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スキンブースターの注入方法 — 何を入れるかと同じくらい、どう届けるか

診察室でよくいただく質問があります。前回は機械注入がよいと言われて受けたのに、なぜ今回は手打ちなのですか。手打ちのほうがよいと聞きましたが、機械で受けると効果が落ちるのですか。ふくらみは出なくてもよいと聞きましたが本当ですか。これらの質問に、手のほうが丁寧です、あるいは機械のほうが痛くありません、とお答えするだけでは足りません。同じ製品でもどの深さに、どれだけ分けて、どれだけ均一に残すかによって、まったく違う施術になるからです。

3行まとめ

  • スキンブースターの結果は成分だけで決まりません。同じ製品でも深度・分布・残り方が変われば別の施術になり、注入方法がこの3つを直接決めます。
  • 手打ちと機械注入は優劣の関係ではなく、役割の違う道具です。一点を彫る方法と、面を均一に塗る方法とでは、得意なことがそれぞれ異なります。
  • 注入方法は製品の物性と目標とする深さが決めます。真皮を狙うPN・hADM系、微細な分割が安全装置になる粒子型の製剤、少し深い層に広く敷いてもよいHA系は、それぞれ別の道具を必要とします。

薬剤は横並びになり、残った変数は届け方です

リジュラン、ジュベルック、Re2O、CellREDM、GOURI、HILO WAVE、BELOTERO REVIVEまで、ここ数年でスキンブースター製品のスペック自体は大きな差がつかない水準まで上がってきました。そのため診療の現場で結果を分ける変数は、製品名ではなくその製品を肌のどこに、どのような形で残すかのほうへ移りつつあります。

手打ちがよいのか機械注入がよいのかとお尋ねいただいたとき、私たちはまずその質問を別の言葉に置き換えます。どのような変化を望まれるのか、その変化を出すには薬剤がどの層にどれだけ残っている必要があるのか。そこが決まってはじめて道具が決まるからです。実際に注入方法が関わるのは、次の3点に整理できます。

  • 深度(Depth) — 薬剤が目標とする層に入ったか。真皮の上層・中層・下層と、その下の皮下脂肪は、組織の密度も血管とリンパの流れも異なります。数mmの違いが、結果では小さくない差として現れます。
  • 分布(Distribution) — 必要なところに均一に、あるいは精密に広がったか。顔全体のキメや毛穴のように面が重要な目的と、瘢痕や局所のへこみのように点が重要な目的とでは、求められる分布が正反対になります。
  • 残存と損失(Retention/Loss) — 漏れず、固まらず、意図した場所に残ったか。外に流れ出る損失よりも、臨床的に重要なのは目標とする層を外した損失です。

この3つが整理されると、手か機械かは論争ではなく選択の問題になります。以下ではこの軸をひとつずつ解いていきます。

付け加えると、同じ名前の施術を受けたのにクリニックによって経験が違ったというお話も、多くはこの地点で分かれます。製品名と用量は領収書に残りますが、どの層に何回に分けて入れたかは記録に残りません。ですから同じ2ccを受けていても、一方は真皮のなかに細かく配置され、もう一方はより深い層に広く広がった、事実上別の施術だったということがあり得ます。カウンセリングで製品名の確認だけで終わらせず、どの層を目標にするのかまで一緒に決めている理由がここにあります。

ひとつ先にお伝えしておくと、この記事は手打ちと機械注入のどちらが優れているかを決めようとするものではありません。2つの方法は物理的に得意なことが異なり、製品の物性と目標とする深さがどちらを呼ぶかを決めます。結論が先にあるのではなく、目的が先にあって道具が後から決まる順序だとご理解ください。

深度 — 目標とする層に届いたか、そして2種類の損失

肌は薄く見えますが、層ごとに反応が違います。同じ製品でも真皮上層に入ったときと皮下脂肪に入ったときとでは、広がる速さも、血管やリンパを介して移動する経路も、組織にとどまる時間もすべて変わります。スキンブースターの多くが真皮を舞台に設計された製品であることを考えると、深度は付随的な変数ではなく、施術の前提に近いものです。

