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肌診断機器の点数、どこまで信じられるか — 点数と診断の距離

「結果表で水分が下位と出たと言われて来ました」。診察室でときどき伺うお話です。画面に出た数値と等級を根拠に何をすべきかという説明を受けたとおっしゃるのですが、その数値が何と比べた値なのかは説明に含まれていないことがほとんどです。この記事は肌診断機器が役に立たないという話ではなく、その点数をどのような枠組みで読むかという話です。

3行まとめ

  • 機器が読み取っているのは物理量で、画面に出るのはその物理量を人が決めた規則で変換した点数です。この二つは同じものではありません。
  • 同じ値を繰り返し出せること(信頼性・再現性)と、その値が実際の肌の状態を代表していること(妥当性)は別の問題で、これまで根拠が積み上がってきたのは主に前者です。
  • ですから肌診断機器は、ある時点を判定する道具というより、同じ条件で繰り返し測って変化を追う道具として使うときに役割を果たします。点数は診断書ではなく、その日の測定の記録です。

肌診断機器は実際に何を測っているのか

機器が行っていることは思ったより単純です。決められた照明の下で顔を撮影するか、プローブを肌に当てて物理量を読み取ります。角層の静電容量、表面から蒸発する水分量、反射する光の波長分布、表面の凹凸がつくる影といったものです。ここまでは物理的な測定で、この段階の機器はかなり安定して働きます。

機器が読み取るものと画面に出るものは違います

ここで一つ、分けて考えるべき点が出てきます。機器が読み取るのは物理量で、画面に出るのはその物理量を人が決めた規則にしたがって変換した点数だという点です。数値そのものは機器が読み取りますが、その数値が問題かどうかは、あらかじめ誰かが決めた基準にしたがって判断されます。結果表で私たちが見ているのは、その多くが後者です。

  • 角層の静電容量 — 水分の点数に変換されます。静電容量そのものは物理量で、何点から足りないと見るかは規則が決めます。
  • 表面から蒸発する水分量 — バリアに関する点数に変換されます。測定時の室温と湿度に合わせて動きます。
  • 反射する光の波長分布 — 色素や紅斑の点数に変換されます。照明が変われば入力される値も変わります。
  • 表面の凹凸がつくる影 — 毛穴やしわの点数に変換されます。影の深さは照明の角度と顔の位置によって変わります。

点数がとりわけ確定的に感じられる理由

変換の規則は結果表には出てきません。画面には変換が終わったあとの値だけが残り、その値が二桁の数字や等級のようにきれいに割り切れた形で表示されます。同じ内容でも「少し乾燥ぎみに見えます」と伺うときと「水分 下位等級」と目にするときで、受け取る重さが違うのは自然なことです。数字はもともと、判断よりも事実のように見えます。

ですから結果表を読むときは、一段階もどして見ると助けになります。この点数がどの物理量から出たのか、その物理量は何によって揺れるのか、そして点数の境界は誰がどの集団を基準に決めたのか、という三つです。後ろの二つは画面に出てこないことがほとんどですが、解釈を分けるのはむしろその二つである場合が少なくありません。

表面に残らない情報があります

測れないものもはっきりあります。いつからそうなのか、何を塗ってからそうなったのか、季節によってどう変わるのかは表面には残りません。洗顔の直後なのか三時間後なのかによっても値は変わりますが、画面にその文脈は表示されません。

ですから結果表の一枚は、写真の一枚と似た性格を持ちます。その瞬間の表面は正確に写しますが、その瞬間に至るまでの経過は写せません。肌の問題の原因を探す作業では、後者が決め手になることが少なくありません。

繰り返して同じ値が出れば正確なのでしょうか

測定機器を評価するとき、研究の世界では二つを分けて見ます。一つは信頼性で、同じ対象を繰り返し測ったときに同じ値が出るかという点です。もう一つは妥当性で、その値が測ろうとしていたものを実際に測れているかという点です。名前が似ていて混ざりやすいのですが、まったく別の問いです。

