夏になると一日に何度もあぶらとり紙を探していたのに、秋になると何事もなかったかのように落ち着く、という経験をされた方は多いと思います。ですから診察室でいちばんよくいただくご質問も、どの施術がより優れているかではなく、効果はどれくらいもつのか、では一年中受け続けないといけないのか、というものです。この記事は施術を選ぶ話ではなく、皮脂が季節に沿って動くという事実と、施術の効果が残っている期間を重ねて置き、時期をどう決めるかを整理した記事です。
3行まとめ
- 季節による皮脂の変動は、実際に測定されている現象です。韓国の方を対象にした研究では皮脂量は夏にいちばん高く、冬は皮脂が低くなるかわりに角層水分量が下がり、ヒリつきの感じやすさと皮膚pHはむしろ上がるという、逆方向の変化が一緒に出ていました。
- 施術で減らした皮脂は、皮脂量を直接測った研究ではおおむね8週から3か月の間に元の水準近くまで戻っていました。マイクロボトックス・PDT・ゴールドPTTはいずれも皮脂腺をなくす方法ではなく、一定の期間だけ働きを下げる方法ですので、要点はどれだけ長くもつかよりも、効果が残っている区間をどの時期に重ねて置くかになります。
- ただし、夏に施術すると冬に施術するより結果がよい、ということを直接比較した無作為化試験はまだありません。季節に合わせた設計は、皮脂の変動を実際に感じておられる方に合う考え方で、変動の幅が大きくない場合や、テカリよりコメド・炎症が主な問題である場合は、季節ではなく別の軸を先に見る必要があります。
夏にテカリが増えるのは気のせいではありません
診察室で季節の話を出すと、気のせいだと思っていました、とおっしゃる方が少なくありません。ところがこれは、測定で確認できる現象です。
韓国の方を対象に顔の5か所を1年間くり返し測定した研究では、皮脂量は夏にいちばん高く出て、Tゾーンが頬より高くなりました。韓国人男性100名を夏と冬に分けて測定した別の研究でも、皮脂量は夏のほうが冬より高く、毛穴の数も夏に有意に多くなっていました。チェコの女性を季節別に分けて測定した観察研究では、冬に角層水分量と皮脂の産生がともに低くなる様子が確認されています。
3つの研究は測定した対象も、人種も、気候も違いますが、方向は同じです。夏に上がり、冬に下がるという流れです。
皮脂腺が大きくなるというより、排出がスムーズになるほうに近いです
では夏には、皮脂をつくる「工場」そのものが大きくなるのでしょうか。資料はそうではないと言っています。
額を局所的に温めたり冷やしたりしながら皮脂の排出率を測った古い実験で、皮膚の温度が皮脂の排出率に影響することが確認され、その後の複数のレビューがこの実験を根拠に、「摂氏1度あたり10パーセント程度」という値を引用してきました。そして、この変化が活動している皮脂腺の数が増えたことで起こるのではないという点を、別に確認した季節の観察研究もあります。気温の上昇は活動している皮脂腺の数を増やさず、表面への送り出しの量だけを増やしていました。
ですから夏のテカリは、「工場」が大きくなった結果というより、排出の通り道がスムーズになった結果に近いといえます。この区別は実際の設計に影響します。分泌そのものを下げる施術と、表面にたまった角質や皮脂を整える管理は、それぞれ別の地点を扱っていますし、夏はこの2つを一緒に置いたときに体感が大きい場合が多いのも、同じ理由です。
湿度はまだ数字で語れる段階ではありません
蒸し暑い夏といえば湿度も当然影響しそうですが、湿度と皮脂量の関係は研究ごとに結果が分かれます。湿度が何パーセント上がると皮脂が何パーセント増える、という形の数値を申し上げられる段階ではない、と見るほうが正確です。ただ、ニキビのほうでは湿度が悪化と関連しているという資料が別にありますので、この部分は次の項目で続けて見ていきます。
冬は逆の方向に動きます
冬を、単に皮脂が減る楽な季節としてだけ見るのは難しいところです。先に挙げた韓国人男性を対象にした研究で興味深いのは、同じ方たちで皮膚pHとヒリつきの感じやすさは、逆に冬のほうが高く出たという点です。
