同じ話に聞こえます。実際、大きな原理は重なります。違いはビームをどこに、どれくらいの大きさで、どれくらい深く出すかにあります。
フラクショナルCO2は、スキャナーが決まった形の中に一定の間隔でビームを自動で出します。広い面積を均一に扱うための設計で、安全性を優先するため、多くの機器ではビームがごく小さく、到達する深さも限られます。また格子の中に入る限り、瘢痕ではない正常な皮膚にもビームが一緒に通ります。広がったニキビ跡や毛穴のように面積の広いお悩みには、この方式がよく合います。
ピンホールは逆です。病変の中でも線維化が強く、断つほうが良い場所だけを選んで一発ずつ照射します。一発に乗るエネルギーが十分で深く入る代わりに、施術者が位置を一つひとつ決める必要があります。面積ではなく深さと正確さを取った方式です。
| 項目 | フラクショナルCO2 | CO2ピンホール法 |
|---|---|---|
| ビームの出し方 | 決まった格子の中に一定の間隔で自動照射 | 必要な場所だけを選んで一発ずつ手動で照射 |
| ビームの大きさと深さ | 小さく浅め — 安全性を優先した設計 | 十分なエネルギーで深く — 線維化した層まで到達 |
| 正常な皮膚 | 格子の中に入れば一緒に照射される | 照射点を外せば触れない |
| 向いている対象 | 広がった浅い〜中等度の瘢痕、毛穴、キメ | 狭い面積に硬く固まった瘢痕、隆起性・白色の瘢痕 |
| 施術時間 | 面積に比例 — 広い部位に効率的 | 照射点の数に比例 — 広い面積には非効率 |
一つ付け加えますと、フラクショナル機器のビームが小さく浅いのは、機器の限界というより設計上の選択です。広い面積を自動でなぞりながら安全である必要があるため、一発の威力を下げてあるのです。逆にピンホールは、施術者が位置を一つずつ決める代わりに一発の威力を上げます。ですからピンホールはフラクショナルより回復の負担が大きく、フラクショナルはピンホールより硬くなった層に届く力が弱いということになります。どちらが優れた技術というのではなく、何を手放して何を取ったかが違う設計です。
表だけを見るとピンホールのほうが強い治療のように見えますが、この2つは置き換える関係ではありません。瘢痕が顔全体に広がっているのにピンホールだけで扱おうとすれば時間も回復の負担も引き受けにくく、逆に数か所だけ硬く固まった瘢痕にフラクショナルだけを繰り返しても、肝心の硬くなった層には届きません。実際の診療では広い面積はフラクショナルで、硬くなった場所はピンホールでと分けて、一つの計画の中に一緒に入れることがもっとも多くなります。
どのような瘢痕にピンホールを使うのか
ピンホール法が居場所を見つける地点は、比較的はっきりしています。色が薄くなって白く残り、大きく出っ張ってはいないけれども、表面の質感の違いのせいでやけに目立つ瘢痕です。こうした瘢痕は、陥凹した瘢痕に使う治療でも、大きく隆起した瘢痕に使う治療でも扱いにくい区間にあります。
既存の治療のあいだに置かれた瘢痕
瘢痕治療は大きく2つの流れで発展してきました。陥凹した瘢痕にはサブシジョン、フラクショナルCO2、ニードルRF、フィラーのように、へこんだ場所を持ち上げたり癒着をはがしたりする治療を使います。逆に大きく出っ張った瘢痕には、病変の中に薬剤を注入したり表面を削って高さを下げる方式を使い、赤みの強い瘢痕であれば血管レーザーも併用します。
問題は、この2つの流れのあいだに置かれた瘢痕です。大きくへこんでも大きく盛り上がってもおらず色もすでに薄いのに、表面の質感だけは確かに違う瘢痕がそれに当たります。持ち上げるものも削るものも色を抜くものも見当たらず、既存の治療では手のつけどころがあいまいな状態になります。ピンホール法が使われるのは、まさにこの地点です。高さを変える代わりに硬くなった組織そのものをいくつもの区画に断ち、表面のキメを周りの皮膚のほうへ引き寄せる方向でアプローチします。
手術痕・縫合痕