体温計でたとえると

ある体温計が測るたびに36.0度を表示するなら、信頼性は完璧です。何度測っても同じものさしで値を示すという意味だからです。ところが実際の体温が38度の方にも36.0度を表示するなら、妥当性はありません。基準そのものがずれていて、実際の状態を代表できない状況です。再現性と正確さは別のものです。

構成概念妥当性という言葉の意味

妥当性のなかでも構成概念妥当性は、もう少し厳しい基準です。目に直接見えない概念を、測定値がきちんと代表できているかを問うからです。肌のキメやハリ、肌質という言葉を私たちは日常的に使いますが、それを一つの物理量としてはっきり定義するのは簡単ではありません。測ろうとしている対象そのものが複数の要素の束であるとき、そのうち一つを測った値が全体を代表すると言うには、別の根拠が必要になります。

たとえば角層の静電容量は、非常に安定して測定されます。ただしその値が「この方の肌は乾燥している」という臨床的な判断を代表しているかどうかは、別の問いです。静電容量は角層のいちばん表層の状態を反映しますが、患者さんが感じる乾燥感は、バリア機能や炎症、神経の反応性が一緒に絡んだ経験だからです。

検証の資料が示していること

肌の測定機器を対象とした検証の資料でもっとも広いものは、Langeveldらが2022年にSkin Research and Technologyで発表したシステマティックレビューです。肌の色、ハリ、キメを測る機器の信頼性と妥当性をまとめたもので、結論の一文がはっきりしています。レビューに含まれたどの機器も、構成概念妥当性の基準では有効と判定できなかったという内容です。

この一文は、機器がでたらめだという意味ではありません。繰り返し測ったときに同じ値が出るという根拠は複数の項目で積み上がっており、その値が臨床的な肌の状態を代表するという根拠はまだ満たされていないという意味に近いものです。ですから少なくとも現在までの資料では、肌診断機器をある時点の状態を確定する道具としてよりも、何度か繰り返し測って変化を追う道具として置くほうが合っています。

項目ごとに一致の度合いが違います

妥当性は、機器全体に一つの評価として与えられるものではありません。項目によって結果はかなり分かれます。Cookらが2022年にJournal of Dermatological Treatmentで発表した検証研究では、タブレットを用いた顔画像解析ソフトの判定と皮膚科専門医の目視評価を、14の肌の特性について対照しました。全体の一致率は69パーセントでしたが、項目ごとの開きはかなりのものでした。

項目 専門医の目視評価との一致率 読み方
紅斑 83.7パーセント 反射光の波長で定義が比較的はっきりしている
しわ 81.6パーセント 影の深さとの対応が比較的直接的
全体平均 69パーセント 14の特性を合わせたときの値
皮脂 53.1パーセント 触感と時間の経過に大きく左右される項目

この数値は特定の研究で観察された値であり、すべての機器とすべての方にそのまま当てはまるわけではありません。ただし方向性は読み取る価値があります。

69パーセントという数字の実際の意味

全体の一致率69パーセントは、おおよそ10項目のうち7項目で機器と専門医の判断が同じ方向だったという意味です。裏返すと、3つに1つ近くは分かれたという意味でもあります。ここで大切なのはどちらが正解かではなく、結果表の一枚のなかにも確信の度合いが違う項目が混ざっているという点です。

ですから私たちは結果表を見るとき、項目を一列に並べて読むことはしません。紅斑のように光学的にとらえやすい項目は参考の比重を高く置き、皮脂や水分のように条件で大きく揺れる項目は症状と対照したうえで判断します。同じ結果表でも、どの行をどれだけ信じるかがあらかじめ決まっていることが、解釈を揺らさないための条件になります。

色と凹凸が比較的安定している理由

反射光の波長分布や影の深さは物理的な定義がはっきりしていて、人が目で見る赤みや溝の深さとの対応も比較的直接的です。先ほどのLangeveldのレビューでも、肌の色の項目は11件の研究、16種類の機器、参加者3,172人という規模で、ほかの項目より資料が厚く積み上がっていました。赤みの変化を記録して比べる用途であれば、機器は人の記憶より優れている面があります。