真皮はとどめ、皮下脂肪は流します

真皮は組織が緻密なため、薬剤を注入するとその場にとどめる性質があります。施術直後にふくらみが出るのもこのためで、薬剤がその場にとどまるあいだに細胞が反応する時間と空間が確保されます。一方で皮下脂肪層は真皮より組織が粗く、血管とリンパの流れも異なるため、真皮に貯留をつくったときとは違う分布と吸収のパターンを示すことがあります。

そのため真皮に残ってはじめて働く製品を深く敷きすぎると、薬剤は確かに体のなかに入ったのに、目標とする層での有効な曝露は減ってしまう状況が生じ得ます。

同じ深さでも部位によって違う層です

深度をmm単位で言うと精密に見えますが、実際には同じ数字が部位ごとに違う層を指します。目もとや口もとの周りは皮膚が薄く、少し余分に入るだけで真皮を通り越すことがあり、頬や額は比較的厚いため同じ深さでも真皮の中ほどにとどまることがあります。同じ方の顔のなかにもこの差があり、年齢と肌の状態によって真皮そのものの厚みも変わります。

ですから注入方法を選ぶときは、何mmで入れるかよりもこの部位でその深さがどの層にあたるのかを先に見ます。針の角度、皮膚をどれだけ引っ張って固定したか、注入の速度まで、すべてが実際に到達する層に影響します。機械を使っても手を使っても、この判断が抜けると、数字だけは正確で層はずれている施術になります。

外に漏れる損失と、内に漏れる損失

損失と聞くと、多くの方は針を抜くときに皮膚の外へ流れ出る液体を思い浮かべられます。もちろん注入圧が高かったり速度が速かったりすると起こり得ますし、目に見えるぶん気になります。ただしこの種の損失は施術前にある程度想定して量を設計するため、大きな変数にはなりにくいものです。

臨床的により気にするのは、目に見えない損失のほうです。真皮で働くべき薬剤を真皮に残せず、別の層へ送ってしまう場合で、見た目には何も漏れておらず痛みも少なかったため、うまくいった施術のように見えることもあります。結果が期待と違って出たときに原因を探しにくいのも、この損失が目に見えないからです。

ふくらみはマーケティングか、サインか

一時期はふくらみを上手につくるという話が多く、最近はふくらみは重要ではなく深く入れても違いはないという話が増えました。どちらの主張も半分ずつ正しいものです。ふくらみ自体が目的にはなり得ませんが、真皮のなかでの反応を期待する製品であれば、施術直後のふくらみは薬剤が目標とする層に入ったサインとして読むことができます。

逆にうるおいとツヤが目的であれば、ふくらみが出ずになめらかに広がるほうが狙いに合っています。手打ちを受けたのに直後の肌があまりになめらかであれば、痛みを避けようとして深く入った可能性を一度は一緒に考えてみる必要があります。実際に深い層は抵抗が少なく、薬剤が入りやすく痛みも少なくなります。楽に受けられたという感覚と、目標とする層に正確に入ったという事実とは、いつも同じ方向を向いているわけではありません。

手打ち — 一点を彫っていく方法

手打ちは、施術者が針先の抵抗を手で感じながら一針ずつ入れていく方法です。もっとも大きな利点は、状況に応じて判断を変えられる点にあります。

  • 深度の調節 — 同じ顔のなかでも目もとと口もとは薄く、頬は厚くなっています。手打ちは部位が変わるたびに入れる深さをその場で変えられます。
  • ポイントコントロール — ここは瘢痕だから少し多めに、そこは皮膚が薄いから固まってはいけない、といった局所の最適化ができます。
  • 一点あたりの量の調節 — 一針に入る量をごく細かく分けることもでき、必要であれば一か所に十分な量を入れて反応を大きくする選択もできます。

一方で限界も明確です。人の手で数百回を同じように繰り返すことは難しいため、顔全体を一定の密度で敷く必要があるときは機械よりばらつきが出やすくなります。一針ずつ刺すぶん施術時間は長くなり、限られた真皮の空間に多くの量が入れば痛みも大きくなります。機械注入に比べて内出血が出る場合も相対的に多い傾向があります。