思春期の男性を1年間毎月追跡した小規模な縦断研究でも、ニキビ群の経表皮水分蒸散量は対照群より高く、角層水分量は夏と秋が冬より高くなっていました。整理すると冬は、抑えるべき対象は減っていて、耐えるべき刺激は増えている季節です。この2つの方向が同時に動くという点が、後で扱う時期設計の中心的な根拠になります。
すべての方に同じ幅で出るわけではありません
ここまでの話には、はっきりした条件がつきます。上に引用した研究の対象はおおむね20代から40代で、その外の年代で同じ幅の季節変動が出るのかは、確認された資料が十分ではありません。季節に合わせた設計は、皮脂の変動を実際に感じておられる方に合う考え方だと受け取っていただくほうが正確です。
夏にニキビが悪くなるという話は、データで確認できるのか
テカリが増えることと、ニキビが悪くなることは同じ話ではありません。ですから別に確認しておく必要があります。
蒸し暑い気候帯では確認できます。ニューデリーでニキビの患者452名を調査した研究では229名が季節変動を報告し、そのうち夏の悪化が56.33パーセントで、夏の改善16.16パーセントよりはるかに多くなりました。夏に悪くなると答えた方の80.62パーセントは、原因として汗と湿度を挙げています。デリーで1年間171名を調査した別の研究でも、夏の悪化が40.4パーセントと有意に多く、気温と湿度のどちらも悪化と関連していました。
夏は紫外線のおかげでニキビがよくなる、という話を聞かれたことがあるかもしれませんが、少なくともアジア圏の湿潤な気候の資料は、逆の方向を指しています。
ピークが秋まで後ろにずれている場合もあります
逆方向の資料もあわせてお伝えするのが公平です。思春期の男性を1年間毎月追跡した先の小規模な縦断研究では、皮脂量は冬にいちばん低く、秋にいちばん高く出ていました。ニキビ群7名、対照群10名という小さな標本ですので一般化は難しいのですが、皮脂のピークが晩夏から初秋まで後ろにずれていることがある、という余地は残しておくほうがよいと思います。
ですから時期を決めるときに基準になるのは、カレンダーではなくご自身の皮脂のカーブがいつ高かったかです。診察でこの2、3年のあいだいつがいちばんつらかったか、いつから楽になったかをお聞きするのは、ここに理由があります。同じ8月でも、ある方はすでに下がってきている途中で、ある方はこれから上がっていく途中です。
施術で減らした皮脂はどれくらいもつのか
ひとつの数字でお答えするのは難しいところです。ただ、皮脂量を直接測った研究では、おおむね8週から3か月の間に元の水準近くまで戻っていました。幅が広いのは、施術ごとに、そして同じ施術でも設定ごとに結果が変わるからです。
数字が分かれる1つ目の理由 — 測定そのものが揺れます
皮脂の測定は、思っていたより条件に敏感です。表面にたまった量を測るのと、単位時間あたりの分泌率を測るのは別の指標で、洗顔からの経過時間や室内の温度・湿度といった条件によって値が大きく変わります。研究ごとに数字が違うのには、施術の違いだけでなく測定の違いも混ざっている、ということです。
2つ目の理由 — 何を測ったのかが違います
より重要な区別は、その研究が何を測ったのかです。皮脂量を測った研究と、ニキビの個数を測った研究は同じ話ではありません。皮脂が戻ってくる時点と、ニキビがまた出てくる時点は互いに違うからです。この違いが、後でゴールドPTTの持続期間を読むときに決定的に効いてきます。
PDT — 3回コースを終えて8週ほど
韓国で通常行われている設定であれば、2週間隔で3回受けたあと8週ほど、と見ていただいて無理はありません。