反対の端に皮脂があります

皮脂は触感と時間の経過に大きく左右される項目です。洗顔の30分後と三時間後では表面の状態が違いますし、同じ表面でも指先で感じる皮脂感と光学的に読み取られる反射は、それぞれ別の情報を含みます。ですから皮脂のように条件への依存度が高い項目では、機器と臨床の判断がうまく重ならない傾向が出てきます。同じ結果表のなかでも、項目ごとに重みを変えて読む必要がある理由がここにあります。

別の機器で出た点数は並べて比べにくいものです

今度は機器どうしを対照した資料です。同じ研究グループが2022年にJournal of Cosmetic Dermatologyで発表した機器間の比較研究では、二つの顔画像解析システムの判定の一致率が67.7パーセントでした。3つに1つの割合で判定が分かれたという意味です。

この結果は、どちらの機器が優れているという話ではありません。何をどの基準で点数化するかについての合意がまだない、と受け取るほうが正確です。機器によって測っている物理量そのものが違うことがありますし、同じ物理量を読んでいても、点数に変える規則が違います。

実務的に意味すること

  • 別の機器の点数を時系列でつなぎません — 前回A機器で受けた値と今回B機器で受けた値を比べて「肌が悪くなったのだろうか」と読むと、実際とずれることがあります。
  • 追跡には同じ機器が前提です — 変化の方向を読むには、ものさしが固定されている必要があります。ものさしが変わると、変化なのかものさしの違いなのかの区別がつきません。
  • 点数そのものの値より、同じ条件での差が情報になります — 今日が何点かよりも、三か月前の同じ条件の値とどれだけ変わったかのほうが、臨床的には使いでがあります。

なお当院では、診察の記録と経過の比較を目的に撮影と測定を活用していますし、ほかで受けてこられた結果表も参考の資料として一緒に拝見します。ただし機器が違う場合は点数どうしを直接比べず、その結果表がどのような条件で出たものかを先に伺うようにしています。

画面の点数は何と比べた値なのか

点数がつけられるには、比べる基準が必要です。その基準がどこから来たのかを知っておくと、数字を読むときに大きな助けになります。

Seoらが2022年にJournal of the European Academy of Dermatology and Venereologyで発表した横断研究は、韓国の方434人を対象に8種類の機器の測定値を集め、客観的な分類の体系を示しました。この研究が示した基準点は、測定値を三分位に分けた値でした。

三分位が意味すること

三分位は、この集団のなかで相対的にどのあたりかを意味します。参加者全体を値の大きさの順に三つの塊に分け、境界にあたる値を基準点としたという意味です。ですから固定された正常値や病的な数値の境界が別にあると考えるのは難しいことになります。

したがって水分の点数が下位と出た場合、それは参照する集団のなかで下のほうに位置するという意味であって、治療が必要な状態という意味ではありません。実際に同じ水分の数値でも、ある方にとってはその程度が低くて皮膚炎につながり、ある方にとってはその程度がやや乾燥している水準で、かえってにきびが出にくい楽な状態であることもあります。数字が同じでも、その数字がその方にとって持つ意味は違います。

良い・悪いといった等級の表示も同じ仕組みです

結果表には、数字の代わりに良い、普通、悪いといった等級が一緒に表示されることが多くあります。この等級は、先ほどお話しした変換の最後の段階にあたります。測定値を基準点と比べて区間に分け、その区間に名前をつけた結果です。ですから悪いという表示は、病的だという判定ではなく、基準点より下の区間に入ったという表示に近いものです。

等級は数字よりも断定的に読まれる分、誤解も生まれやすくなります。診察室でも項目によって下の区間に表示される結果を見ることは珍しくありませんが、その表示一つで治療が決まることはありません。同じ区間にいても症状のある方とない方が分かれますし、その分かれ目を確かめることが結局は診察です。