痛みは深さの代償ではなく、管理する対象です

手打ちで痛みが増える理由は、単に多く刺すからではありません。緻密な真皮の空間に短い時間で一定量を押し込むと組織が伸びて圧力が生じ、この圧力そのものが痛みとして感じられます。ですから痛みを減らそうとして深さを変えれば目標とする層を外し、目標とする層を守れば痛みが残るという構造ができあがります。

この状況では、深さを譲るのではなく別の変数を調整するほうが目的を守るうえで有利です。麻酔の方法を調整する、一か所に入る量と速度を分ける、部位ごとに注入方法を変えるといった選択肢があります。痛みを減らすことと目標とする層を守ることは二者択一ではなく、それぞれ別に設計できる項目です。

そのため、手打ちの利点が実際に生きてくる状況は別にあります。一か所に十分な量を入れることに意味があり、そのように入れてもしこりや長く残るふくらみといった負担が大きくない製品のときです。少しずつ均一に入れるだけの計画であれば、あえて手で行う理由は小さくなります。この基準は、のちほど製品ごとのお話をするときに再び出てきます。

機械注入 — 面を均一に塗る方法

機械注入は、定められた間隔と深さで薬剤を自動的に分割して入れる方法です。よく均一さが利点だと説明されますが、臨床的により重要なのは、その均一さが生み出す安全の余裕のほうです。

微細な分割注入が安全装置になる理由

粒子型のコラーゲン刺激剤でもっとも注意すべきなのは、過剰注入によるしこりです。しこりは総量よりも一点の濃度から始まることが多くあります。手で入れるときは通常1回あたり0.01〜0.02ccの単位が入りやすいのに対し、自動注入装置はそれよりもはるかに小さな単位に分けて一定の間隔で敷くことができます。同じ総量を入れても一点の濃度が下がるので、しこりになる余地が構造的に減るわけです。実際の分割単位は機器と設定によって変わります。

この違いは均一さの問題というより、リスクを管理する方法の違いに近いものです。ですから粒子型の製剤では、機械注入は楽な選択肢ではなく設計の一部になります。

均一な間隔が生み出すもの

均一さの意味も一度整理しておく必要があります。キメや毛穴のように面の単位で認識されるお悩みは、一点がよくなったかどうかではなく、全体が同じくらい変わったかどうかが体感をつくります。ある場所には十分に入り、ある場所は空いているままだと、平均的には同じ量が入っていてもむらのある印象が残りやすくなります。

機械注入の一定した間隔は、このばらつきを減らしてくれます。ただし均一であるという言葉が、そのまま任せておけばよいという意味になるわけではありません。どの深さに合わせるか、どの部位で設定を変えるかは依然として施術者が決めることであり、誤った深さを均一に繰り返せば同じ誤差が顔全体に均等に残ります。機械注入でも最初の設定が結果を大きく左右する理由がここにあります。

機械注入が得意でないこと

そのかわり柔軟性は手打ちには及びません。凹凸が強い場所や皮膚の厚みが急に変わる場所では深さをその都度変えにくく、目の下のすぐ下や鼻の脇のように繊細な操作が必要な部位は結局は人の手が必要になります。特定の部位にだけ量を増やしたいときにその調節が制限される点も、あわせて考える必要があります。

整理すると、手打ちと機械注入は得意なことがそれぞれ異なります。どちらか一方がよい方法だという結論に向かってしまうと、その製品に必要な条件を見落とすことになります。

製品の物性が注入方法を決めます

ここからが実際のカウンセリングの核心です。同じスキンブースターと呼んでも製品ごとに性格はまったく異なり、その性格に応じて届け方の戦略も変わる必要があります。

リジュラン(PN) — 真皮に残してこそ働きます

リジュランヒーラーの主成分であるPN(ポリヌクレオチド)は、真皮のなかで細胞の再生シグナルに働きかける方向で作用します。目標とする層を外れると期待していた反応が弱まることがあり、真皮組織のなかに落ち着く過程で生じる機械的な刺激が別の利点として働くこともあります。ですからリジュランは、楽に深くよりも正確な層に貯留をつくる設計が先になります。手打ちが中心となる代表的な製品です。