いちばん具体的な数字は、韓国人のニキビ患者12名を対象にした研究から出てきます。0週、2週、4週に3回施術したあと皮脂の排出を測ったところ、最初のセッションの2週後には平均44パーセント減っていたものの、最後の治療が終わって8週が経った時点では、平均してベースラインの89パーセントまで戻っていました。生検で皮脂腺の中のアポトーシス所見がはっきり増えていたにもかかわらず、です。6月に始めて7月に終えたとすると、9月末ごろに元どおりに戻る、という計算になります。
ただ、皮脂が戻ることと、ニキビがまた出てくることは時点が違います。単回の施術を12か月まで追跡した日本の研究では、追跡できた8名のうち4名が4か月から12か月のあいだに再発し、悪化までにかかった平均の期間は6か月でした。
同じPDTでも結果が分かれるのは、設定の違いです。光感受性物質の濃度と吸収させる時間、照射量、セッション数が上がるほど皮脂の抑制も大きくなります。実際に低い強度で行われた研究では、炎症性皮疹だけが減り、皮脂分泌はどの部位でも有意には減りませんでした。PDTを受けたのにテカリがそのままだった場合は、施術が合わなかったというより、その設定がニキビの皮疹をねらったものだった可能性をまず考えていただくほうがよいと思います。韓国では痛みと回復期間の負担のため、非常に強い強度で行われることが少ないという点も、あわせて考えたいところです。
マイクロボトックス — 4週で最大、12週から4か月のあいだに回復
マイクロボトックスと呼ばれるボツリヌストキシンの皮内注射では、皮脂の減少が確認されたのは脂性肌でのことで、乾燥肌や普通肌では差がありませんでした。半顔比較のプラセボ対照研究で1平方センチあたり2単位を注射したとき、皮脂の減少は脂性肌群でのみ有意で、4週で最大になりました。皮脂がお悩みでない方に、この施術を皮脂コントロールの目的でおすすめする根拠はまだ十分ではない、ということです。
顔を対象にした他の研究でも、4週で最大の効果が出て12週から4か月のあいだに回復する流れがくり返されます。頭皮を対象にした多施設共同の無作為化二重盲検プラセボ対照研究では、1回の注射のあと皮脂分泌が1か月と3か月の時点でプラセボより有意に低くなっていましたが、4か月と6か月では差がなくなりました。
ただ、量を上げると変わってきます。額にボツリヌストキシンを量ごとに分けて1回投与した二重盲検プラセボ対照研究では、いちばん低い量の群では足りなかった一方、高い2つの量の群では1回の施術で6か月のあいだ改善が保たれました。ただし量が上がると表情筋の筋力低下のリスクも一緒に上がりますし、製品ごとに単位の換算が違うため、研究の数字をそのまま移して当てはめることもできません。この部分は診察で、顔の部位と表情の使い方のくせを一緒に見ながら決めていきます。
ゴールドPTT — 皮脂腺をねらうというのは、どこまで確認されているのか
皮脂腺を標的にすること自体は、生検で確認されている事実です。金をコーティングしたシリカの微粒子を振動で毛包の中まで送り込み、そのあとレーザーで加熱する方法で、ヒトとブタの皮膚を使った研究では、この粒子は800ナノメートル付近の光を強く吸収しました。照射後に採取した32検体では、毛包の入口に局所的な熱損傷が生じたものが84パーセント、皮脂腺そのものに損傷が確認されたものが47パーセントで、損傷の深さは平均0.47ミリメートル、隣接する真皮と表皮には損傷がありませんでした。実際の臨床では1064ナノメートルのレーザーと組み合わせて使います。
回数と持続をあわせて見ていきます。この施術は2週間隔3回で1コースを構成します。1コースを終えたあと完了者52名を追跡した前向きの多施設共同研究では、炎症性皮疹は開始から2か月の時点で55パーセント、12か月の時点で68パーセント減っていました。ただし施術前の3〜4週間、外用レチノイドを併用したプロトコルですので、施術単独の成績として読んではいけません。
そしてここで、先ほどの区別が決定的に効いてきます。この12か月はニキビの個数を数えた結果であり、皮脂量を測って何か月と言える資料はまだありません。皮疹が減るとともに肌の皮脂も減ったという報告はありますが、4名を扱ったケースシリーズで、写真解析機で評価した結果ですので、傾向を参考にする程度に見ていただくのが妥当です。作用の仕組みとしては皮脂腺を物理的に損傷させる方法ですので、信号だけを遮る方法より長いと考えるのは妥当ですが、これはあくまで推定です。
