ニキビ跡について調べているうちに「空気で瘢痕を持ち上げる」という説明を見て来られる方がいらっしゃいます。表現だけを聞くと、皮膚の下に空気を入れて陥凹を膨らませるという意味に読めてしまいます。実際にエアサブシジョンが行っていることは、それとは異なります。この記事では、この施術が皮膚の中で何を切り何を残すのか、従来のニードルサブシジョンとどこで分かれるのか、そしてどの瘢痕で意味があり、どの瘢痕ではそうでないのかを整理します。
3行まとめ
- エアサブシジョンは高圧のCO2ガスを真皮と皮下の境界に噴出させて、瘢痕の底を下へ引っ張る線維性索状組織を切る施術です。空気が陥凹を埋めるのではなく、ガスが通りながら切り離した癒着が残ります。
- 針で行うニードルサブシジョンと原理は同じで、切り方が異なります。ガスは組織面に沿って広がり、広く均一に剥離し、内出血や出血が比較的少ないという報告があります。ただし切る力そのものは針のほうが直接的なので、実際には二つの方法を続けて使うことが多くあります。
- 下方の癒着が支配的なローリング型と、浅いボックスカー型で意味が大きくなります。切り離した部位は再び付くことがあるため単独では終えず、空間を支える注入と表面を扱うレーザーを併せて配置します。効果と経過には個人差があります。
空気を入れる施術ではなく、付いているものを切り離す施術です
サブシジョン(subcision)という言葉は、下を意味するsubと切開を意味するincisionが合わさった名前です。皮膚の表面を開かずに瘢痕の下で付いている組織を切り離す操作を指します。ここにエアが付いているのは、その切る仕事を針先ではなくガスの圧力が代わりに行うという意味です。資料によってはエアダイセクション、CO2ガスサブシジョンといった名前でも呼ばれます。
施術の実際の姿はこうです。細い針を瘢痕の底の真皮と皮下の境界まで進め、その針先から高圧のCO2ガスを噴出させます。ガスは抵抗の少ない組織面に沿って広がりながら、その間に架かっていた線維性索状組織を押して切ります。表面には針が入った跡だけが残り、切開はありません。
このとき生じる空気の層(エアポケット)を施術の目的だと誤解しやすいところです。実際には剥離が起きたという結果であり、切り離された面が再び合わさらないよう少しのあいだ開けておく空間に近いものです。注入されたガス自体は数時間から一日のうちに吸収されて消えます。残るのは空気ではなく切り離された癒着で、その部位に新しいコラーゲンが満ちていくことで変化がつくられます。
呼び名がいくつもあります
同じ操作をめぐって、エアサブシジョン、エアダイセクション、CO2ガスサブシジョンのようにいくつもの名前が一緒に使われています。CO2ガスを皮膚に注入するという点から、炭酸ガス療法系の名前で呼ばれることもあります。名前が複数あるために、互いに別の施術だと誤解したり、逆に名前だけを見て同じ施術としてまとめてしまうことが起こります。
名前で区別するよりも、ガスをどの深さに置いて何を切ろうとしているのかを基準に見ていただくほうが正確です。同じ気体を使っても、表面近くに薄く広げる操作と、瘢痕の底の癒着を狙って真皮と皮下の境界で噴出させる操作は目的が異なります。ニキビ跡で話題になるエアサブシジョンは後者です。カウンセリングで施術名だけを確認して終えると、この違いが表に出てきません。
エイブル皮膚科で使用している機器
エイブル皮膚科ではこの施術をTriFill(TriFill Pro)で行っています。針の形で皮膚に入り針先からガスを噴出させる構造なので、従来のニードルサブシジョンと同じやり方で癒着を解きながら、同じ場所にガスの剥離を続けて加えることができます。これに加えて、剥離した空間へ薬剤をそのまま注入するところまで一つの機器の中でつながるため、瘢痕を一つずつたどりながら細かく操作するのに適した構成です。
ただし機器が結果を決めてくれるわけではありません。同じ機器でもどの深さに針を置き、どれだけ広く剥離し、そのあとに何を配置するかによって経過が変わります。施術名よりもその設計を確認していただくほうが実際に近いです。
なぜほかの気体ではなくCO2なのか