ジュベルック — 均一に分けることがそのまま安全です

ジュベルック系は刺激を介してコラーゲン産生を促す製剤です。この系では、効果を大きくすることよりも、しこりをつくらずに入れることが先になります。一点に集まるとしこりのリスクが上がるため、微細に分けて一定の間隔で敷く機械注入が自然な選択になります。エイブル皮膚科でもジュベルック系は機械注入を基本として運用しています。なお、ボリュームを目的とするジュベルックボリュームはPDLLA系のコラーゲンブースターで、真皮のスキンブースターとは目標とする層も設計も異なります。

Re2O・CellREDM — hADM(ECM)を真皮に置く施術

Re2OとCellREDMは、ヒト由来の脱細胞化真皮基質、すなわちhADM(ECM)系です。コラーゲン産生を刺激する方法ではなく、真皮の細胞外基質が空いている場所に材料を直接補っておく考え方に近いものです。ですからこの系の主な舞台もやはり真皮であり、どの深さにどう配置したかが結果を大きく左右します。真皮の密度とキメが目的であれば真皮内への注入が基本になり、広い面を均一に満たす必要があるときは均一な注入方法もあわせて活用します。

GOURI — 真皮の下に網を敷く製品

GOURIは液状PCLです。水のようにさらさらしてよく広がりますが、上にある真皮は組織が緻密でそちらへ多くは拡散せず、比較的粗い真皮下層で広く落ち着きます。目的そのものが真皮を満たすことではなく、真皮の下から組織を支える網をつくることにあるため、GOURIはカニューレでの注入が中心になります。表面の肌のキメのほうに重きを置きたいときは、機械注入やニードルフリーを補助として加えます。

HILO WAVE・BELOTERO REVIVE — 少し深くても保てるHA系

HILO WAVEは高分子と低分子をあわせて含むDual-HA、BELOTERO REVIVEは高濃度のヒアルロン酸にグリセロールを組み合わせたHAブースターです。この系は水分を引き寄せる力が強く、粒子どうしが結合しているため、真皮のすぐ下の層に広く敷いても期待する変化を得られる傾向があります。むしろ真皮にリジュランのように注射するとふくらみが長く残る場合があり、少し深く入れるほうを選ぶことになりますが、そこまで深く入れるのであればカニューレとの実質的な違いは大きくありません。そのかわり深い層では血管と内出血への注意もあわせて必要になります。

目的製品の例主な注入方法理由
キメ・小じわ・再生リジュラン(PN)手打ち中心真皮のなかに貯留をつくる設計が核心
真皮の密度・キメRe2O・CellREDM(hADM)真皮内注入+均一注入の併用材料を真皮に配置することが目的
毛穴・ハリ、しこりの管理ジュベルック機械注入を優先微細な分割がしこりを減らす安全装置
全体的なハリ・支持GOURI(液状PCL)カニューレ中心真皮下層で網の構造を形成
うるおい・キメHILO WAVE・BELOTERO REVIVE深い層への注入またはカニューレ少し深くても位置を保つ物性

表は基準をお示しするための整理であり、同じ製品でも部位と目的によって方法は変わります。施術方法については、施術者ごとに異なる意見があり得ます。

もうひとつ付け加えると、同じ製品のなかでも剤形が分かれれば注入方法は変わります。リジュランだけでもヒーラー、HB+、アイ系を状況に応じて使い分けますが、目の下のように皮膚が薄い部位は入れられる層の余裕が狭いため、一点あたりの量と深さをはるかに保守的に設定します。製品名が同じだから同じ方法で入れるのではなく、その回に扱う部位の条件が方法を決め直すとお考えいただければと思います。

カニューレ — 深く、広く敷くための道

カニューレは先端が丸みを帯びた長い管です。針のように組織を刺しながら入るのではなく組織のあいだを押し分けて進むため、内出血と痛みが少ない傾向があり、一度入れれば広い面積を扱えます。受ける側にとって楽な方法であることから、すべてのスキンブースターをカニューレで行えばよいのではないかというご質問をよくいただきます。

ただしカニューレは深い層を広く扱うのに向いた道具です。ですからカニューレが合う製品は、もともと真皮の下で落ち着くことを目的とした製品です。先に見たGOURIが代表的で、架橋成分のあるHA系もここに近いものです。