手術や縫合でできた瘢痕は、抜糸の直後からケアを始めるほうが良いと知られています。この時期は瘢痕がまだ硬くなっていく途中ですので、フラクショナルCO2や再生注射のような方式で、瘢痕が落ち着いていく過程そのものに介入する余地があります。ですから手術を控えていらっしゃる方は、抜糸のあとすぐにご相談いただくほうが良いと思います。
ただ、すでに時間が経った瘢痕はたいてい、白く硬い線の形で残ります。色素の治療でも赤みの治療でも捉えられず、表面を削る高さもありません。この段階でピンホール法が選択肢になります。硬くなった線をいくつもの区画に断って張力を下げ、回復の過程で表面の質感を周りの皮膚のほうへ引き寄せる方向です。
熱傷瘢痕
熱傷瘢痕は難度が高いほうです。線維化が広い範囲に進むことで瘢痕の周辺の動きそのものが制限される場合があり、見た目の問題よりも引きつれや不快感といった症状のほうが大きな負担になることもあります。こうした瘢痕には、一つの治療でアプローチしません。
フラクショナルCO2で広い面積のキメを扱いながら、とくに硬く固まった場所にピンホールを加える組み合わせが役に立つという報告があります。そこに赤みが残っていればVビームを、色素も一緒にあれば色素レーザーを配置し、必要に応じてサブシジョン(Trifill)や再生注入治療を加えます。元に戻す治療というより、不快感と目立ち方を回数に分けて減らしていく治療として計画するのが現実的です。
ニキビの丘疹性瘢痕
ニキビのあった場所に少し盛り上がって残る形を丘疹性瘢痕と呼びます。名前のせいでケロイドや肥厚性瘢痕と一括りに考えていらっしゃる方がいますが、丘疹性瘢痕はこれらとは異なる形だと知られています。赤く硬く膨らむケロイドとは違い、肌色に近く、表面がなだらかに盛り上がっていることが多いです。
こうした形の瘢痕にピンホール法が役に立ったという報告がいくつもあります。実際の診療では、ピンホール単独よりほかのレーザーと併用することが多くなります。ニキビ跡は一つの顔の中に陥凹した瘢痕と盛り上がった瘢痕、赤い跡と茶色い跡が混ざっているのが普通ですので、形ごとに担当の治療を分けることが結果を左右します。ケロイドと肥厚性瘢痕の見分け方、陥凹した瘢痕のタイプ別のアプローチは、それぞれ別のコラムで扱っています。
過去の痕を整えたい方へ
腕や手首のようによく見える部位に、ずっと前にできた痕が残っていて気にかかるという方がいらっしゃいます。私たちは診察で、その痕がどのようにできたのかをお尋ねしません。確認するのは今の皮膚の状態、つまり色がどうか・表面が周りとどれくらい違うか・組織がどれくらい硬いか、それだけです。時間が経って色が薄くなり表面だけが周りと違う状態であればピンホール法が選択肢の一つになりますし、赤みが残っていればVビームを、色素も一緒にあれば色素レーザーを先に配置することもあります。一度でもとの皮膚に戻す治療ではありませんが、回数を分けて進めながら目立ちにくくすることを目標にします。ご相談だけでも構いません。ただ、今お気持ちがとてもつらい状態でいらっしゃるなら、皮膚の治療より先に専門的な支援を一緒に受けてみられることをおすすめいたします。
瘢痕以外の使い道
ピンホールは瘢痕にだけ使う手技ではありません。穴を開けて組織にアプローチするという原理そのものが、ほかの病変にも応用されます。
- 脂腺増生症 — 通常は炭酸ガスレーザーで隆起した部分を整え、内容物を押し出す方式で扱います。ピンホールで穴を開けたあと押し出すだけでも改善したという研究があり、状況に応じて2つの方式を併用することもあります。年齢とともにできる病変ですので、再発は多いほうです。
- 目の下の汗管腫 — 高周波を用いた治療が知られており、炭酸ガスレーザーで整える方式も使います。ピンホール法でアプローチした報告もあります。ただ、どの方式で行っても再発が多いほうだという点は、あらかじめお伝えしてから始めます。