3つの施術は、触れている層が違います
持続期間の違いを理解するには、それぞれの施術がどこに触れているのかを見るほうが早いです。PDTとゴールドPTTは皮脂腺の組織そのものに光化学的あるいは光熱的な損傷を与えます。一方でマイクロボトックスは、皮脂腺を損傷させないままその上の信号だけを断ちます。ですから神経終末の機能が回復するのに伴って、3〜4か月のうちに効果が消えていく流れになります。
| 区分 | 触れている層 | 研究で確認された持続 | 測定した指標 |
|---|---|---|---|
| マイクロボトックス | 皮脂腺の上の神経の信号 | 4週で最大、12週〜4か月で回復(高用量・額への1回で6か月という資料あり) | 皮脂量・皮脂分泌 |
| PDT | 皮脂腺の組織(光化学的な損傷) | 3回コース後に8週ほど、設定によってばらつきが大きい | 皮脂の排出・炎症性皮疹 |
| ゴールドPTT | 皮脂腺の組織(光熱の損傷) | 3回コース後、ニキビの抑制が12か月まで確認 | ニキビの個数(皮脂量の資料なし) |
表でご確認いただけるとおり、3つの施術はどれも皮脂腺をなくす方法ではなく、一定の期間だけ働きを下げる方法です。ですからこれは、なくす問題ではなく時期を選ぶ問題になります。
この点が、満足度のかなりの部分を左右します。診察室で持続期間をお伝えすると、効果が短いならやらないほうがよいのではないか、と聞き返される方がいらっしゃいます。ところが短いと分かったうえで始めれば、いつ始めるか、何回受けるか、いつ手を止めるかをあらかじめ決められます。逆に、ずっと維持されるものと期待して始めると、3か月後に失敗したと感じることになります。同じ結果なのに、満足度だけが変わるわけです。
時期を設計するということの意味
設計という言葉を、もっと多く受けるという意味で読まないでいただければと思います。ここでいう設計は、同じ回数をどこに置くかを決める作業です。効果が残っている区間と、皮脂がいちばん高い区間を重ねて置くと、同じ施術でも体感が変わります。
スタートは気温が上がる直前です
温度が高くなる直前、おおよそ5月末から6月初めに始めるのが、施術の効果の持続期間といちばんよくかみ合います。マイクロボトックスは1週目から変化が始まり4週でいちばんはっきりしますので、6月初めに始めると7〜8月のピークと自然に重なります。炎症性のニキビも一緒にある場合はPDTやゴールドPTTのほうを、テカリと毛穴が主なお困りごとの場合はマイクロボトックスのほうを先に検討することになりますが、どちらを使うかは診察で確認した状態によって変わります。
真夏は回数を満たして、つなぎ足す区間です
7月と8月は、始めたコースを仕上げる時期です。PDTは6月に始めたコースが8月ごろに薄れてきますので、初秋まで必要な方はこの時期にもう1コース入れるか、マイクロボトックスを重ねる方法をとります。逆に、夏のあいだずっと通院するのが難しいご予定であれば、最初から回数の決まっているゴールドPTTの3回コースで組むほうが計画を立てやすくなります。これはどちらが優れているかの問題ではなく、予定と回数を合わせる問題です。
初秋は移っていく区間です
9月と10月は、施術の効果が抜けていく時点と、気温が下がる時点が重なる区間です。ここから外用のほうへ移っていきます。ただ、先ほど見たように皮脂のピークが初秋まで後ろにずれている方もいらっしゃいますので、必要であれば夏の計画を9月まで延ばして組むこともあります。
冬は強度を下げる区間です
11月から翌年の4月までは、皮脂を抑えることよりバリアを守るほうが優先になる区間です。冬は皮脂が減ると同時にバリア機能も落ちるため、回復の負担が大きい設定をそのまま移して入れる臨床的な利得が小さくなるからです。