CO2はもともと体の中でつくられ、血流を通じて排出される気体なので、組織に残さず回収される経路がはっきりしています。これに加えて、CO2ガスを真皮内へ注入すると新生血管が増え、酸素が放たれてコラーゲンの合成が刺激されることが知られています。切る道具としての役割とは別に、血流と酸素の供給がよくなる方向が回復を助けていると理解されています。
瘢痕が押さえつけられて見える理由 — 上から押すのではなく下から引くこと
陥凹した瘢痕を見ると表面が落ち込んでいるので、その場所に何かが足りないのだと考えやすいものです。実際に真皮が損傷して量が減っている場合もありますが、少なくない瘢痕では底が下の組織に引き止められ、下へ引きずられている状態が一緒にあります。ニキビの炎症が真皮に入り込みながら治っていく過程で線維性の帯がつくられ、この帯が表面を引っ張り続けているのです。
この帯がつくられる過程を見ると理解しやすくなります。炎症が真皮の深いところまで入り込むと、損傷した部位を埋めるために線維組織がつくられますが、この過程が滑らかに進まないと表面と下の組織のあいだを横切って付く形で固まります。ニキビはおさまったけれど、その下に残ったこのつながりが表面を下へ引き下げ続けるわけです。時間がたつほどこの組織は成熟して硬くなる傾向があります。
この区別が重要なのは、アプローチがまったく変わるからです。下から引っ張られている瘢痕に表面の治療だけを繰り返すと、上でいくらコラーゲンをつくってもその力に勝てず、再び押さえつけられます。癒着がある状態でエネルギー系の施術だけを繰り返す計画が期待ほど持ち上がらない理由がここにあります。付いているものを先に離してこそ、そのあとの治療が乗る場所ができます。順序を変えれば、同じ施術を同じ回数受けても結果が変わります。
診察で癒着を確認する方法
- 皮膚を横に引いてみる — 周囲の皮膚を左右に引いたときに瘢痕の底も一緒に上がって平らになれば癒着は弱いほうで、ついて上がらずそのまま押さえられていれば下から引き止められているサインと見ます。
- 照明の角度を変えてみる — 光を斜めから当てたときにできる影の形で、境界が立っている瘢痕なのか、なだらかに落ち込んだ瘢痕なのかを見分けます。
- 部位ごとに分けて記録する — 一つの顔の中でも、頬の外側は癒着が支配的で内側は真皮の欠損が支配的、というように分かれることが多いため、瘢痕一つ単位ではなく部位単位で判断します。
ニキビ跡をアイスピック型・ローリング型・ボックスカー型に分ける形態別の分類は、カウンセリングで最初に出てくる話ですが、その分類だけで治療が決まるわけではありません。同じローリング型でも、癒着が硬い場合とそうでない場合では計画が異なるためです。形態別の分類は別のコラムで詳しく扱っていますので、この記事では癒着という軸に絞ってご説明します。
すべての陥凹した瘢痕に癒着があるわけではありません
逆の場合もはっきりとあります。引いてみたときに底が素直についてくる瘢痕、境界が角ばって立っていて壁そのものが問題の瘢痕、真皮の量が減って全体的に薄くなった皮膚は、癒着を切る操作で解決する対象ではありません。このような瘢痕にサブシジョン系を繰り返すと、内出血と回復期間だけが積み重なり変化は大きくありません。切るものがある瘢痕なのかを先に確認することが、施術を選ぶことよりも前に来ます。
ニードルサブシジョンとは何が違うのか
二つの施術は互いに別の系統ではありません。目標も同じで、狙う層も同じです。分かれる点は癒着を切る道具が針の刃なのか、ガスの圧力なのかという一点です。この違いが、剥離の形と回復の負担を少しずつ違うものにします。
| 項目 | ニードルサブシジョン | エアサブシジョン(CO2ガス) |
|---|---|---|
| 作動の仕方 | 針で癒着を直接切る | 針を進めたあとガス圧で剥離 |
| 剥離の範囲 | 針が通った軌跡が中心 | 組織面に沿って広く均一に |
| ダウンタイム | 内出血・痛みが比較的目立つ | 比較的軽いという報告 |
| 加わる効果 | 剥離そのものに集中 | 微細な刺激で新生血管・コラーゲン合成を促すという報告 |