- 拡張した血管 — 基本的にはVビームのような血管レーザーが先です。血管レーザーでは扱いにくい形のときに、ピンホール方式でアプローチすることがあります。
ピンホールが合いにくい部位もあります
ピンホール法で最初にお伝えしなければならない注意点は、部位によっては瘢痕がかえって悪くなることがあるという点です。これは副作用というより、手技の性格から出てくる限界に近いものです。
動きと張力の多い部位
話すとき、表情を作るときに引っ張られ続ける位置があります。代表的には人中の下がそうですし、関節の周りや、皮膚が常に緊張している部位も同じです。こうした場所の瘢痕は回復の過程で引っ張られ続けるため、穴を開けて治っていくあいだに瘢痕が広がったり、より目立つ方向に進んだりすることがあります。
ですからこうした部位では、条件を変えてアプローチします。深さを浅めに設定して回数を増やしたり、一度に広く行わず分けて進めたり、必要な場合はボトックスでその部位の筋肉の動きを減らした状態で行います。表情筋が瘢痕を引っ張り続ける状況を先に減らしてから始めるわけです。
深ければ良いというものではありません
「深く入るほど効果が良い」という説明は、半分は当たっていて半分は外れています。硬くなった層まで届いてこそ意味があるのは事実ですが、その地点を越えると、回復の過程で新しい瘢痕を作る方向に移ります。とくに皮膚の薄い部位、瘢痕の下の組織がすでに薄くなっている部位では、深さをどこで止めるかが結果を分けます。
一度にすべてを行おうとはしません
瘢痕全体を一度に細かく開けてしまいたくなりますが、穴の密度を上げるほど回復の負担と色素沈着の可能性も一緒に上がります。広い瘢痕であれば区域を分けて進めたり、密度を下げて回数を増やすほうが結果的に安全なことが多いです。瘢痕治療で焦って強度を上げた選択は、たいてい回復の段階で代償を払うことになります。
回復の過程と色素沈着 — 色素沈着を起こしやすい肌質での注意点
ピンホールは実際に皮膚に穴を開ける治療です。ですからほかのレーザー治療より、回復の過程についての説明がより重要になります。施術の直後には照射した場所ごとにごく小さな点状のかさぶたができ、たいてい1週間ほどのダウンタイムをみます。
施術自体は麻酔クリームや局所麻酔をして行い、照射する点の数によって所要時間が変わります。広い瘢痕を細かく扱う場合はそのぶん時間がかかり、狭い瘢痕が数か所であれば短く終わります。施術の直後には熱感やヒリつきを感じることがありますが、おおむね1日以内に落ち着くことが多く、感じ方には個人差があります。
ダウンタイム中に守っていただきたいこと
- 水が直接かからないようにします — かさぶたが付いているあいだは、施術部位に水が直接入らないようにするのが基本です。洗顔やシャワーの方法は、部位に応じて別途ご案内します。
- かさぶたを無理にはがしません — もっとも多い失敗です。かさぶたを早くはがすと回復しきっていない表面が露出し、色素が残りやすくなります。自然に落ちるまで待つのが、いちばん良いケアです。
- 乾燥させないようにします — 処方された軟膏と保湿で湿った環境を保つと、回復がスムーズです。
- 刺激を避けます — サウナ、岩盤浴、強い運動は、ダウンタイムのあいだは控えていただくほうが良いです。
炎症後色素沈着(PIH)は、あらかじめ知ってから始める必要があります
ピンホール法で正直にお伝えしなければならない部分です。穴を開けた場所に茶色みが後から出てくる炎症後色素沈着が起こることがあります。色素沈着を起こしやすい肌質ではメラニンの反応が活発なほうですので、同じ施術をしても色素が残る傾向が、色素反応の穏やかな肌質よりはっきりしていると知られています。これは施術が間違って起こる問題というより、肌質から来る反応に近いものです。
色素沈着はたいてい、施術後に数週間が経った時点で現れ、しばらく続いたあと徐々に薄くなっていく経過をたどる傾向があります。ただ、どれくらい濃く出てどれくらい長く続くかは個人差が大きく、ダウンタイムの管理と紫外線対策がどれだけ守られたかによって変わります。施術の前にこの過程を知って始めるのと、知らないまま茶色みに出会うのとでは、まったく違う経験になります。