同じ季節設計でも、方向が逆になる軸があります
ここで誤解しやすい部分をひとつ挙げておきます。冬が何もしない区間だという意味ではありません。皮脂の抑制と、瘢痕・色素は互いに別の軸で、季節を考える方向も逆になる場合が多いです。
- 皮脂の抑制の軸 — 皮脂がいちばん高い時期に効果の区間が重なるように置くのが自然です。マイクロボトックス、PDT、ゴールドPTTがここに当たります。
- 跡・瘢痕の軸 — ニキビが過ぎたあとを扱うPicoPlus、CO2フラクショナル、ポテンツァ(ニードルRF)のような施術は、施術後の紫外線対策が重要になりますので、紫外線を浴びる量が減る時期のほうが管理しやすい場合が多いです。
- 回復・鎮静の軸 — LDMのようにバリアの側を補う管理は、季節よりも肌の状態に応じて入ります。冬のように敏感になりやすい区間で一緒に使うことが多いです。
ただ、この配置も固定された正解表ではありません。瘢痕の軸を必ず冬に行わなければならないわけではありませんし、紫外線対策ができるなら他の季節でも進めます。またPDTは光線過敏の状態が続く期間、紫外線対策が必要になりますので、夏に配置する場合もこの部分は別途ご案内します。
そして、1年やってみてご判断いただいてかまいません
季節に合わせた設計の利点は、効き目がより優れているからではありません。薬剤への曝露と施術の負担を減らしながら、体感のいちばん大きい時期を覆うという点にあります。ですから1年進めてみて体感が大きくなければ、翌年にわざわざ続けていただく理由はありませんし、逆に夏さえ越えれば大丈夫だと感じられたなら、その区間だけまた組めばよいわけです。毎年必ずくり返さなければならないプログラムとして受け取らないでいただくほうがよいと思います。
施術を休む区間は何で埋めるのか
施術と外用は、続き方の性質が違います。施術は受けたあとに効果が抜けていく構造で、塗る薬は使っているあいだ保たれる構造です。ですから外用は、やめてはまた始めてをくり返すと、意図した水準には届きにくくなります。
皮脂量が実際に測定された外用成分は多くありません
- 外用の抗アンドロゲン成分(クラスコテロン) — セブメーターで測った資料のある、数少ない成分です。40名を対象にした非盲検の前向き研究の12週中間解析では、皮脂量がベースラインの115.9から84.8へ27パーセント減り、6週の時点ですでに22パーセントの減少で有意になっていました。同じ期間に炎症性皮疹は54パーセント、非炎症性皮疹は34パーセント減少しています。ただし処方が必要な成分ですので、韓国での処方の可否と適応は診察での確認が必要です。
- ナイアシンアミド2パーセント — 日本人100名を対象にした二重盲検プラセボ対照の並行群間研究では、2週と4週の時点の皮脂の数値がプラセボ群より有意に低くなりました。ただし、この結果が分泌率そのものの減少なのか、表面にたまった皮脂量の減少なのかについては解釈が分かれます。
- L-カルニチン2パーセント — 基剤対照の無作為化研究で、3週の時点の皮脂分泌率が有意に減少しました。
逆に、テカリ対策としては根拠が弱い、あるいは方向の違う成分もあります
- 外用レチノイド — 毛穴とコメドには根拠がしっかりしていますが、皮脂量そのものを減らすという根拠は弱いです。アダパレンを使った無作為化比較研究では部位ごとの変化が額-0.2パーセント、あご+6.2パーセント、頬-6.7パーセントで、著者らは臨床効果が皮脂の抑制とは無関係に見えると結論づけています。
- 過酸化ベンゾイル — 同じ研究で表面の皮脂の数値は額+10.5パーセント、あご+10.3パーセント、頬+25.4パーセントと、むしろ上がりました。炎症のコントロールには依然として重要な薬ですが、テカリ対策として持ち出す成分ではありません。
ですから施術をしない期間の外用は、皮脂量を大きく減らすほうよりも、少し増えた皮脂でもニキビができにくいようにして、見た目に表れるテカリを抑えるほうに目標を置くのが現実的です。