細胞レベルの肌年齢は、まだ判断を保留する段階です

最近は角層細胞を採取してタンパク質の指標を分析し、生物学的な肌年齢を算出するというサービスも、化粧品の流通チャネルで紹介されています。表面の写真より一段進んだ方法に見えるのは確かです。

ただし現在までのところ、この方法の診断的な妥当性を扱った研究はありません。肌年齢という概念そのものもまだ合意された定義を持っておらず、どの指標をいくつ組み合わせるかによって算出値が変わりますが、その組み合わせ方はたいてい公開されていません。今のところは判断を保留すべき段階と考えています。結果表の年齢の数字よりも、今どのような症状があるかを基準にご相談いただくほうが実際的です。

同じ顔なのに結果が変わる理由

ここまでが何が分かれるのかという話だとすれば、今度はなぜ分かれるのかを見る番です。原因は機器の性能だけではありません。測定の条件のほうがはるかに大きな割合を占めることが少なくありません。

水分・皮脂の値を揺らす条件

角層の水分に関する指標は、下の要因によって変わります。どれかが特別におかしいのではなく、もともとこうしたものに合わせて動く指標だとお考えください。

  • 洗顔後の経過時間 — 洗顔の直後と三時間後の値は、同じ肌でも違って読まれます。
  • 室温と湿度 — 表面から蒸発する水分量は、周囲の環境から直接影響を受けます。
  • 直前に塗ったもの — 保湿剤や日焼け止めを塗ったあとは、表面の状態そのものが変わっています。
  • 測定前の安定させる時間 — 室内に入ってすぐ測るのと、しばらく過ごしてから測るのとでは条件が違います。

にきびがある肌なのに結果表では乾燥性と読まれる場合も、こうした文脈で理解できます。洗顔の直後に測ると角層の静電容量が低く出ることがありますし、表面の皮脂と角層の水分はそもそも別の指標だからです。機器が読み違えたというより、測定が写せなかった条件が結果の解釈を変えてしまった状況に近いものです。

写真系の値を揺らす条件

表面の撮影方式も同じです。照明の角度と顔の位置が少し変わるだけで影が変わり、影が変われば毛穴としわの判読も一緒に動きます。機器が撮影の位置と照明を固定する仕組みを備えているのも、このためです。逆に言えば、その仕組みを守れなかった二枚の写真は、互いに比較の対象になりにくいということです。

結果表を受け取ったときに一緒に確認しておくとよいこと

値を見る前に条件を確認しておくと、解釈がずっと固まります。下の四つは結果表にはたいてい書かれていませんが、覚えておいて診察のときにお話しいただけると、数字を読むのにそのまま役立ちます。

  • 何時ごろ、洗顔からどれくらい経って測ったか
  • その日に塗ったものがあったか、測定の前に落としたか
  • 室内に入ってからどれくらい経って測ったか
  • 前回の測定と同じ機器・同じ部位だったか

どの部位を測るかも変数です

Peperkampらが2019年にSkin Research and Technologyで発表した信頼性の研究は、参加者49人を対象に、ある機器の皮膚の厚みとハリの測定を検証しました。ハリの項目では検者間の級内相関係数が0.23から0.80まで広く分布し、再検査の級内相関係数は0.25から0.84でした。

この二つは別の指標です。前者は測る人が変わったときに値がどれだけ保たれるか、後者は同じ条件で測り直したときに値がどれだけ保たれるか、つまり再現性です。大切なのはどちらも範囲が広かったという点で、同じ機器でもどの部位を測るかによって、信頼できる測定になることもそうでないこともあったという意味になります。結果表のハリの数値一行を施術の効果の根拠にそのまま使いにくい理由が、ここにあります。

問診と視診・触診が今も基準である理由

診察室でまず行うのは、機器の電源を入れて写真を撮ることではなく、目で見ながらご質問することです。機器の判読を使わないという意味ではなく、順序と比重の問題です。

先に伺うこと

  • いつからそうなのか — 数日なのか数か月なのかによって、考えられる原因が変わります。
  • 洗顔から何分くらいでつっぱるのか — 時間の単位での感覚は、どの測定よりも具体的な情報になります。
  • 季節によってどう変わるのか — 繰り返されるパターンがあるかどうかを見ます。
  • 最近変えた製品があるか — 変化と時期の前後関係が見えてくるところです。