色素を減らすために実際に行うこと
- 紫外線対策 — 施術後のケアの中心です。かさぶたが落ちたあとも最低数か月は日焼け止めを継続して使うほうが良く、可能であれば帽子や衣服で直接覆う方法も併用します。
- 時期の選択 — 紫外線の強い季節に広い面積を進めるより、予定が許すのであれば露出の少ない時期に回数を配置するほうが有利です。とくに腕や手の甲のように覆いにくい部位であれば、なおさらです。
- 密度の調整 — 先ほど申し上げたとおり、一度に細かく進めるほど色素の負担が大きくなります。密度を下げて回数を増やす選択が、色素の管理という面でも有利な場合があります。
- すでに出た色素の整理 — 色素が残った場合は、それ自体を扱う治療を別に配置します。エイブル皮膚科ではPicoPlusとSpectraを色素の軸として運用しており、色素が整理されるあいだはピンホールの次の回の間隔を調整します。
付け加えますと、色素が出てきた時点で焦って強い色素治療を重ねることはおすすめしません。回復中の皮膚に刺激が加わると、色素がより長く続くことがあります。今の色素がどの段階にあるのかを見て介入の時期を決めることが、順序としては先になります。
回数の組み立て — 1回で終わる治療ではありません
ピンホール法は単回の施術でも表面のキメが変わることがありますが、計画を立てるときには通常3回以上を前提にみます。硬くなった組織を一度にすべて断ってしまうことが目標ではなく、断って治って並び直す過程を何度も重ねて積み上げることが目標だからです。
間隔を決める基準
次の回の時期は、カレンダーではなく皮膚の状態が決めます。かさぶたがすべて落ちたか、赤みが落ち着いたか、色素が出てきていないかを見て間隔をとります。色素が残っている状態で次の回を進めると色素が重なって積み上がることがありますので、この場合は間隔を延ばし、色素のほうを先に整理します。
ピンホール単独より組み合わせのほうが良いです
実際の瘢痕は、一つの性質だけを持っていることがまれです。一つの瘢痕の中に陥凹した部分と隆起した部分が一緒にあり、赤みと茶色みが重なっていることもあります。ですからピンホールだけを繰り返すより、瘢痕の様相に応じて複数の治療を組み合わせるほうが結果が良い場合が多くなります。エイブル皮膚科で瘢痕の計画に一緒に配置する軸は、次のとおりです。
- フラクショナルCO2 — 広い面積のキメと表面の不整を均一に整えます。ピンホールともっともよく併用する軸です。
- サブシジョン(Trifill) — 瘢痕の底が下の組織にくっついて引き込まれている場合、その癒着を先にはがします。ピンホールが断つのは瘢痕の中の線維化で、サブシジョンが断つのは瘢痕の下の癒着バンドですので、扱う層が違います。
- ポテンツァ(ニードルRF) — 針を通して真皮に熱を伝える方式で、表面の損傷を相対的に抑えながら深い層を扱うときに配置します。
- Vビーム — 瘢痕に赤みが残っているときの軸です。赤い瘢痕は色を先に扱うと、全体的な目立ち方が大きく変わることがあります。
- PicoPlus・Spectra — 瘢痕に茶色い色素を伴っているときや、施術後に色素が残ったときに配置します。
- リジュラン ヒーラー(PN)・ジュベルック — レーザーが作り出した回復の過程の上に、再生のシグナルとボリュームを足す位置です。ダウンタイムの必要な治療と重ならないように、時期を分けて配置します。
- ボトックス — 先ほど申し上げたとおり、動きの多い部位で瘢痕にかかる張力を減らすために併用することがあります。
ここで重要なのは種類の多さではなく、順序と間隔です。ダウンタイムの必要な治療を続けて並べると皮膚が回復する時間がなく、逆に異なる軸をあまりに間隔をあけて配置すると、全体の期間だけが長くなります。最初の施術の前に全体の回数の地図を描いてから始める理由が、ここにあります。