洗顔の強さを上げるのは、たいてい逆効果です
夏にテカリが増えたからと洗顔の回数を増やしたり、強い製品に切り替えたりされる方が多いのですが、これはたいてい逆の方向に働きます。表面の皮脂を取り除いても1時間ほどでかなりの部分が戻りますし、その過程でバリアばかりが傷みやすくなります。洗う強さを上げるより、分泌そのものを扱うほうが順番として合っています。
表面にたまった角質と皮脂フィラメント(角栓)が一緒に問題になっている場合は、それは洗顔の強さではなく別の管理で扱う領域です。エイブル皮膚科ではアクアピール、GAスケーリング、ララピール、プラピールのような表面の管理を、夏は皮脂腺をねらった施術と一緒に置き、敏感になりやすい冬は強度と間隔を調整して配置します。ただし、これらの管理は分泌そのものを減らす施術とは目的が違いますので、互いの代わりにはなりません。
冬にも皮脂の管理が必要な場合
ここまでの話が、冬は何もしなくてよいという意味に読まれないことを願います。季節が基準にならない場合は、はっきりと存在します。
- 季節変動の幅が大きくない場合 — 先に申し上げたとおり、引用した研究の対象はおおむね20代から40代で、その外の年代で同じ幅の変動が出るのかは資料が十分ではありません。四季を通じて同じようにテカるという方であれば、季節のカーブを基準にする理由がありません。
- テカリよりコメドと炎症が主な問題である場合 — 冬にテカリが減っても、コメドと炎症が季節と関係なく続くのであれば、それは別の問題です。この場合はカレンダーではなく、皮疹そのものの状態を基準に時期を決めます。
- 肌が受けている温度が季節と違う場合 — 「温度が皮脂の排出に影響する」という実験結果をそのまま当てはめると、基準になるのはカレンダーではなく、肌が実際にさらされている温度です。暖房の強い室内で一日を過ごされる場合や、局所的に暑く湿りやすい環境であれば、冬でもテカリが続くことがあります。
- ピークが遅く来る場合 — 皮脂のピークが晩夏から初秋まで後ろにずれている方もいらっしゃいます。このときは夏ではなく、ご自身のカーブに合わせて後ろに移して組みます。
ただし、冬に同じ強度をそのまま使うことはしません
冬は角層水分量が低く、ヒリつきの感じやすさと皮膚pHは上がっている区間です。抑えるべき対象は減っていて、耐えるべき刺激は増えている時期だということです。ですから冬に皮脂の管理が必要な場合でも、夏と同じ設定をそのまま移すのではなく、強度と間隔を下げて、バリアの側も一緒に見ていく配置になります。
整理すると、冬に皮脂の管理が必要ないという話ではなく、冬の皮脂の管理は夏とは目的も強度も違うという話です。何を入れるかより、何を減らすかを先に見る区間だと受け取っていただければと思います。
この設計が語っていないこと
最後に限界をはっきりさせておきます。夏に施術すると冬に施術するより結果がよい、ということを直接比較した無作為化試験はまだありません。この記事で整理した配置は、証明された優位性ではなく、季節の生理と効果の持続期間を合わせて置いてみた設計です。引用した資料の中には標本が小さかったり追跡期間が短かったりする研究も含まれていますし、一部の施術には皮脂量そのものを測定した資料がありません。今後の研究によって解釈が変わる可能性があります。
薬で一年中抑えておく方法とは、条件が違います
季節に合わせて施術を配置する方法のほかに、薬で一年中低い水準を保つ方法もあります。1日2.5ミリグラムから5ミリグラム程度の超低用量の経口イソトレチノインを6か月間比較した小規模な研究では、皮脂の産生が最大64パーセント減少し、生検上の皮脂腺の大きさは51パーセント減りました。ただし週3回の服用では脂質の減少が出ず、最小の有効な曝露量が存在するという点もあわせて示されています。中止後に20名を追跡した古い研究では、7名が30週で治療前の水準に戻った一方、8名は最大80週まで皮脂腺の活性が低い状態を保っていました。女性でホルモンのパターンがはっきりしている場合には経口スピロノラクトンも選択肢になり、プラセボ対照の二重盲検研究では3か月の投与で女性の被験者において皮脂の排出が減少し、臨床的な反応は高い用量の区間でより大きくなりました。