表だけを見るとガスのほうがすべての項目で優れて見えますが、実際の施術ではそう単純ではありません。ガスは抵抗の少ない面に沿って広がる性質があるため広く均一に剥離するのに有利ですが、逆に硬く固まった帯を一つ正確に狙って切る力は針のほうが直接的です。古くなって厚くなった癒着は、圧力だけでは素直に離れないことがあります。
そのため臨床では二つのうち一つを選ぶよりも、針でまず硬い部分を切り離し、同じ針先からガスを続けて噴出させて周囲まで広げる順序で進めることがよくあります。TriFillのように一本の針の中で二つの操作がつながる機器は、この順序をそのまま実現するのに適しています。エアサブシジョンがニードルサブシジョンに取って代わるというよりも、同じ目的に向けて互いに異なる方向の力を加えると理解していただくほうが正確です。
「痛みが少ない」という表現が指す範囲
ガスを使う方法は出血と内出血が少ないほうだという報告が、複数の資料で共通して言及されています。ただしこれは同じ範囲を剥離したときの相対的な傾向であって、負担がないという意味ではありません。針が瘢痕の底まで入る過程自体は同じで、ガスが組織を押し広げながら広がるときに押される感じや重だるさを感じます。麻酔クリームと必要に応じた局所麻酔を併せて使用し、感じ方には個人差があります。
剥離の範囲を広く取るほど内出血と腫れもその分増えます。一度にできるだけ広く切るほうが有利に見えるかもしれませんが、回復の負担と次の回までの間隔まで併せて考えると、一回で扱う範囲を分けるほうが実際のスケジュールでは管理しやすくなります。
広く広がるという性質は長所であり限界でもあります
ガスは圧力の低いほう、抵抗の少ないほうへ広がります。おかげで針が届かなかった周囲まで均一に剥離されますが、逆に言えばガスが進む道を自分で選ぶということでもあります。癒着がとりわけ硬い場所は避けて通り、すでに緩んでいるほうへより広がることがあります。
そのためこの施術で実際に差をつくるのは、ガスの強さそのものよりも針をどの深さに置くかです。浅すぎると表面近くで広がり、肝心の切るべき底に届きません。深すぎると瘢痕と関係のない層で散ってしまいます。瘢痕の底の境界面を正確に見つけ、そこで噴出させてこそ目的とした剥離が起こります。同じ機器で同じ時間をかけても結果が分かれる地点がここです。
切ったあとに残る空間が実際に果たす役割
この施術の核心は切る瞬間ではなく、そのあとに続く過程にあります。報告されている機序は、おおむね三つの段階に整理されます。
- 癒着の分離 — 高圧のCO2ガスが真皮下層の線維性索状組織を物理的に切り、陥凹した瘢痕を下へ引っ張っていた力を取り除きます。
- 真皮の挙上 — 癒着が解けるとその部位に空間が生まれ、押さえつけられていた真皮がわずかに上がって平らになる足場ができます。この空間が、そのあと新しいコラーゲンが編まれる場所になります。
- 創傷治癒とコラーゲンのリモデリング — ガスの注入で生じた微細な刺激がTGF-β、PDGF、VEGFといった成長因子の分泌を増やし線維芽細胞を活性化させて、切り離された部位にコラーゲンが再び配列されます。
まとめると癒着の分離 → 真皮の挙上 → 治癒の活性 → コラーゲンの再配列 → 血流の改善へとつながる連鎖です。施術直後に変化が大きくない理由もここにあります。最初の段階は施術台の上で終わりますが、残りは数週間から数か月かけて進むためです。
二つ目の段階をもう少し押さえておきます。切るだけでその部位をそのままにしておくと、たった今離れた面どうしが再び合わさったまま治ってしまうことがあります。ガスがつくっておいた空間はこの合わさりを少しのあいだ防ぐ役割を果たし、そのあいだに回復の反応が始まります。空気そのものが瘢痕を押し上げるのではなく、新しくつくられる組織が入る場所をしばらく空けておく側に近いのです。この観点で見ると、あとで述べる再癒着の問題と、剥離の直後に何を配置するかという問いは同じ幹から出ています。
組織検査で確認された変化
ニキビ跡の患者14名にCO2ガスサブシジョン3回とフラクショナルCO2レーザー2回を行い、そのうち10名で施術前後のパンチ生検により組織を比較した研究があります。すべての患者で臨床的な改善が観察され、組織検査では真皮コラーゲンの増加、真皮の厚みの増加、網状真皮の弾性線維配列の整いが確認されたと報告されています。