逆に、リジュランやhADM系のように真皮のなかに残ってはじめて働く製品をカニューレで深く広く敷いてしまうと、肝心の反応が必要な層を通り越し、別の場所に薬剤が広がる結果になりかねません。カニューレでも同じだという話はある製品には当てはまりますが、真皮のなかに正確に入る必要のある製品にはそのまま当てはめにくいものです。

もうひとつ、カニューレが針より安全な傾向にあるとしても、深い層には血管が通っています。乱暴に扱えば血管を押したり傷つけたりすることがあるため、深く入れる方法でも慎重な操作が必要です。

ニードルフリーが担う役割 — シナジェット

エイブル皮膚科で運用しているニードルフリーの注入装置はシナジェットです。針を刺さずに圧力で薬剤を肌のなかへ送り込む方法のため、針あとが残らず、真皮層に比較的均一に分布させることができ、痛みと回復の負担も少ない傾向があります。リジュラン、ジュベルック、Re2O、GOURI、マイクロボトックスのように複数の剤形を同じ装置で適用でき、施術時間はおおよそ20〜30分、製品によっては3〜4週間隔で3〜5回のシリーズをおすすめすることが多くあります。

密着させる注入と、距離をとって散布する方法は違います

ニードルフリーのインジェクターについてお話しするとき、よく混ざってしまう2つがあります。ひとつは肌に密着させ、圧力で真皮層まで薬剤を送り込む方法、もうひとつは距離をとって表面に散布する方法です。前者は実際に真皮のなかに薬剤を配置する注入にあたりますが、後者は傷のない肌では届く深さが浅くなり、真皮層に意味のある量が入ることを期待しにくい場合が多くなります。表面のうるおい程度には役立ち得ますが、単独でメインの施術にすると体感の差が大きくなります。

通り道を先につくると変わります

そのため距離をとって散布する方法は、すでにマイクロチャネルがつくられたあとに力を発揮する傾向があります。ポテンツァのようなニードルRFやCO2フラクショナルのように肌に微細な通り道をつくる施術を先に行い、そのあとに薬剤をつなぐ補助の軸として活用すると、届きやすさが生きてきます。エイブル皮膚科の毛穴パッケージでポテンツァやピコフラクセルを行った回にシナジェットで薬剤をつなぐ構成も、同じ考え方によるものです。

ニードルフリーの役割は明確です。針あとや内出血を避けたい事情があるとき、広い面積を均一に扱う必要があるとき、そしてチャネルをつくった施術のあとに薬剤をつなぐときです。逆に、局所の瘢痕一か所に十分な量を集中させる必要がある状況であれば、手打ちが依然として必要です。

ニードルフリーという言葉の印象から、届きにくい方法だと誤解されることがありますが、実際に分かれる地点は針の有無ではなく薬剤が真皮まで届く条件がつくられたかどうかです。密着させる注入で真皮に配置する使い方と、チャネルをつくったあとにつなぐ使い方は、いずれもその条件を確保した場合にあたります。逆に条件のないまま表面に載せる方法は、同じ装置を使っても期待できる範囲が変わります。

施術後は針あとが残らず、軽い発赤が数時間のうちに落ち着く傾向があるため、当日または翌日にメイクが可能な場合が多くなります。ただし適用した製品によっては軽い内出血やしこり感が数日続くことがあり、ニードルフリーだからという理由だけで回復の過程がないとは言いにくいものです。妊娠中・授乳中である場合や、施術部位に活動性の炎症がある場合のように進行が難しい条件は、製品の基準と同じように適用されます。

組み合わせと間隔 — 1回ではなくシリーズの設計

実際の施術で手か機械かを1つに絞ることは、かえってまれです。機械で顔全体に同じ深さのベースを敷いて内側の乾燥とキメを整え、手でディテールが必要な部位を一針ずつ補強するといった組み合わせのほうが自然です。カニューレとニードルフリーも、目的に応じてここに加わります。