効き目だけを見ればこちらのほうが大きく長くもちますが、妊娠の計画、肝機能、乾燥の副作用、服薬の続けやすさという条件が一緒についてきます。どちらが優れているかという問題ではなく条件の違う選択肢であって、何を選ぶかは診察で一緒に決める部分です。
施術ごとについてくる負担も、あわせてご覧ください
- PDT — 施術中の痛みと、施術後の紅斑、腫れ、一時的なニキビの悪化、色素沈着が出ることがあり、光線過敏の状態が続く期間は紫外線対策が必要です。
- マイクロボトックス — 内出血、部分的な乾燥、注入部位と量による表情筋の筋力低下が生じることがあります。
- ゴールドPTT — 紅斑と腫れ、施術後の一時的な皮疹の増加が報告されています。
個人の肌の状態と皮脂分泌の程度によって結果は違って出ることがあり、同じ施術を同じ条件で受けても反応の幅が変わるのはよくあることです。そして3つの施術はいずれも皮脂腺をなくす方法ではなく、一定の期間だけ働きを下げる方法ですので、効果が抜ければ元の傾向に戻ります。この点を最初から分かったうえで始めていただくほうがよく、ですから行わないという結論も十分に合理的な選択です。皮脂コントロールの目標は、なくすことではなく、耐えられる水準に管理することです。
診察から施術まで
皮膚科専門医が直接診察して原因の層を確認し、機器とパラメータを決めたうえで、同じ専門医が施術まで続けて行います。カウンセラーが施術をおすすめする仕組みではありません。
回数・間隔・メンテナンスの時期・費用は、最初の施術の前に一緒に決めます。
よくあるご質問
- 冬もテカリがそのままなのですが、季節に合わせた設計は自分に合うでしょうか。
- そういう場合は、季節が基準になりません。引用した季節の研究はおおむね20代から40代を対象にしたもので、その外の年代で同じ幅の変動が出るのかは資料が十分ではありません。また、「温度が皮脂の排出に影響する」という実験結果をそのまま当てはめると、基準はカレンダーではなく肌が実際にさらされている温度になりますので、暖房の強い室内で一日を過ごされる場合は冬でもテカリが続くことがあります。このときは季節ではなく、ご自身の皮脂のカーブを基準に時期を決めます。
- 夏にテカリが増えたら、洗顔の回数を増やすべきでしょうか。
- 洗顔の回数を増やしたり、急に強い製品に変えたりする方法は、たいていは逆効果になります。表面に出てきた皮脂を取り除いても1時間ほどでかなりの部分が戻りますし、その過程でバリアばかりが傷みやすくなります。洗う強さを上げるより、分泌そのものを扱うほうが順番として合っていますし、表面の角質と皮脂フィラメント(角栓)が一緒に問題になっている場合は、アクアピールやピーリングのように表面を扱う管理を別に置くほうがよいです。
- ゴールドPTTのほうが光線力学療法より長くもつと聞きましたが、そうなのでしょうか。
- 確認されている指標が互いに違うため、そのまま比較するのは難しいところです。ゴールドPTTの12か月の資料はニキビの個数を数えた結果で、光線力学療法の8週の資料は皮脂の排出を測定した結果です。作用の仕組みとしては皮脂腺の組織に光熱の損傷を与える方法ですので、信号だけを遮る方法より長いと考えるのは妥当ですが、皮脂量を測って何か月と言える資料はまだありません。この部分は推定であるという点も、あわせてお伝えしておきます。
- 始める時期を逃してもう真夏ですが、今から始めても意味はありますか。
- 意味がないわけではありません。マイクロボトックスは1週目から変化が始まり、4週ごろにいちばんはっきりするという流れがくり返し報告されていますので、遅く始めればその分だけ後ろにずれた区間を覆うことになります。皮脂のピークが晩夏から初秋まで後ろにずれている方もいらっしゃって、その場合はむしろ時期が合うこともあります。ただ、残りの季節が短ければ、回数を終える前に気温が下がることもありますので、何回をどこまで行うかは診察で一緒に決めていただくのがよいと思います。