ただしこの研究はガスサブシジョンとレーザーを併せて行った設計なので、観察された変化がどちら側から来たのかをこの結果だけで分けることは難しいです。根拠を読むときに見落としやすい部分です。
二つを分けて比較した研究
- 一つの顔を半分に分けた比較(患者20名) — 顔全体にフラクショナルCO2レーザーを3回行いながら、片側の瘢痕にのみCO2ガスサブシジョンを追加したところ、併用した側の萎縮性瘢痕の改善幅がレーザー単独側より大きかったと報告されています。
- サブシジョン単独と併用の比較 — サブシジョンのみを行った群と、そこにフラクショナルCO2レーザーまたは架橋ヒアルロン酸を加えた群を比較した研究では、併用群で優れた改善が現れた割合がより高くなりました。副反応は浮腫、痛み、紅斑が大部分3〜10日のうちにおさまる水準でした。
- 同時施行と順次施行の比較(患者34名) — フラクショナルCO2レーザーとサブシジョンを同じ日に一緒に行うか、分けて行うかを比較した研究もあります。ただし無作為割り付けが行われておらず、選択バイアスの可能性を著者らが自ら限界として明らかにしています。
ここでは二つを併せて読む必要があります。一つは併用の設計で改善幅が大きくなる傾向が複数の研究で繰り返されている点、もう一つはこれらの研究がおおむね標本が大きくなく、一部では無作為割り付けが行われていないという点です。現在までの根拠は方向を参考にする資料に近く、個別の結果を数値で約束できる段階ではありません。
どの瘢痕で意味があり、どの瘢痕ではそうでないのか
この施術が狙うのは癒着という一つの要素です。したがって瘢痕の中で癒着が占める比重が大きいほど得られるものが大きく、比重が小さければ同じ施術をしても変化が現れにくくなります。形態別に整理すると次のとおりです。
| 瘢痕のタイプ | おおよその大きさ・深さ | エアサブシジョンの位置 |
|---|---|---|
| ローリング型 | 直径4mm以上 / 上部真皮 | 下方の癒着が支配的で広い剥離が合いやすい。表面のキメ・トーンはレーザーが補う |
| ボックスカー型(浅い場合) | 直径1〜4mm / 深さ3mm以下 | 反応が比較的よい範囲。壁が残れば表面の治療を加える |
| ボックスカー型(深い場合) | 上部・下部真皮 | 単独では足りないことが多く、CO2フラクショナルなどと併用したときに相乗効果 |
| アイスピック型 | 直径2mm未満 / 下部真皮〜皮下 | 底を垂直に扱うアプローチが優先。ピンホール・ドットピール(TCA CROSS)などと併せて使い、エアサブシジョンは補助 |
対象にならない場合もはっきりとあります
- 赤み(炎症後紅斑) — 陥凹ではなく炎症のあとに残った血管の反応です。切る癒着がないので、Vビームのように血管を扱うレーザーが担当します。
- 盛り上がった瘢痕(肥厚性・ケロイド) — 組織が過剰につくられた方向の瘢痕なので、剥離して再生を促すアプローチとは狙う方向が反対です。
- 癒着なく薄くなった皮膚 — 引いてみたときに底が素直に上がってくる瘢痕は、真皮の量を補うほうが先です。
- 活動性のニキビが進行中の状態 — 炎症が残っている部位を剥離すると刺激となり、新しい瘢痕につながる余地があります。ニキビを落ち着かせる治療が順序として前に来ます。
一人の顔にはたいてい複数のタイプが混ざっています。頬の外側には広いローリング型が、内側には狭いアイスピック型が一緒にある、といった具合です。そのため実際の計画は「この顔にエアサブシジョンをするのか」ではなく、「どの部位のどの瘢痕をこの方法で扱うのか」という形で立てられます。
切り離した部位は再び付くことがあります
この部分は施術の前に必ず知っておいていただきたい内容です。癒着を切る操作も結局は組織に傷をつける過程であり、体はその傷を治す過程で再び線維組織をつくります。その結果切り離した部位が時間とともに部分的に再び付くことがあります。これを再癒着と呼びます。一度の施術で終わらない理由の一つがここにあります。
そのため剥離だけで終える構成よりも、切り離した空間が再び押さえられないよう支える要素を併せて置くほうが一般的です。TriFillは剥離の直後に同じ針の位置へ物質を注入できるため、たった今開けたその空間へ正確に配置するのに適した構造です。何を置くかは瘢痕の深さと肌の状態によって変わります。