期待値を先に合わせます
瘢痕治療で結果を左右する要素の一つは、始める前に期待値をどこに置いたかです。ピンホール法は古くから使われてきた手技であり、瘢痕をもとの皮膚に戻す治療ではありません。どれだけ目立ちにくくできるかが実際の目標であり、その幅は瘢痕の種類・部位・年数・肌の傾向によって変わり、個人差があります。診察で、今回の計画でどこまでを目標とするのか、どの部分は次の段階に回すのかを先に分けてお伝えするのも、そのためです。
エイブル皮膚科ではこのように進めます
ピンホールは機器の名前ではなく、施術方式の名前です。ただ、どの機器で行うかによって実現できる度合いが変わります。一発のビームが均一に出て、エネルギーとパルス幅を望む値に細かく設定できる炭酸ガスレーザーであるほど、目標とした深さに正確に届きながら、周囲の熱損傷は抑えられます。
エイブル皮膚科は瘢痕・毛穴の治療にU-Pulse CO2フラクショナルレーザーを、ほくろや皮膚病変の除去にN-Pulse 炭酸ガスレーザーを運用しています。ピンホール法はこのうち、ビームの品質とエネルギーの調整ができる炭酸ガスレーザーで行い、同じ場所で広い面積はフラクショナルで、硬くなった場所はピンホールで分けて扱えるように計画します。
診察で実際に確認すること
- 色 — 赤みが残っているか、茶色い色素も一緒にあるか、それともすでに白く薄くなっているかを見ます。色によって、先に当てる軸が変わります。
- 高さと表面 — 出っ張っているのか、へこんでいるのか、高さは同じくらいで質感だけが違うのかを区別します。3つ目が、ピンホールのもっともよく使われる区間です。
- 硬さ — 触ったときにどこが硬いか、周りの皮膚と一緒に動くかを確認します。ピンホールの照射点は、この触診で決まります。
- 張力 — 話したり表情を作ったりするときに、その瘢痕が引っ張られるかを見ます。引っ張られる場所であれば深さ・密度を調整したり、ボトックスの併用を検討します。
- 肌の傾向 — 以前の施術や傷のあとに色素が長く残った経験があるかをお尋ねします。色素が残りやすい肌であれば、最初から密度を下げて回数を増やす方向で設計します。
この5つを確認したうえで、機器とパラメータ、回数と間隔を決めます。機器を先に決めておいて瘢痕をそこに合わせる順序ではありません。瘢痕治療はまだ望むほど十分ではありませんが、扱える範囲は着実に広がってきました。今の瘢痕がどの区間にあるのかから、一緒に確認してみていただければと思います。
診察から施術まで
皮膚科専門医が直接診察して原因の層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで、同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術をおすすめする仕組みではありません。
回数・間隔・メンテナンスの時期・費用は、最初の施術の前に一緒に決めます。
よくあるご質問
- エイブル皮膚科ではどの機器で行いますか?
- エイブル皮膚科はU-Pulse CO2フラクショナルレーザーとN-Pulse 炭酸ガスレーザーを保有しており、ピンホール法はビームの品質とエネルギーの調整ができる炭酸ガスレーザーで行います。皮膚科専門医が直接診察して瘢痕の層を確認し、同じ専門医が施術まで続けて行います。
- ピンホールだけ受ければ良いですか、ほかの治療も一緒にすべきですか?
- 瘢痕が一つの性質だけを持っていることはまれです。陥凹と隆起、赤みと色素が一つの場所に混ざっていることが多く、ピンホール単独より組み合わせのほうが結果が良い傾向にあります。サブシジョン(Trifill)、ポテンツァ(ニードルRF)、フラクショナルCO2、Vビーム、PicoPlus、リジュラン ヒーラー(PN)などを、瘢痕の様相に合わせて分けて配置します。
- 熱傷瘢痕も良くなりますか?