- 施術をせず、外用だけで夏を乗り切ることはできないでしょうか。
- できる方もいらっしゃいます。ただ、皮脂量の減少が実際に測定された外用成分は多くありませんし、確認されている幅も12週で27パーセント程度です。それも毎日きちんと塗り続けた結果ですので、塗ったり塗らなかったりでは、その水準には届きにくくなります。ですから外用は、皮脂量を大きく減らすほうよりも、少し増えた皮脂でもニキビができにくいようにして、見た目のテカリを抑えるほうに目標を置いていただくのが現実的です。
- 毎年くり返すのなら、いっそ始めないほうがよいのではありませんか。
- その選択も十分に合理的です。夏の1、2か月のテカリが生活の大きな不便でないなら、わざわざ施術を入れる理由はありません。ただ、短いと分かったうえで始めていただくと、いつ始めるか、何回受けるか、いつ手を止めるかをあらかじめ決められますので、期待とずれて落胆することが少なくなります。1年やってみて体感が大きくなければ、続けていただく理由もありません。
- 夏だけ受けると、冬にまたひどくならないでしょうか。
- 冬は皮脂分泌そのものが低くなる時期ですので、夏と同じ強さの抑制が必要にならないことが多いです。ただ、テカリ以外にコメドや炎症が季節と関係なく続いている場合は、それは別の問題ですので分けて扱う必要があります。冬にまたひどくなると感じられる場合は、皮脂が増えているのか、乾燥と刺激で肌が敏感になっているのかを分けて見るのが先です。
- マイクロボトックスを打つと、顔が乾燥しすぎないでしょうか。
- 皮脂の減少が確認されたのは脂性肌でのことで、乾燥肌や普通肌ではプラセボとの差がありませんでした。もともと皮脂が少なめの方には、皮脂コントロールという目的でおすすめする根拠がそもそも十分ではありません。脂性肌の場合でも最小限の量から設計し、反応を見ながら調整していきます。内出血や部分的な乾燥、注入部位と量によっては表情筋の筋力低下が出ることがありますので、量を上げるほど注意が必要です。
- 去年、光線力学療法を受けましたが、テカリはそのままでした。なぜでしょうか。
- 設定によって結果が分かれます。照射量を下げた条件で行われた研究では、炎症性皮疹だけが減り、皮脂分泌はどの部位でも有意には減りませんでした。同じ光線力学療法でも、ニキビの皮疹をねらった設定と、テカリをねらった設定は別だということです。施術が合わなかったと結論づける前に、そのときの目的が何だったのかをまず確認していただくほうがよいと思います。カウンセリングで目的を先に決めておくのは、このためでもあります。
- 一度受ければ数年もつと聞きましたが、違うのでしょうか。
- 皮脂量を直接測った研究では、そうではありませんでした。光線力学療法では、3回コースを終えて8週が経った時点で、皮脂の排出が平均してベースラインの89パーセントまで戻っていたという資料があります。ゴールドPTTは12か月まで抑制が確認されていますが、それは皮脂量ではなくニキビの個数を数えた結果ですので、同じ話ではありません。持続期間には個人差が大きく、同じ施術でも設定によって結果が変わります。
- 皮脂を抑える施術は、夏だけ受ければよいのでしょうか。
- 夏だけ受けるのが正解です、とは申し上げにくいところです。季節に合わせて配置する方法は、皮脂の変動を実際に感じておられる方に合う考え方で、季節と関係なくコメドや炎症が続く場合には、カレンダーではなく皮疹そのものを基準に時期を決めます。ただ、夏に施術すると冬に施術するより結果がよい、ということを直接比較した無作為化試験はまだありませんので、この配置は証明された優位性ではなく、季節の生理と効果の持続期間を合わせてみた設計として受け取っていただくのが正確です。