- ヒアルロン酸フィラー — 陥凹した深さをすぐに補い、空間を物理的に支えます。変化がすぐ目に見える代わりに、時間とともに吸収される性質を併せて考えます。
- ジュベルック ボリューム(PDLLA) — 即時のボリュームよりも、コラーゲンがつくられるよう刺激する方向の物質です。変化がゆっくり現れる代わりに、自ら生み出した組織が場所を満たす側に近いものです。
- スカルプトラ(PLLA) — 同じコラーゲン刺激系で、広い範囲の密度を上げる目的から検討します。
- Re2O — hADM(ECM)系で、組織が再び落ち着くときの土台となる細胞外マトリックスを補う方向の物質です。
どの物質であっても、癒着を切らない状態で先に埋める順序はおすすめしません。下から引く力が残っていると、埋めたボリュームがその力に押さえられて期待ほど持ち上がらないためです。順序が結果を分ける代表的な例です。
層の異なる治療と分けて配置します
エアサブシジョンが扱う層は瘢痕の底です。瘢痕を構成するほかの層は、別の治療が担当します。
- ポテンツァ(ニードルRF) — 微細な針で目標の深さに高周波を伝え、真皮をリモデリングします。表面の損傷が少ないほうなので、回復の負担を調整しながら繰り返すのに適しています。
- CO2フラクショナル — 表面から真皮まで微細な熱損傷をつくり、瘢痕の壁とキメを編み直します。境界が立っているボックスカー型で役割が大きくなります。
- CO2レーザー(ピンホール) — 狭く深い瘢痕の底を垂直に扱うアプローチです。アイスピック型で軸となります。
- ドットピール(TCA CROSS) — レーザーではなく高濃度のTCAを瘢痕の内側にだけ点で適用する化学的な方法で、狭く深い瘢痕で併せて検討します。
- Vビーム — 瘢痕に赤みが一緒に残っているときに血管の反応を担当します。
実際に報告されている研究の大部分が単独ではなく併用の設計であるのも、同じ文脈です。癒着を切る物理的な効果と表面を編み直す効果は互いに異なる層を補うため、どれか一つだけを繰り返す計画はおおむね満足度が低くなります。癒着を切っておいて表面をそのままにすれば粗いキメと残った色調がそのまま見え、表面だけを繰り返せば底が再び押さえられます。
回数と間隔
ローリング型と浅いボックスカー型を基準に3〜5回ほどを計画することが多くあります。単独で進めるなら3〜4週間隔も可能ですが、実際にはほかの治療と併用することになるため、間隔をもう少し空けるほうをおすすめします。回復期間が必要な治療とそうでない治療をどう並べるかが、全体のスケジュールの骨組みになります。瘢痕のタイプと深さ、肌質によって調整が必要で、個人差があります。
施術後の経過 — ダウンタイムと効果は時間軸が異なります
個人差が大きいことを前提に、一般的な流れを段階別に整理してご説明します。
- 施術当日 — ガスを注入した部位が少し膨らみ、皮膚の下に空気が入った感じがします。触れたときに細かい音や感覚(捻髪音)を感じることがあり、この空気は通常、数時間から一日のうちに自然に吸収されます。
- 2〜3日 — 内出血と腫れが最も目立つ時期です。癒着を切る過程で細かい出血が生じるためで、剥離の範囲が広いほど、よりはっきりします。
- 1〜2週間 — 内出血が引き、外から見える変化はおおむね整います。この時期から、切り離された部位に新しいコラーゲンが満ちていく再生が始まります。
- 数週間〜数か月 — 瘢痕の実際の改善は、この再生の過程に沿ってゆっくり現れます。回数の間の写真を比べていただくほうが、変化を確認しやすくなります。
つまり、目に見えるダウンタイムと効果が現れる時期は互いに異なる時間軸の上にあります。内出血が引いたのに瘢痕はそのままのように感じられる区間が来ますが、これは失敗のサインというより自然な経過に近いものです。
知られている副反応と、確認が必要なサイン
最も多いのは内出血、腫れ、一時的な痛みで、多くは1〜2週間のうちにおさまります。報告されている研究でも、浮腫・痛み・紅斑が大部分3〜10日のうちに整う水準でした。まれに色素沈着や感染の可能性があるため、施術後にご案内するケア方法を守っていただくことが結果に影響します。