深さを分けて積み上げる設計

エイブル皮膚科のレイヤードブースターがこの方法の例です。GOURIを真皮の深層から中層に均一に分布させ、Re2Oを真皮中層に整列させたうえで、マイクロボトックスを表層に細かく分布させるという順序で、1回の施術のなかで深さを分けて積み上げます。それぞれの成分が作用する層と時間が異なるため、同じ層にまとめて入れるよりも層を分けるほうが互いの役割を生かせます。シナジー高周波のようにデンシティのアルファチップで真皮を温めたあとシナジェットでGOURIを届ける構成も、同じ発想によるものです。

順序にも理由があります

複数の層を1回の施術で扱うときは、おおむね深い層から整えて浅い層へ上がってきます。浅い層を先に満たすと、その上にむくみやふくらみが生じて下の層の境界を見極めにくくなり、すでに薬剤が入った場所を再び通ることで、先につくった分布が乱れることがあるためです。順序は好みの問題ではなく、次の段階で判断するための根拠を残しておくための手順に近いものです。

同じ理由から、1回の施術で製品を重ねすぎないよう調節します。層を分けて積み上げる設計の利点は、それぞれの成分を別の場所で働かせる点にありますが、一度に多くの量が入ると層のあいだの境界がぼやけ、反応を解釈することも難しくなります。最初から最大量を入れるよりも、反応を見ながら次の回で補強する進め方のほうが負担を減らせます。

間隔が製品ごとに違う理由

均一性は1回の施術のなかだけの問題ではありません。施術と施術のあいだの間隔も分布に影響します。前の回の薬剤がまだ片づいていない状態で次の回が重なると、意図よりも多くの量が1つの層に積み上がることがあり、逆に間隔が広がりすぎると積み上がりにくくなります。リジュランとhADM系は4週間隔で3〜5回、HILO WAVEやBELOTERO REVIVEのようなHA系は3〜6か月間隔で3〜5回というように、製品ごとに異なる基準を置いている理由がここにあります。

施術後24時間が分布の最後の変数です

注入直後の薬剤は、まだ位置に落ち着いている途中です。強く押したりこすったりすると、手をかけてつくった分布が乱れることがあるため、注入部位は24時間のあいだ強い圧迫とマッサージを避けていただくほうがよいと考えています。施術当日のサウナと激しい運動、1週間の飲酒のように血流を大きく上げる行動も、内出血とむくみに影響します。製品によっては軽い内出血やしこり感が5〜7日ほど続くことがあり、これはたいてい自然に吸収されていく経過です。ただし症状が続いたり強くなったりする場合は、施術を受けられたところで確認されるほうがよいと思います。

結局のところ重要なのは、どの機器を使ったかではなく、目的に合わせて深度と分布をどう設計したかです。手打ちと機械注入はその設計を実行するための別々の道具であり、効果には個人差があります。

診察から施術まで

皮膚科専門医が直接診察して原因となっている層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術を勧める仕組みではありません。