これらのご質問を通して、今この瞬間の様子に加えて、時間の流れにそった変化も一緒に確認していきます。繰り返される経験、季節の変動、製品を変えたこととの時間的な前後関係は、ある一時点の測定からは得られません。肌の問題の原因を探す作業では、この時間の情報が決め手になることが少なくありません。

目で見て手で触れる過程

視診と触診も同じ役割を果たします。角質の浮き方、皮膚の厚みの感じ、押したときに戻る速さ、表面の皮脂感は、一度にまとめて判断される情報です。これらは個々の点数に分解される前の状態なので、互いに食い違う所見があるとき、その食い違いそのものが手がかりになることもあります。

表面はてかっているのに指先には角質が引っかかる、という場合がその例です。表面の皮脂と角層の水分が同じ方向に動いていない状態ですが、点数二行に分かれて表示されると、どちらかが間違っているように見えやすくなります。実際にはどちらも正しく、その組み合わせ自体が今の肌で何が起きているかを教えてくれる情報であることが多いものです。

機器を使う診察が間違っているという話ではありません

誤解のないように一点だけ触れておきます。この記事は、肌診断機器を使う診察を問題にするものではありません。記録と説明、経過の比較で機器が与えてくれる利点ははっきりしていますし、当院もその目的で使っています。実際に患者さんと同じ画面を見ながらお話しできることは、診察のなかでかなり役に立ちます。

ただしその画面が判断の出発点になるのか、判断を確かめて残す位置に立つのかは別の問題です。これまで積み上がってきた検証の資料は、前者よりも後者の使い方をよく支持しています。ですから順序をそのように置いているだけで、これは機器の問題ではなく現在の根拠が到達している地点の問題です。

まとめるとこうなります。機器は今この瞬間の表面を一定のものさしで読み、問診と視診・触診は時間の流れを読みます。この二つは代替の関係ではなく、順序の関係に近いものです。ですから診察が先に来て、機器の判読はその判断を確かめて記録する位置に置きます。

では機器はいつ使うのが合っているのか

ここまでの内容を裏返すと、肌診断機器の居場所はむしろはっきりしてきます。合いにくい使い方があるということは、合う使い方もあるという意味だからです。

  • 治療の経過の追跡 — 同じ方を同じ機器で同じ条件で繰り返し測れば、測定値そのものがどれだけ正確かとは関係なく、変化の方向は読み取れます。繰り返すときに同じものさしが当てられるからです。
  • 記録 — 三か月前の赤みを記憶だけで比べるのは難しいことですが、画像として残しておけば可能になります。とくに紅斑のように光学的に安定して読み取れる項目で役に立ちます。
  • 説明 — なぜ今保湿を強める必要があるのか、なぜ今回は間隔を空けたほうがよいのかを、言葉だけでお伝えするより、同じ画面を一緒に見ながらご説明するほうがよく伝わります。

たとえばVビームやLDMで赤みを扱う経過、PDTやGold PTTでにきびの状態を整える経過のように、時間をかけて少しずつ変わっていく変化では、同じ条件の画像が実際に助けになります。目で見ても分かりますが、記憶で比べるには間隔が長いからです。ただしこのときも、機器が決めるのは回数や項目ではなく、経過がどの方向に向かっているかです。

反対におすすめしにくい使い方

一度の測定値で肌の状態を確定したり、その数字を根拠に施術の項目を決めたりする方法です。ここまで整理してきた根拠では、その用途を支持しにくいところがあります。結果表に下位と表示された項目があるからといって、その項目をねらった施術が自動的についてくる流れであれば、今実際にどのような症状があるのかをもう一度確かめるほうがよいと思います。