- 痛みが時間とともに強くなる場合
- 赤みと熱感が一緒に出てくる場合
- 腫れが予想される期間を越えて増え続ける場合
このような変化があれば、ご自身で判断されるより経過を確認していただくほうが安心です。また回復期間中は紫外線の管理が大切です。炎症後の色素沈着は、施術そのものよりもそのあとのケアで分かれることが多くあります。
回数の間に確認すること
次の回の範囲と間隔は、前回の経過を見て決めます。確認する項目は大きく三つです。
- 同じ部位を再び引いてみたときの反応 — 前回剥離した部位が以前より楽についてくるかを見ます。変化がほとんどなければ、癒着が残っているか再び付いた可能性も併せて考えます。
- 内出血と腫れが引いた速さ — 回復に時間がかかった方は、次の回の剥離範囲を狭めるか間隔を延ばします。
- 残っている瘢痕の性格 — 癒着が解けたあとに残る部分は、多くが壁や表面のキメの問題です。ここからは担当する治療が変わります。
瘢痕は回数ごとに少しずつ性格が変わっていきます。最初は癒着が支配的だった部位が、数回あとには表面のキメの問題に移っていく、といった具合です。最初に立てた計画を最後までそのまま追うよりも、そのときどきに残っている問題に合わせて手段を変えていくほうが、実際にはより効率的です。
エイブル皮膚科で見ている順序
瘢痕の計画を立てるとき、機器を先に決めることはしません。診察で確認する項目が先にあり、その結果によってどの手段を軸に置くかが決まります。
- 癒着があるか — 皮膚を引いたときに底がついて上がってくるかを部位ごとに確認します。ついて上がってこない部位で、エアサブシジョンの役割が大きくなります。
- 瘢痕の形態がどう分布しているか — ローリング型・ボックスカー型・アイスピック型が部位ごとにどう混ざっているかを分けて記録します。
- 皮膚の厚みと回復の傾向 — 剥離の範囲と次の回までの間隔を決める基準になります。
- 活動性のニキビが残っているか — 残っていれば、炎症を減らす治療が瘢痕の計画より前に来ます。
癒着が支配的な部位はTriFillでニードルの剥離とガスの剥離を続けて行い、必要であればその場所に支える物質を併せて配置します。壁が立っている瘢痕はCO2フラクショナルが、狭く深い瘢痕はピンホールやドットピール(TCA CROSS)が、真皮全般の密度はポテンツァ(ニードルRF)が担当します。赤みが一緒にある場合はVビームまで含めて順序を決めます。
最後に、期待値を先に合わせます。瘢痕治療の目標は完全な平坦化ではなく改善であり、回数と時間が必要で、結果には個人差があります。どの瘢痕が今回の計画で変わり得て、どの瘢痕が次の段階へ移るのかを、始める前に分けてご説明する理由です。この区別なく始めると、計画どおりに進んだのに期待と食い違ったという感覚だけが残りやすくなります。
診察から施術まで
皮膚科専門医が直接診察して原因の層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで、同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術をおすすめする仕組みではありません。
回数・間隔・メンテナンスの時期・費用は、最初の施術の前に一緒に決めます。
よくあるご質問
- 施術中はかなり痛みますか?
- 麻酔クリームを十分に塗り、必要に応じて局所麻酔を加えて進めます。針が瘢痕の底まで入り、ガスが組織を押し広げながら広がるため、押される感じや重だるさを感じることがあります。針だけを使う方法より負担が少ないという報告がありますが、感じ方には個人差がありますので、施術中に不快感があればすぐにお伝えください。強さと範囲を調整します。
- 活動性のニキビがまだ出ているのですが、今受けても大丈夫ですか?
- 炎症性のニキビが進行中であれば、瘢痕の施術は順序が後ろになります。炎症が残っている状態で皮膚の下を剥離すると刺激となり、新しい瘢痕ができる余地があるためです。ニキビを先に落ち着かせてから瘢痕の計画を始めるほうが、結果にも安全にも有利です。
- 赤いニキビ跡にも効果がありますか?