回数・間隔・維持の時期・費用は、初回の施術前に一緒に決めます。

よくあるご質問

エイブル皮膚科では注入方法をどのように決めていますか?
製品の物性と目標とする層を先に決め、それに合う方法を選びます。ジュベルックのような粒子型の製剤は機械注入で細かく分けて入れることを基本とし、ニードルフリーでの均一な注入が必要な場合はシナジェットで行います。1回の施術のなかで部位ごとに方法を使い分けることもあり、回数と間隔は初回の施術前に一緒に決めます。
内出血しやすいのですが、どの方法がよいでしょうか?
一般的には、ごく浅い層に分布させる方法は太い血管に触れる機会が少なく内出血が出にくい傾向があり、深い層に針で直接入れる方法は内出血の可能性が高めです。ニードルフリーやカニューレを活用することで負担を減らせる場合もあります。ただし目標とする層をあきらめてまで方法を変えることはせず、どちらの優先順位が高いかを施術前に一緒に決めます。
施術直後にこすらないよう言われるのには理由がありますか?
注入直後は薬剤がまだ意図した位置に落ち着いている途中だからです。強く押したりこすったりすると、手をかけてつくった分布が乱れたり、一方に寄ったりすることがあります。そのため注入部位は24時間のあいだ強い圧迫とマッサージを避けていただき、当日のサウナや激しい運動のように血流を大きく上げる行動も控えていただくようお願いしています。
施術間隔が製品ごとに違うのはなぜでしょうか?
組織が製品を処理する速さと方法が違うからです。リジュランとhADM系は4週間隔で3〜5回のシリーズとして運用し、HILO WAVEやBELOTERO REVIVEのようなHA系は3〜6か月間隔で3〜5回とご案内することが多くなります。間隔を狭めすぎると前の回が片づく前に量が重なることがあり、広げすぎると積み上がりにくいため、それぞれの製品に合った間隔が必要になります。
注射のあとに薬剤が外に漏れている気がするのですが、損ではないでしょうか?
目に見える損失は気になりますが、たいていは想定できる範囲です。注入圧や速度が高いと針を抜くときに一部が流れ出ることがあり、施術者は通常そのぶんを見込んで設計しています。臨床的により気にするのは、外からは見えない損失のほうです。つまり真皮に残るべき薬剤がより深い層に広がり、目標とする層での曝露が減ってしまう場合です。
同じ製品なのに前回と違う方法で入れるのはなぜでしょうか?
同じ製品でも、その日に扱う部位と目的が違えば注入方法は変わります。広い面のキメを整える回と、局所の瘢痕を補強する回とでは、必要な均一性も一点あたりの量も異なります。前回の反応、内出血がどの程度出たか、肌の厚みがどうだったかも、次の回の方法選びに反映されます。
ニードルフリーは効果の弱い方法なのでしょうか?
使い方によります。肌に密着させて圧力で真皮層まで薬剤を送り込む方法は、分布が均一で針あとが残らない点が利点です。一方、距離をとって散布する方法は、傷のない肌では届く深さが浅くなり、単独で使うときには体感の差が出やすくなります。そのため後者は、マイクロチャネルをつくる施術のあとに続けて使うことで、届きやすさが生きてくる傾向があります。
カニューレで痛くないように敷いてもらうことはできませんか?
製品によって異なります。架橋ヒアルロン酸系や液状PCLのように真皮の下で広く落ち着くことが目的の製品には、カニューレは合理的な選択です。一方で、リジュランやhADM系のように真皮のなかに残ってはじめて働く製品を深い層に広く敷いてしまうと、肝心の目標とする層を通り越す結果になりかねません。カニューレでも深い層で血管を扱うときの注意は必要です。
機械注入が硬結を減らすというのはどういう意味でしょうか?
粒子型のコラーゲン刺激剤では、一点に多くの量が集まることがしこりの主な原因になります。手では1回あたり0.01〜0.02cc程度の単位で入りやすいのに対し、自動注入装置はそれよりもはるかに小さな単位に分けて一定の間隔で敷くことができます。一点あたりの濃度が下がるぶん、しこりになる余地が構造的に減るということで、実際の数値は機器と設定によって変わります。
リジュランは痛くないように深く入れたほうがよいのでしょうか?
痛みを減らすことは大切ですが、深く入れることが常に正解というわけではありません。リジュランのPN成分は真皮のなかで働くように設計されているため、痛みを避けようとして目標より深い層に入ると、期待していた反応が弱まることがあります。痛みがご負担であれば、深度を変えるよりも麻酔の方法や別の注入方法を調整するほうが、目的を守りながら負担を減らす方向になります。
ふくらみ(膨隆)が出なければ効いていないということでしょうか?
目的が何だったかによります。うるおいとツヤが目的であれば、なめらかに広がるほうがむしろ狙いに合っています。ただしリジュランのように真皮のなかでの反応を期待する製品であれば、施術直後のふくらみは薬剤が目標の層に入ったというサインとして読めることもあります。ふくらみ自体が目的ではなく、目標とする層と製品によって解釈が変わります。
手打ちのほうが必ずよいのでしょうか?
そうではありません。顔全体のキメや毛穴のように面を均一に扱う目的であれば、一定の間隔と深さで敷いていく機械注入のほうが有利な場合が多くあります。逆に、特定の瘢痕や局所のしわのように一点に集中させる目的であれば手打ちが有利です。実際の診療では、1回の施術のなかで両方を使い分けることがもっとも多くなります。
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