追跡が目的であれば、まず条件をそろえます

  • 同じ機器で — ものさしを固定することが最初です。
  • 洗顔後の経過時間を近づけて — 前回の測定と同じタイミングに合わせていただくと、比較が楽になります。
  • メイクを落としてしばらく安定させてから — 室内の環境に慣れる時間を置くほうが、一貫性の面で優れています。
  • 同じ部位を — 部位が変わると信頼性そのものが変わることがあります。

追跡が目的のときは、条件をそろえることが機器の性能と同じくらい大切です。条件が揺れると、どれほど良い機器でも比較できる値をつくりにくくなります。

間隔も一緒に決めておかれるとよいと思います。あまり頻繁に測ると条件の違いから来る揺れが変化のように見えますし、間隔が空きすぎると方向を読む地点が足りなくなります。扱っている問題によって適切な間隔は変わりますので、初回の測定のときに次の測定の時期も一緒に決めておくのが、実際にはいちばん簡単です。このときも比べる対象は直前の値一つではなく、複数の時点をつないだ流れです。

測定の前に知っておいていただきたいこと

肌の測定そのものは侵襲的な処置ではありませんが、プローブを接触させる方式では一時的な刺激感や圧迫の跡が残ることがあります。肌が敏感な状態のときや急性の炎症があるときは、測定を先に延ばすほうがよいと思います。また、測定の結果を根拠にご自身の判断で治療を中断したり変更したりなさらないようお願いいたします。

本文で引用した研究は、標本の大きさや測定部位、対象となった集団が限られており、とくに顔の部位を対象とした検証の資料はまだ十分に積み上がっていません。今後の研究によって解釈が変わる可能性があります。肌の状態と測定値は、個人の肌の条件、測定の環境、機器の種類によって異なって現れることがあり、個人差があります。

最後に

肌診断機器の画面に出た点数は、診断書ではなく、その日の測定の記録です。今日の点数一つだけを見ると、意味は大きくありません。ところが三か月後に同じ条件で測り直した値と並べてみると、話が変わってきます。そのときからその数字は判定ではなく追跡になり、追跡は治療の方向を決めるのに実際に役立ちます。

もう一つだけ申し上げると、画面の点数よりも、ご自身が感じていらっしゃる症状が先です。洗顔から何分でつっぱるのか、どの季節にひどくなるのか、どの製品を使ってから変わったのかを覚えておいてお話しいただけると、どの機器よりも役に立つ情報になります。機器は、そのお話を確かめて記録するために使う道具だとお考えいただければと思います。

診察から施術まで

皮膚科専門医が直接診察して原因の層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで、同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術をすすめる仕組みではありません。