- 赤みは多くの場合、陥凹ではなく炎症のあとに残った血管の反応なので、癒着を切る施術が狙う対象とは異なります。このような場合はVビームのように血管を扱うレーザーが担当します。赤みと陥凹が同じ場所に一緒にある場合は、それぞれを担う治療を分けて順序を決めていきます。
- 施術直後はあまり変化がないように見えますが、失敗でしょうか?
- ダウンタイムと効果の出る時間軸が異なるために生じる自然な経過です。目に見える内出血や腫れは1〜2週間で整いますが、切り離された部位に新しいコラーゲンが満ちていく変化は数週間から数か月かけてゆっくり現れます。施術直後の様子だけで結果を判断するのは難しく、回数の間の経過を比べていただくほうが正確です。
- 内出血はどれくらい続きますか?
- 施術後2〜3日に内出血と腫れが最も目立ち、その後1〜2週間かけて引いていく経過が一般的です。癒着を切る過程で細かい出血が生じるために現れる変化です。腫れと痛み、赤みは多くが3〜10日のうちにおさまる水準と報告されていますが、剥離の範囲や肌の状態によって変わります。
- レーザーと必ず一緒に受けたほうがいいですか?
- 必ずというわけではありませんが、瘢痕が深い場合や表面のキメまで一緒に整えたい場合は併用のほうが有利だという報告があります。癒着を切る操作と表面を編み直すレーザーは、扱う層が互いに異なるためです。実際に報告されている研究も、その多くは単独ではなくCO2フラクショナルと組み合わせた設計に集まっています。
- 切り離した癒着がまた付いてしまうことはありますか?
- あり得ます。癒着を切ることも結局は組織に傷をつける過程であり、治っていく過程で再び線維化が進むと一部が戻ることがあります。そのため剥離だけで終えるよりも、その空間にフィラーやコラーゲン刺激材を置いて支えたり、回数を分けて進めながら経過を確認する構成をとります。再び付く程度には個人差があります。
- アイスピック型が多いのですが、エアサブシジョンでよくなりますか?
- アイスピック型は狭く深く入り込んだ形なので、癒着を広く切り離すアプローチだけでは限界があります。中心部を垂直に扱うピンホールやドットピール(TCA CROSS)のような方法が先に軸となり、エアサブシジョンは周囲にあるローリング型や浅いボックスカー型を担当する側に配置されます。一つの顔にいくつかのタイプが混ざっていることが多いため、部位ごとに分けて計画します。
- 一度受ければ瘢痕は整いますか?
- 一度で終えるのは難しいです。ローリング型と浅いボックスカー型を基準に3〜5回ほどを計画することが多く、単独で進める場合は3〜4週間隔も可能ですが、ほかの治療と併用する設計では間隔をもう少し空けます。コラーゲンが編み直されるには時間がかかるため、回数を分けて経過を見ながら調整していきます。
- 施術後に皮膚がシャリシャリする感じがありますが大丈夫でしょうか?
- 注入されたCO2ガスが皮膚の下に一時的に残って生じる感覚で、通常は数時間から一日のうちに吸収されます。触れたときに細かい音や感覚を感じることがありますが、多くは自然におさまります。ただし痛みがだんだん強くなる場合や、赤みと熱感が一緒に出てくる場合は、経過を確認していただくほうが安心です。
- 針で行うサブシジョンとは何が違うのですか?
- 原理は同じです。どちらも瘢痕の下の癒着を物理的に切り離す操作です。違いは切り方で、針は通った軌跡に沿って直接切り、ガスは抵抗の少ない組織面に沿って広がりながら広く均一に剥離します。内出血や出血が比較的少ないという報告がありますが個人差があり、実際の施術では針でまず切り離し、同じ針先からガスを続けて噴出させる形で両方を併せて使うことが多くあります。
- エアサブシジョンは皮膚の中に空気を入れて陥凹を膨らませるのですか?
- そうではありません。注入されたガスは数時間から一日のうちに吸収されて消え、残るのはガスが通りながら切り離した癒着のほうです。瘢痕の底を下へ引っ張っていた力がなくなることで、押さえつけられていた真皮が本来の高さまで戻る余地が生まれるのであって、空気そのものが陥凹を埋めているわけではありません。空気の層は目的ではなく剥離が起きた結果であり、新しいコラーゲンが入り込む空間に近いものです。