- 熱傷瘢痕は線維化の範囲が広く、周囲の組織の動きまで制限される場合があり、難度が高いほうです。フラクショナルCO2とピンホール法を併用し、赤みにはVビームを、色素には色素レーザーを加えて、複数の軸を同時に当てていきます。元に戻すというより、不快感と目立ち方を段階的に減らしていく方向で計画します。
- ニキビのあとに少し盛り上がって残った瘢痕もできますか?
- ニキビのあった場所に少し盛り上がって残る形を丘疹性瘢痕と呼び、ケロイドや肥厚性瘢痕とは異なる形だと知られています。こうした瘢痕にピンホール法が役に立ったという報告がいくつもあります。ただ、赤みや色素が一緒にある場合は、その部分を別の治療に分けて扱うほうが結果が良いです。
- 顔のどこでもできますか?
- よく動き張力を多く受ける場所は注意が必要です。話したり表情を作ったりするときに引っ張られ続ける位置の瘢痕は、ピンホールのあとにかえって広がったり目立ったりする場合が報告されています。こうした部位では深さを浅めに設定したり、ボトックスで動きを減らしてから行うなど、条件を変えてアプローチします。
- 手術痕はいつから治療を始めるのが良いですか?
- 抜糸の直後からケアを始めるほうが良いと知られています。この時期はフラクショナルCO2や再生注射のような方式で、瘢痕が硬くなっていく過程そのものに介入することができます。ピンホール法はそれより後、瘢痕がすでに白く残り表面が周りと違ってきた段階で選択肢になります。
- 瘢痕ができてから時間が経っていますが、今から始めても遅くないでしょうか?
- ピンホール法は時間が経って色が薄くなり組織が硬くなった瘢痕に主に使われる方式ですので、古い瘢痕だからという理由だけで対象から外れることはありません。ただ、新しくできた瘢痕ほど使える治療の幅が広いのも事実です。今の瘢痕の色・高さ・硬さを見て、どの方式が合うかを決めていきます。
- 施術したあと、かえって色素が出ると聞きました。
- 炎症後色素沈着は、ピンホール法であらかじめお話ししてから始めるべき項目にあたります。色素沈着を起こしやすい肌質ではメラニンの反応が活発なほうですので、穴を開けた場所に茶色みが後から出てくることがあります。多くは時間とともに薄くなっていく傾向がありますが、紫外線対策と回復のケアがどれだけ守られたかによって期間が変わります。
- ダウンタイムはどれくらいで、そのあいだはどう過ごせば良いですか?
- 穴を開ける治療ですので小さなかさぶたができ、たいてい1週間ほどのダウンタイムをみます。その期間は施術部位に水が直接かからないようにし、かさぶたを無理にはがさないことが大切です。かさぶたを早くはがすと色素が残りやすくなりますので、自然に落ちるまでお待ちいただくほうが良いです。
- 1回受けるだけでも変わりますか?
- 1回の施術でも表面のキメが変わることはありますが、通常は3回以上を前提に計画を立てます。瘢痕は一度で元に戻す治療ではなく、回復と再構築を何度も重ねて積み上げる治療に近いからです。必要な回数は瘢痕の大きさ・深さ・硬さによって変わり、個人差があります。
- すでにフラクショナルCO2を受けていますが、ピンホールも必要でしょうか?
- 2つは置き換える関係ではなく、担う位置が違います。フラクショナルは広い面積のキメを均一に整えることに強く、ピンホールは線維化の強い数か所を深く断つことに強い方式です。瘢痕が広く広がっていて、特定の部位だけが硬いという場合には、2つを一つの計画の中に一緒に配置することが多くなります。
- ピンホール法は瘢痕をレーザーで削るのですか?
- むしろ反対に近いです。削る方式は表面を蒸散させて高さを下げる治療ですが、ピンホールは表面を残したまま、線維化が進んだ場所だけに深い穴を開ける治療です。硬くなった線維の束をいくつもの区画に断って張力を減らし、回復の過程でコラーゲンが並び直すように促すことが目的です。