回数・間隔・維持の時期・費用は、初回の施術前に一緒に決めます。

よくあるご質問

測定のときにプローブを肌に当てていましたが、刺激はありませんか。
肌の測定そのものは侵襲的な処置ではありません。ただしプローブを接触させる方式では、一時的な刺激感や圧迫の跡が残ることがあります。肌が敏感な状態のときや急性の炎症があるときは、測定を先に延ばすほうがよいと思います。個人差がありますので、気になる点があれば測定の前にお知らせください。
機器を使わず目で見るだけのほうが正確なのでしょうか。
どちらかがもう一方の代わりになるというお話ではありません。機器は今この瞬間の表面を一定のものさしで読み、問診と視診・触診は時間の流れを読みます。繰り返される経験、季節の変動、製品を変えたこととの前後関係は一時点の測定では得にくいため、診察が先に来て、機器の判読はその判断を確かめて記録する位置に置いています。
ほかのところでは乾燥肌と言われたのですが、こちらでは違うお話でした。どちらが正しいのでしょうか。
どちらかが間違っているというより、測定が写せなかった文脈があるのかもしれません。洗顔の直後に測ると角層の静電容量が低く読まれることがありますし、表面の皮脂と角層の水分はそもそも別の指標です。ですので当院では、いつからそうなのか、洗顔から何分くらいでつっぱるのかを先に伺い、目に見える様子と合わせて判断しています。
ハリの数値が前回と変わりました。施術の効果がなかったということでしょうか。
数値一つだけで結論を出しにくい項目です。参加者49人を対象に皮膚の厚みとハリの測定を検証した研究では、ハリの項目の検者間の級内相関係数が0.23から0.80まで、再検査の級内相関係数が0.25から0.84まで広く分布していました。同じ機器でも、どの部位を測るかによって信頼できる測定になることもそうでないこともあった、という意味です。経過は数値一行よりも、症状と写真、診察の所見を合わせて見ていきます。
写真で見ると前回より毛穴が増えたと出ました。本当に増えたのでしょうか。
先に撮影の条件を確認するほうがよいと思います。表面の撮影方式は、照明の角度と顔の位置が少し変わるだけで影が変わり、影が変われば毛穴としわの判読も一緒に動きます。機器が撮影の条件を固定する仕組みを備えているのも、このためです。同じ条件で撮った画像どうしを比べたときに、初めて変化として読めるようになります。
紅斑はよく合うのに、皮脂はなぜあれほど合わないのでしょうか。
物理的に定義しやすい項目ほど、機器と人の判断が重なる傾向があります。反射光の波長分布や影の深さは定義がはっきりしていて、目で見る赤みや溝の深さとの対応も比較的直接的です。一方で皮脂は触感と時間の経過に大きく左右される項目ですので、一枚の写真では写しきれないほうに近いと言えます。
水分の点数が下位だと説明を受けました。治療が必要な状態なのでしょうか。
下位という表現は、多くの場合、参照する集団のなかで下のほうに位置するという意味です。韓国の方434人を対象に8種類の機器の測定値を集めて分類の体系を示した研究でも、基準点は測定値を三分位に分けた値でした。固定された正常値や病的な数値の境界が別にあると考えるのは難しいところです。同じ水分の数値でも、ある方では皮膚炎につながり、ある方では問題にならないため、症状と合わせて見て初めて判断になります。
肌年齢が実年齢より高く出ました。心配したほうがよいのでしょうか。
肌年齢は、まだ学術的に合意された定義のない概念です。どの指標をいくつどう組み合わせるかによって算出値が変わりますが、その組み合わせ方はたいてい公開されていません。角層細胞のタンパク質の指標から生物学的な肌年齢を算出するという方法も、診断的な妥当性を扱った研究がまだなく、判断を保留する段階です。結果表の数字よりも、今どのような症状があるかを基準にご相談いただくほうが実際的です。
測定の前に準備しておくことはありますか。
できれば洗顔からの経過時間と室内の環境を、前回の測定のときと近い状態に合わせてください。メイクを落とした状態でしばらく安定させてから測るほうが、一貫性の面で優れています。追跡が目的であれば、条件をそろえることが機器の性能と同じくらい大切です。
では肌診断機器はまったく受けないほうがよいのでしょうか。
そこまでのお話ではありません。同じ機器で同じ条件で繰り返し測って変化を追う用途であれば、十分に役立ちます。ただし一度撮った結果だけで肌のタイプが確定したり施術の項目が決まったりする流れであれば、今どのような症状があるのかをもう一度お話しいただくほうがよいと思います。
同じ日に二か所で測ったら、結果がまったく違いました。機械が故障しているのでしょうか。
故障ではない可能性のほうが高いと思います。二つの顔画像解析システムの判定を対照した研究では、一致率が67.7パーセントと報告されています。機器ごとに測定の方式も点数への変換の規則も違いますので、値が分かれるほうがむしろ自然です。ですから、別の機器の点数を並べて良くなった悪くなったと読むことはおすすめしていません。
結果表では皮脂が高いと出たのですが、私はいつも乾燥を感じています。どちらが正しいのでしょうか。
二つの結果が、それぞれ別のものを測っている可能性が高いと思います。表面の皮脂量とつっぱる感じは別の指標ですので、表面には脂っぽさがありながら角層は乾いている、という状態も珍しくありません。測定の時点も影響していて、洗顔からどれくらい経っているかによって値は変わります。お感じになっている症状を診察のときにお話しいただくほうが、判断にはずっと役立ちます。
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